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ボール
地下へと続く石造りの階段を下り、地下への入り口が見えてきた。カチュアはサッと入口に駆け寄ると影に隠れて地下の様子をうかがう。そこには丸いボールが一つ転がっており、そこから声が出ていた。聞き覚えのある声のようだが思い出せない。会話の内容も無理やり音量を増幅しているためか、不鮮明で聞き取れない。何とか会話していることだけわかるようだ。カチュアは入口から顔を出して他に誰も居ないかを確認してボールに近寄る。
ボールを観察すると金属で造られており、銀色で、真ん中に三つの穴が開いていることがわかる。どうやら声は穴から出ているようだ。カチュアはボールが誰かの魔法で造られた魔道具だと考え、それがどこと繋がっているかを知ろうと思い、ボールに触れようとした。
その瞬間、ボールは自分の意思があるかのようにカチュアの手から跳ねるように逃れ、カチュアから数メートル離れた場所に着地すると、ゆっくりと転がり始めた。カチュアは唖然として固まってしまったが、ボールが見えなくなりかけたため、慌てて後をおって歩き出した。




