第6話 クリスマスパーティー
真夏の夜の出来事(外は熱かったけど陽菜の部屋はエアコンが効いてて涼しかった)が終わり、次は、陸上のインターハイがやってきた。
みんなインハイって言ってるけど、全国高等学校総合体育大会という長い名前らしい。
覚えられねえ。
「悠真、お前は学業の成績もいいし、陸上でもエース候補。この鳳翔学園が掲げる『文武両道』を体現している素晴らしい生徒だと思っている。頑張ってくれ。さぞかし女にもモテるだろう、ちくしょう」
陸上のコーチ(独身)からのありがたい励ましのお言葉だ。
最後は私怨にまみれていた気がするけど。
◇◇◇
今年の開催場所は、高知県。
カツオとかマグロがおいしいところらしい、知らんけど。
都民からすると遠いところっていうのは正直、勘弁してほしいんだよな。
遠いってだけで体力削られるから。
「頑張れー! 悠真ぁー!」
陽菜が応援に来ていた。
「頑張れよ、悠真」
健人もだ。
健人はそもそもサッカーで出場だから普通に来ているんだけど。
陽菜は応援のためだけだ。
こんなに遠くて旅費もかかるだろうに、費用は学園持ちで他にも応援のためだけに生徒がきている。
金持ち学園だなあ。
僕は長距離がメインなので、五千メートル走に出場。
無事に優勝し、その様子はネットでリアルタイム配信されていた。
「おめでとうございます、御影悠真選手、今のお気持ちはどうですか?」
「並み居る強豪を追い抜いて優勝できたのでとてもうれしいです!」
「この気持ちを誰に伝えたいですか」
「高知まで応援に来てくれた彼女です!」
「いやー、今日の気温よりアツいですね! 応援が選手の原動力になる、素晴らしいことです! それでは優勝者へのインタビューでした!」
このやりとりもネットで配信されていたらしく、あとで陽菜に恥ずかしかったと照れながら怒られた。
◇◇◇
学園の夏休み、僕は健人の家に遊びに行った。
そこでは、先に来ていた友達がスマホの画面を見ながら騒いでいた。
「すごいな、水着から胸が溢れそうだぜ!」
「露出が多くないのにいやらしいよなあ……。こんな彼女が欲しいぜ」
「みんな、何見てるの?」
いったい何をそんなに騒いでるのか、内容からしたら女の子についてみたいだけど。
「お、来たか悠真。新しいグラビアアイドルがデビューしたらしくてな、特集組まれてるんだ」
「そうなんだ」
ふーん。
僕もちょっと見てみようかな。
そこには、ミディアムショートの黒い髪、ぱっちりした瞳、たわわな胸のアイドルが載っている。
『グラビア界の新星、「愛崎詩織」デビュー‼︎ 期待の次世代清純派癒し系アイドルを見逃すな! 彼女にしたいナンバーワン!』
なんて大げさなキャッチコピーが並んでいる。
「俺さっそく詩織ちゃんの公式インスタフォローしたぜ! お近づきになりたいなー」
「お前ら二人はダメだぞ。彼女持ちだからな!」
この中で僕と健人だけ彼女がいるけど、それはそれ、これはこれ、だ。
しばらくみんなでその画面をスライドしながら見ていた。
「お、ここに詩織ちゃんのインタビューが載ってるじゃん。好みのタイプは……『優しくて黒髪で、陸上が得意で頭がいい人』だって」
「この中だと悠真が一番近いな!」
健人がからかうように言ってきた。
いや、そうかもしれないけど全国で見れば当てはまる人いっぱいいるよね?
「続きがあるぞ。『できれば同い年の人がいいです』ってさ。詩織ちゃん16歳だから、俺たちと同じじゃん。ワンチャンあるかもな、悠真」
「はあ。そんなの宝くじに当たるより確率低いよ」
「そうだよな〜。悠真にグラドルの彼女ができたら絶交だな!」
「えっ? 嘘だよね?」
「嘘だよっ!」
しばらくみんなでグラビアを見た後、ゲームをして過ごした。
◇◇◇
時間は過ぎて、もう冬。
二学期のテストも終わって一安心というところだ。
このテストの時も学級担任から『成績が低いとクラス落ちだぞ』と言われ、その脅しが効いたのか、みんなクラスが落ちるということもなく無事にテストを乗り越えた。
「悠真、クリスマスの日、家で友達集めてパーティするんだ。来るよね」
「もちろん」
クリスマスの日、学校が終わってから夕方に陽菜の家にやってきた。
陽菜の家は、鳳翔学園の理事長の家だからなのか、かなり大きく門の終わりが見えないくらいだ。
いつも来るとき思うんだけど、都内なのに広すぎだ。
「あれっ、陽菜は?」
リビングに入ると、陽菜といつも一緒にいる金髪の女の子たちや、他のクラスの子たちがいたが、肝心の陽菜の姿が見えない。
「あー、なんか遅れるってさ。それよりも悠真くん、ヒナがいないうちにウチらとイチャイチャしない?」
「しませんけど。っていうかここ陽菜の家だし」
「今日はね、ヒナの両親いないんだって。理事会でのお付き合いがあるから帰ってこれないってさ。ヒナとヤリたい放題できるじゃん」
「ちょっ……」
「いいなあ。ヒナ学園トップの成績とインハイ優勝のカレピを独占しちゃって。いつも見せつけてくるし、ウチラにも貸してくれればいいのに」
「だよねぇ〜、ずるいよねー」
「あ、そうだ、ヒナが戻ってくるまでさ、ウチらと順番にキスしとかない? 胸までなら揉んでいいよ。ヒナには黙っててあげるから」
いや、ダメだろ。
ていうか、今回のパーティは女の子しかいないんだけど。
てっきり夏のビーチのときみたいに他の男のクラスメイトも呼んでるのかと思ってたのに。
女の子しかいないせいか、部屋には甘い香りが漂っている。
陽菜と付き合っていて女の子には慣れているつもりなんだけど、さすがに女の子しかいない空間は落ち着かないよ。
男友達とゲームをしているほうが気が楽でいいな。
健人は付き合っている一つ上のマネージャーとどっか行くらしいが、他の彼女いない勢は集まってモンハンをやってるか、たぶんアニメ鑑賞でもしてるんだろう。
むさ苦しい絵面だろうけど、そこで甘い香りが漂ってたりすればそれはそれで気持ち悪いな。
そういや陽菜に一度『男の香水ってどう思う?』って聞いてみたら、『わざとらしいキツい香りはイヤ』と言われたので、余計なことはしないほうがいいと学んだ僕だ。
女の子たちがはしゃいでいる様子をしばらく見る。
「ヒナは先に食べててもいいよ、って言ってたからもう食べようよ」
「そーだねー。ほら、悠真くん突っ立ってないでこっち来なよ」
ヒナといつもいっしょにいる金髪の女の子、桐谷彩由美さんが僕の手を握って強引にテーブルまで引っ張ってきた。
さっき『胸までなら揉んでいいよ』発言をした女の子だ。
「悠真クン、なんか食べる?」
「いや、陽菜が来るまで待つよ」
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