第8話 一年生の終わり
バレンタインの日の授業が終わって、クラスの男子たちがソワソワする中、僕は下校して陽菜の家に向かった。
部屋では、先に帰っていた陽菜が僕を待っていた。
「そういや陽菜は何かくれないの?」
「プレゼントは、あ・た・し、とかじゃないわよ。そんなありきたりなことしないから。今日はだめな日なんだし」
「そっか……」
「そんなにがっかりしないでよ。どっちにがっかりしてるのか聞かないけど。今日はバレンタインと悠真のバースデーが重なってるでしょ。ただのチョコじゃあダメだからね」
そして、陽菜は部屋のクローゼットから綺麗に包装された箱を取り出した。
「陽菜、これは? けっこうデカいけど」
「まあまあ、開けてみてよ」
包み紙を丁寧に剥がして現れたのは、靴が入った箱だった。
「あ、これ……僕が欲しかったやつじゃん」
長時間履いても疲れにくいハカのやつだ!
高校生の小遣いではちょっと手が届きにくいから、いつか自分で買おうと少しずつお金を貯めていたんだけど。
「この間話してたでしょ。そろそろ靴底が減ってきててヤバいって。あたしがバイトして買ったんだから……」
「ありがとう、陽菜っ!」
思わず僕は陽菜に抱きつく。
「んーもう、どういたしまして。今日はキスだけだからね」
このあとめちゃくちゃキスした。
あとチョコレートは普通にゴディバをもらった。
◇◇◇
短い3学期の最後は進級テスト。
実際は、他のクラスからすれば進級なのだろうけど、一番上のクラスにいる僕たちからすれば、下剋上が怖いテストなんだ。
「いつも『クラス落ちになるぞ』とお前たちに発破をかけているが、今回ばかりはそうじゃない。下のクラスの奴らがお前たち以上に頑張って高い成績を出せば、どうなると思う?」
クラス担任の大谷先生がいつになく真面目な感じで話す。
一番前の列の生徒が聞き返した。
「どうなるんですか?」
「たとえお前たちの成績が悪くなかったとしても入れ替わられてしまうことがある。毎年数人は涙を飲んでいるぞ。まあ、頑張れ。こればっかりはどうしようもないからな」
今度は健人が大谷先生に聞き返す。
「それなら、今までのテストでもそれは同じだったんじゃないですか?」
「お、いいところに気がついたな健人。さすが学年2位だ。1位の悠真も気がついていたのか?」
なんか急に話が振られた。
「たぶんですが、1回や2回のテストの成績だと偶然なのか実力なのかわからないから、1年間の成績を見て入れ替えをするんじゃないですか?」
「その通りだ。たまたま高得点を取ったからといってその度に入れ替えをするわけにはいかんからな。とはいえ、途中で実力差がはっきりすれば入れ替えはありえるのだが、今年それはなかったな」
「そうなんですね」
「ずっと学年1位の悠真には関係ないかもしれんが。それでもいつの間にか追い抜かれていた、なんてのはよくあることだ。2年になってもお前たちを担任できるか、楽しみだな」
と脅されたけど、僕と仲のいい友達はクラスを落ちることもなく普通に2年に上がった。
なお校舎は三階建てで一年生の教室は三階にある。
無事に進級したら、一つ階を降りて二階が二年生の教室となる。
三年生になれば教室は一階だ。
まあ、先の話だけど。
◇◇◇
「転校生を紹介するぞ」
一年から引き続き担任となった大谷先生のお言葉だ。
いったい誰なんだろう? とみんなが思うなか、入ってきたのは……。
「綾瀬美月です。よろしくお願いします」
クラスがざわつく(主に男子だけど)。
ミディアムショートの黒い髪、ぱっちりした瞳、たわわな胸。
アイドルだと言われたら納得してしまうほどの美人だ。
なんかどこかで見たことがあるような……?
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