魔王と相打ちとなった勇者様たちのお話……を語る吟遊詩人――の前身である荷物持ちのお話
その宣言に僕は耳を疑った。
「今、なんと?」
すると勇者様ははっきりと断言する。
「お前は追放だと言ったのだ」
「そう。分からないの? あなたはパーティーの中で全く戦闘に役に立たない」
「戦闘が始まれば後方に控えてひたすら盾を構えているだけ」
「戦闘終了後には回復アイテムをくれるけど、ぶっちゃ回復魔法で間に合うしね」
パーティーの面々の言葉に僕は呆気に取られる。
それを理解の上で雇っていたんじゃないのか?
そもそも僕の強さはそこにはない。
「勇者様。待ってください。もし僕を追放すると言うのなら――」
「黙れ。これから先はどんどん戦闘が厳しくなる。お前を守る余裕なんかないんだ」
「そうそう。経験値を吸うだけの粗大ゴミなんていらないの」
「そもそもこれ以上人数が居たって褒美の分け前が――」
「余計なこと言うな。とにかく、そういうことだから。それじゃあな」
そう言うが早く、勇者様ご一行は僕の前から去っていった。
皆と比べて数段レベルが劣る僕では決して追いつけない速度で――。
「ええ……」
僕は一人残されたまま困惑する。
そう。
ここは魔王城の目と鼻の先。
実際、ここ最近の勇者様……というか、皆の様子は少しおかしかった。
仮にも魔王を相手にするというのに戦後の報酬の話ばかりしていて、既に魔王の首さえ取ってしまったと言わんばかりの振る舞いを続けてばかりいた。
まぁ、正直に言えばそんなことをしてもおかしくないくらいに皆は強くなっていたけれど。
それでも、全員が無事にとはいかないだろう。
――いや、もしかしたら、今の皆はどうにかして褒美を独り占めしようとしていたのかもしれない。
「まぁ、別にいいけどさ……」
きな臭さを感じていたのは事実だし。
そして、仮に僕の予想が当たった場合、戦う力を持たない僕が真っ先に殺されるのは分かり切っていたし……。
「さてと、とりあえず帰らないとなぁ」
こんなところに置いて行かれたならば普通の人間なら生きていくことなんて出来やしない。
だけど、僕は仮にも勇者一行の一人だ。
いや、『元』勇者一行か。
いずれにせよ、僕にだって特別な力くらいある。
だから、安全な場所に戻ることくらいは出来るけど――。
「本当、なんでこんなことになっちゃったかなぁ」
そう呟きながら僕は皆から背負わされていた荷物の中から帰還魔法が記された巻物を取り出す。
これは魔力が込められている巻物で仮にMPが枯渇しようとも読み上げれば即座に指定場所へ戻ることが出来る優れモノだ。
この巻物もそうだが、僕が持っていたアイテムの数々は地味ながら勇者様一行を救った物ばかりだ。
僕のスキル。
『過剰積載』は言わば動く倉庫として生きることが出来るスキルだ。
要するに僕が居る限り、勇者様はいつでも好きなアイテムを取り出せるような状態にあったわけなんだけど……最近はすっかりアイテムを使わなくなってしまったからこの便利さも忘れてしまったらしい。
「まぁ。どうか、ご武運を……ってところかな」
そう呟いて僕は故郷へと帰還した。
幸いなことに勇者様達が僕に押し付けた――もとい預けさせていた道具の数はあまりにも多い。
もう冒険なんかしなくたって故郷で商売でもしながら暮らしていかれるだろう。
*
後に僕は魔王と相打ちとなった勇者様一行の最後の生き残りとして彼らの英雄譚を歌う吟遊詩人となるのだが、それはまた別の話だ。




