第52話 健人の後悔
「悠真、すまなかった!」
突然の謝罪。
勢いよく健人が頭を下げた。
よくわかんないな。
「どうしたの、急に。僕なんかされたっけ?」
「実は……、俺は知ってたんだ、鳳翔が二股かけてたこと」
「そうなんだ。いつからなの?」
「悠真、いつだったかお前が『浮気ってどう思う?』って聞いてきたことがあっただろ」
「そうだね。確か、僕が健人と美月が会ってるところを見て、健人が浮気してるんじゃないかと勘違いしかけてたときだよね」
「あのとき、美月さんと会った俺は、美月さんからいろいろと話を聞いた。美月さんは、その時点で鳳翔が二股していることを知ってたんだ。証拠の画像や動画も撮っていた」
美月が渋谷のビルの喫茶店で健人と話しているときに見せたスマホでのスライド画面。
なお、その中に悠真の隠し撮りの写真もいくつか紛れていたのだが、健人はそれに触れないことにした。
どうせ美月がそのうち悠真に言うだろう、と思ったからだった。
「そう、だったの」
「美月さんは中三のときにお前に振られてもなお諦めていなかった。そのために推薦キャンセルしてグラドルになった」
「え、僕は美月の人生を変えちゃってたの?」
「まあ、そういうことになるな。もちろん美月さん自身の意思だから、お前に責任があるわけじゃないだろうけどな」
「そうなのか……」
「で、鳳翔の二股を知ったが、美月さんから自分で何とかしたいから、それまで黙っててくれ、それから協力してくれ、と言われたんだ。そのあとは美月さんののろけ話が続いた。だから、それから俺はお前に対してずっと隠し事をしていたことになる」
「健人……」
「すまなかった、ときどきお前が悩んでいたこともあったのに、それを聞いてしまうと美月さんとの約束を破ってしまうことになる。俺は、最終的にお前のためになるだろうと思って、お前が苦しむのを黙ってみていたんだ」
「要するに、美月が僕を鳳翔さんから寝取るのに協力したってこと?」
「そうだな。俺は最低なやつかもしれない。殴ってくれてもいいんだぞ、悠真」
そこで僕は、健人の胸にネコパンチした。
「そんな辛そうな顔して言うなんて、健人もかなり罪悪感持ってたんでしょ。僕のために。だからそんな健人を殴ったりできないよ」
「悠真、許してくれるのか」
「許すもなにも、最初から怒ってなんかいない、でもちゃんと話してくれたのはうれしい。ありがとう、健人」
「悠真……」
夕暮れのグラウンドでは、部活が終わったサッカー部の部員たちがグラウンドをきれいに整地していた。
◇◇◇
「あ、ついでに聞いていい?」
この際だからね、疑問は全て解消しておきたい。
「なんだ、何でも答えてやるよ」
「美月が盛大にネタばらししたときさ、鬼塚先輩がウェーイってやってた動画あったじゃん? それも知ってたの?」
「いや、それは知らなかったな。知ったのはわりと直前だ。具体的に言うと鬼塚先輩に美月さんが偽告白手紙で呼び出されたときだな。そこで、鬼塚先輩の取り巻きがデジカメを落としていったんだ。それを拾ったら根岸のだった」
あっ……。
なんとなく察したけど、一応聞いておこう。
「ああ、なんとなく読めたよ」
「そこで俺は当然根岸を呼び出した。美月さんもいっしょにね」
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