第51話 小春の決意
「ねえ聞いた小春~、理事長の娘がけーさつに連れていかれたんだってぇ」
美月による断罪劇の翌日、早くも陽菜が警察に連れて行かれたことが学園中に広まっていた。
一年の最下位クラスにいる小畑小春の耳にもそのことが入っていた。
小春はカンニングして入学したことを陽菜にバレており、美月を階段から突き落とすよう命令されていた。
鳳翔先輩が警察に連れていかれた。
しばらく私が脅されることはないんだ。
うまくいけば鳳翔先輩はいなくなって、もう私がびくびくする必要がなくなるかもしれない。
でも、これでいいんだろうか、小春の心は揺れた。
両親をがっかりさせたくなくてやってしまった高校入試でのカンニング。
そしてバレずにうまくいったと思ったら、最悪の相手にバレてしまっていた。
そして殺人まがいのことをさせられた。
本当にこれで、いいのだろうか。
鳳翔先輩がいなくなったとしても、両親を騙したままだ。
根が正直な小春は罪悪感に押しつぶされそうで、もう耐えられなかった。
小春は近くの交番に立ち寄って全てを駐在にぶちまけた。
「よく正直に話してくれたね」
定年間近のベテラン駐在が小春の話を親身になって聞く。
「わたし、ずっと辛かったんです」
「そうだね。その話がホントなら、とても大変なことだ。何か証拠はある? その美月さんという方は怪我をしていないんだよね?」
「あります」
小春は自分のスマホを取り出す。
そして録音アプリを起動し再生すると、音声が流れてくる。
◇◇◇
『それで、今から言うことを実行しなさい、絶対にね。メモを取らないでよ。じゃあ、今から言うからね』
『ちょ、ちょっと待って下さい、なんなんですか急に?』
『待たない。今から黙って言うことを覚えなさい。来週の3時間目に2年の体育の授業がある曜日があるわ。その前の時間は古文。女子は着替えてから一階に降りていく。そのときに美月を階段から突き落としなさい。ね、簡単でしょ?』
『そ、そんなことできません、先輩。下手したら死ぬかもしれないじゃないですか!』
『大丈夫よ。「こうなると思いもしませんでした」って言い張れば過失致死で済むわよ。そんなに罪は重くないわ。パパに言っていい弁護士を用意してあげるから』
『わたし退学になるじゃないですか!』
『あら、そう。なら今すぐ退学になる? あなたが入学の時にカンニングしたこと、パパに言っちゃおっかなー』
小春は、呼び出されていやいや陽菜の家に着いたとき、録音アプリを起動してから陽菜の家に入った。
そしてずっと二人の会話を録音していたのだ。
◇◇◇
「これは立派な証拠になるねえ。最近の技術はすごいもんだよ。じゃあ、署に連絡するから、座って待っていなさい」
「はい、迷惑かけてごめんなさい」
「それはご両親に言ってあげるものだよ」
そして、駐在からの連絡を聞いた刑事が駆けつける。
こうして、陽菜には悠真に対する傷害罪と美月に対する強制性交等未遂の教唆、さらには殺人未遂の教唆までも加わることになった。
このあと、小春は学園を自主退学。
両親はそのことを知り、そこまで小春を追い詰めていたと思わなかった両親も小春に謝り、その足で小春とともに美月に謝罪に行った。
真摯な謝罪を受けた美月は、警察に対して寛大な処分を求めた。
◇◇◇
学園でのいざこざがあった三日後、僕は放課後の屋上に呼び出されていた。
「どうしたの、健人? 珍しいね、今日はサッカー部の部活じゃないの?」
屋上から見えるグラウンドでは、サッカー部の人たちがフィールドを駆け回っていた。
僕は今でもたまに助っ人で出ている。
人数がいないわけじゃないけど、サッカー素人の僕でもあれだけ動き回れるのだからお前たちも動けよ、というダシに使われている。
「悠真、すまなかった!」
突然の謝罪。
勢いよく健人が頭を下げた。
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