ウソ
「助かった、カチュア」
反省室から出たリックは体を解しながらカチュアにお礼を言う。
「う、うん。それは良いんだけど、何で捕まっていたの? リカード先生が何か秘密をリックに見られたって言っていたんだけど」
リックのお礼に軽く返して、思っていた疑問を口にする。その瞬間、リックは動きを止め、真剣な顔でカチュアを見る。
「助けてくれたことはありがたい。でもお前は関わるな」
そう、短く言うと、カチュアの横を抜けて出ていこうとする。
「ちょ、まってよ。どうしてそんなことを言うの?」
あまりにもあんまりな台詞にカチュアは思わずリックの手首をつかんで聞いた。
「…悪い、話せない」
リックは振り返らずに短く言う。
「何で、リックがここまで呼んだんでしょ?」
カチュアは自身をここまで誘導してきたボールを思い出してそう言った。あのボールはカチュア自身を標的していたわけではなく、地下室に訪れた人間なら誰でも誘導していただろうことをカチュアは理解している。それでもあれはリックが誰かに助けを求めて、協力者を欲して行ったことだと信じて聞いた。
「呼んだ? いったい何のことだ?」
しかし、リックから帰ってきた答えは疑問だった。リックがウソをつけない人間であることは六年間の付き合いで理解していた。この疑問は本当に知らないということだろう。ならば誰があのボールを?
「とにかく、お前は本当に関係ないんだ。ほら、単なる、あれだ、男子の卒業生でやっているイベントだよ。学校使った鬼ごっこだ。お前が知らなかったのは、あれだ、女子には内緒ってなってるからだ、うん、そうだ。俺はヘマして捕まっているだけで、ホント、何でもないんだ」
リックが言っていることがウソだということをカチュアは考えるまでもなく理解した。何故なら、リックはウソをつくときに盛大に目が泳ぎ、普段に比べて長々と話す癖があるからだ。しかし、リックがウソをつくということは本当のことを誰にも話す気が無いということだとカチュアは知っている。リックは意外に頑固で、一度口を紡ぐと、口を割るのに苦労する。
「ふぅ、わかった。もう聞かない」
いくら記憶を消すだの言っても、あの生徒に優しいリカード先生や模範生のグレンが悪いことをするわけがない。もしかしたらリックの言うように本当にイベントとして反省室にリックを入れていたのかもしれない。
「悪いな、ホントに女子には内緒だったんだ」
まだ言うか。カチュアは心の中で思ったが口にはしなかった。言えばリックが長々と言い訳を言ってくることが目に見えているし、早く地上に戻りたくなったのだ。そこでふと思う。
「ところでリック。ちょっと聞きたいんだけど」
「なんだよ、イベントのことなら」
「そうじゃなくてね、地上への出方ってわかってる?」
「……あ」
「はぁ~」
今さらながら地下室が迷路であることを思い出してカチュアは頭が痛くなった。好奇心で行動してしまった過去の自分を本気でどうにかしたいと思った。




