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夢幻と現実の狭間で…  作者: 魔死吐?
魔道具編
30/45

謎の少年


それはカチュアと同い年くらいの少年であった。カチュアにはその少年に見覚えがあった。しかし、まさかこんな所に居る筈がない。そう思ってしまうほど、この少年がここに居ることが不思議で仕方なかった。青い髪に赤い眼をした少年。そう、現実世界でカチュアが訪れた国の首都で出会ったあの少年と同じ容姿をしているのだ。

「あぁ、それだね」

暫く動揺で固まっていると、いつの間にかカチュアの傍まで着ており、カチュアの手元にある新型魔法具を眺めていた。その動きがあまりにも自然な動きにカチュアどころかケリィまで反応できなかった。

「くっ、君は何者だ」

ケリィは突然現れた謎の人物からカチュアを守るため、前に出てかばう体制をとる。

「やだなぁ、誤解しないでよ。ボクは君たちに危害をくわえない。むしろ君たちにヒントを上げに来たのさ」

赤い瞳を禍々しく輝かせながら少年は笑顔でそう言った。不思議とケリィとカチュアは少年が本当のことを言っていることがわかる。しかし、二人は底知れない不気味さを感じていた。

「まぁ、いいや。勝手に話させてもらうよ。これはボクの独り言だからね」

 そう言いながら、少年は新型魔法具を手に取る。

「この魔法具は新型というお題目で発表されているけど、実は古い時代にも同じモノがあってね。使用することも憚られるとして封印された技術で造られたものさ。まったくこんなモノを蘇らせるだなんてイカレてるよね」

 そう言いながら、人差し指でクルクルと回転させる。イカレていると言いながらも、少年の顔には不快感がなく、まるで面白がるような表情だった。

「それで、本題なんだけどね。この魔道具は魔法を使う資質に関係なく使える魔道具というのは間違いないよ。君たちの考える通りに自前の魔力をまったく使用しない。だってこの魔道具は寿命を魔力に変換して使用しているのだからね」

 思わず二人は絶句してしまう。寿命を魔力に変換する? それはどういう意味なのだ。いや、わかっていても理解したくなかった。命を削る技術を平然とばら撒くような人間がこの世界に居るなんて信じたくないからだ。

「うん、君たちの考えている通りにこの技術は命を削る。だった、その方が効率良いからね。資質と違って寿命はそれほど差が存在しない。まぁ、中にはアドルフのような規格外も居るけどね。ほんの一分、寿命を魔力に変換するだけで、資質の乏しく、初級の魔法で精一杯の者ですら中級クラスの魔法を一回使用できるようになる。そりゃぁ、使いたくもなるよね。だって知らないのだから。いや、知っていても使ったかもね。なんせ今まで抑圧されていたものが解放されるんだ。資質で人生が決まる夢幻世界において資質に無関係で高位魔法が使い放題だ。うん、しかたないよね」

 相変わらず、少年は笑っている。その姿にカチュアは恐怖を覚えた。まるで全ての人間を価値の無い物のように見るその瞳に、笑っているのに感情を感じさせない表情に。神秘的な雰囲気を持った少年そのものに恐怖を感じた。

「そこまでだっ」

ガシャンという音と共に執念の立っていた所に大人の拳ほどの鉄球が投げ込まれた。思わずカチュアは短く悲鳴を零し、ケリィにかばわれる。

再び、少年の方を見ると、少年の姿はすでになく。かわりに鉄球で破壊された図書館の机と、緑髪の少年がカチュアたちに背中を向けて立っている姿だった。

「リック?」

そう、その少年はカチュアの友人のリックだった。

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