あなたも心の片隅に
朝起きてカーテンを開けると外はもう一面の銀世界だった…。
『うわぁ…ゆきだ、ゆきだぁ。かあちゃん、ゆきだるまつくってくるねぇ』
『…もう、雪は逃げないんだからちゃんとご飯食べてからにしなさいっ!』
『…はぁい…ちぇっ』
毎年繰り返される、この1シーン。
この地方では、毎年11月上旬に『初雪』が降る。
僕はいつもこの時期になると『そわそわ』して眠れなくなる。
いつまでも窓のそばに座って、口を『ぽかん』と開けながら夜空を見上げていた。
『あした、雪、ふるかなぁ…あした、ゆき、ふるかなぁ…アシタ、ユキ、フルカナァ…』
誰に言うわけでもなく、呪文を唱えるみたいに繰り返していた。
−あれっ?初めて『雪』見たのっていつだっけ?−
朝食を食べるとすぐ、母がストーブの前で温めてくれていた靴下をはいて外に出る。
『外は寒いんだから、ちゃんと暖かくしていきなさいよぉ!』
台所から聞こえる母の声。
そんな声はもちろん耳には入らず、ドタバタしながら玄関の戸を開ける。
『…うわぁ!!』
目の前に広がっていたのは、まばゆいばかりの『まっ白な世界』。
どこを見ても、白、しろ、しろ…。
『…すげぇや…。』
昨日まで寒そうな顔して立っていた木々は、白いドレスに身を包み、白銀の世界へとエスコートしてくれた。
今年もこの季節がきた。
『かあちゃん…今年も雪、降ったよ…。』
写真の中の母は、いつもと変わらぬ笑顔でこう答えた。
今回、初めて作品を読んで頂いた方、前回から引き続き読んでいただいた方、ありがとうございます。読者の皆様方ご自身の『子供の頃の思い出』を少しでも思い出す手助けができれば、と思いながら書きました。拙い文章しか書けませんが、今後もよろしくお願いいたします。