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鐘の音を背に去りながら
旅立ちの話。
――鐘が鳴る。
1つ、2つ……最後に5つ目の高い音を響かせて。また朝靄に包まれた村は静けさを取り戻す。そして、もうまもなく朝の支度をする活気で賑やかになるのだ。
……まったく自分らしくない。この里とももう別れだと思うと寂しくなるな…なんて珍しく感傷の想いに浸るとは。
時が来たのだと、告げる鐘の音に触発されたのだろうか。
にゃーー……。
どこかで猫鳥の鳴き声が聞こえた。それは別れを惜しむものではなく、皮肉にも本来のこの鐘の音と同様、朝を迎える始まりの音だった。
「……さようなら」
もう帰らないだろう。里を出て、連絡を断ってしまえばもう帰る場所ではなくなるから。
それでも私の記憶にはいつまでも残るのだろう。
「さようなら」
※猫鳥:空の猫オリジナルの幻獣? 数年越しの妄想の産物。
頭が猫、鳴き声も猫な鳥。
猛禽類。獲物は妖精(特に猫妖精)なので、向こうにとっては天敵。