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夢幻と現実の狭間で…  作者: 魔死吐?
魔道具編
34/45

メビウス

「なるほど、君は彼らに協力するんだね」

そう背後から話しかけられ、慌てて振り返る。そこには青髪の少年。メビウスがそこに立っていた。

「いやぁ、さっきは邪魔されてしまって本題に入っていないことを思い出してね。慌てて戻ってきたよ。君もあれだ。なんでボクが君に接触したのか気になるだろ? その疑問に答えてあげるよ」

 メビウスはそう言って笑みを浮かべた顔をカチュアに近づけ、カチュアの瞳を覗き込む。その笑顔は外見相応に可愛らしい笑顔なのだが、カチュアは蛇に睨まれた蛙のように固まってしまった。

「そこまでにしてもらおうか」

次の瞬間、カチュアは首根っこを掴まれて後ろに引っ張られる。同時に少年に向かって無数の刃物が降り注いだ。

「け、ケリィさん、何を」

カチュアを引っ張った人物、ケリィはカチュアを抱き寄せ、いつでも走りだせる体制で、無数の刃物が突き刺さった場所を睨みつける。

「やれやれ、物騒だね」

 しかし、少年の声が背後から聞こえると、カチュアをかばうようにしながら、振り返ってメビウスを睨む。

「いきなり攻撃するなんて野蛮だよ。それにしても召喚魔法、とは違うみたいだけど、恐ろしい攻撃だね。少し反応が遅かったら穴だらけにされていたよ。はぁ、どうもボクは警戒されやすいようだね。どうでもいいことだけどね。ボクは話をしに来ただけだよ。君たちも知りたいだろ? 君自身が狙われる理由を」

 確かに気になる話である。しかし、鵜呑みにしても良いのだろうか。リックの話では彼は大魔法使いクラスであり、リカード先生たちのスポンサーだ。つまり、敵対する相手になる。そんな相手の話を聞いても本当のことを話しているとは考えにくい。しかし、それでも話を聞きたいと思った。たとえウソでも真実を何割か混ぜ込まれている筈だ。騙されないようヒントだけを聞きわける。そのためにも彼の話を聞くために、ケリィの腕を振りほどき、前に歩み出る。

「へぇ」

「カチュア、彼は危険だ」

そんなカチュアの行動にメビウスは感心し、ケリィは動揺する。

「大丈夫です。ケリィさん。彼は話をしに来たんです。恐らく今回は何もしてこない筈です。それに何かするつもりならとっくにやっている筈です。違いますか?」

ケリィを安心させるために、言いながら、メビウスに問いかける。ケリィはその言葉にしぶしぶ納得し、刺さっていた刃物を魔法で回収する。

「うん、君の言うとおりだよ。ボクは今日は何もしない。いや、できないと言っても良い。なんせこのボクは幻影だからね」

幻影。遠くに居る対象にメッセージを送るための魔法で、立体的な映像を相手に見せる魔法だ。幻影には触れることができないが、幻影からも触れられない。ただ音と映像を伝えるためだけにある。メビウスは幻影だという。つまり、彼本人はここには居ないということだ。それじゃぁ、何もできないだろう。ケリィの攻撃が効果無かった理由も納得できた。

「なるほど、幻影なら仕方ない。話せ、貴様らの目的を」

ケリィは壁にもたれ掛り、腕を組みながら話をさとす。そんな彼の姿にメビウスはまるで面白い玩具を見るかのような笑みを浮かべながら口を開く。

「まぁ、さっきダイソン君が話してくれていたみたいだからね、あまり話すこともないのだけど、そうだね、テイラーの目的、何故君が狙われるのか、ボクの目的、こんなモノかな?」

メビウスの口ぶりからすると、先ほどのリックとの話は聞かれていたようだ。もっとも、向こう側に聞かれても問題ない内容だったのでリックに迷惑はかからないだろう。しかし、これでは迂闊に会話もできなくなる。

しかし、メビウスのあげた三つの話はどれも気になる内容だった。とくにリカード先生の目的。あれだけ生徒思いだった先生がリックを閉じ込めてまで寿命を削る魔道具をばら撒くなんてどういうつもりなのか。それが今カチュアの知りたいことだ。


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