第45話 それぞれの動き
その場から逃げだした龍也は、とりあえず裏切った後輩の虎徹と獅童を近くの公園に呼び出した。
「おらぁっ、なぜ逃げやがった!」
ドカッ、ボコッっと二人を殴りつける龍也。
「痛いっすパイセン! だって美月ちゃん動きがめっちゃ達人っぽかったし、握力も強かったすよ! 掴まれた腕がまだ痛いっすもん」
「あっ、龍也さん、あのデジカメ落としてきちゃいました!」
「ああん? あのオタクくんのやつだろ。別にかまわねえよ。それより、俺の気が済まねえからもっと殴らせろ。お前らサンドバッグな」
「勘弁して下さいよ、パイセン! もう逃げませんから」
「すいません、許して下さい。何でもしますから」
「おう、わかった。何でもするんだな? まずお前たちをボコボコに殴らせろ。俺の気が済んだあとは、美月ちゃんを襲ったのはお前ら二人ってことにしとく」
「意味わかんないっす、パイセン」
「龍也さんが誘ってきたんじゃないっすか、イイ思いをさせてやるって」
「うるせえ」
◇◇◇
二人をしこたま殴った龍也は、陽菜に電話した。
「おいヒナ、話がちげーじゃねえかよ!」
「なんのことよ? それよりうまくいったの? 美月のあられもない姿は撮れたんでしょうね?」
「返り討ちにあっちまった」
「はあ? あんたバカ? それでも男なの? なにやってんのよ!」
「いや、あいつ柔道の師範代とかなんとかってらしいぜ。力じゃどうにもならなかった。けどさ、ヤれると思ったムラムラがおさまらねえんだ、責任取ってヤラせろよ」
「もう信じらんない! さよならクズ先輩、やっぱり悠真のほうがマシだわ」
「おい、あんな優男のどこがいいんだよ!」
「うるさい、もう連絡してこないで!」
こうして通話を切られた龍也。
しかし、肝心なことを陽菜に告げていなかった。
それは、美月を襲おうとした場面を健人に撮られていたこと。
だがヤれなかったことで頭がいっぱいだったから、そこまで気が回らなかったのだ。
やり場の無い怒りをぶつけるため、公園の側を歩いていた中年のサラリーマンに声をかけた。
「おい、そこのリーマン、金だせや!」
オヤジ狩りをした龍也は、その金でパチンコに向かっていった。
◇◇◇
「パパ~、あいつ学園から追い出してよ」
龍也と絶縁を宣言した陽菜はその夜、鳳翔学園の理事長である自分の父にお願い事をしていた。
「陽菜、どうしたんだ、喧嘩したのか。今まで問題を起こしても退学にしないで、ってお願いしていたじゃないか」
「もう飽きた、使えないし。やっぱワイルドなだけじゃだめね。結婚しても家事とか全然しなさそうだし、やっぱり悠真がいいわ~。家事とか全部やってくれそうだし」
「ホントにいいのか。退学にするのは簡単だが、少しだけ待て陽菜」
「なんかあるの?」
「もうすぐ理事長選挙があるからな。役員の根回しに時間が取られている。それが終わればすぐにでも退学処分とさせよう」
「ありがとう、パパ!」
◇◇◇
次の日の昼休み、健人は美月といっしょに学校の屋上に根岸を呼び出していた。
「どうしたんでござるか健人氏、話があるって。美月殿も」
「ああ、このデジカメ根岸のだろ?」
健人が持っていた袋からデジカメを取り出し、根岸に見せた。
「え、なんで拙者のカメラを健人氏が? 鬼塚先輩に持ってかれたはずでござるのに……」
美月襲撃のときに獅童が持っていた高性能デジカメには、律儀にもNEGISHIと書いてあった。
健人は、彼が逃げるときに忘れていったデジカメを拾い上げていた。
「どうして鬼塚先輩に持ってかれたんだ?」
「そ、それは……」
「言えないのか? 俺たちゲーム仲間だろ?」
「う……」
根岸は、健人と美月の顔を見るが、しばらく黙っていた。
「昨日な、美月さんが偽の告白で呼び出されて、鬼塚先輩たちに襲われそうになった。そいつらの一人が根岸のカメラを持ってた。どういうことなんだ?」
「そんな! 美月殿が襲われた……? そのときに拙者のカメラが使われたと、そういうことでござるか」
「そういうことになるね。でも私、根岸くんが鬼塚先輩といっしょに悪巧みするように人じゃないと信じてる。だから、本当のことを教えて欲しいんだ」
目を潤ませながら根岸のことを信じてると言う美月。
「美月殿……」
「俺もだ、根岸。俺もお前がそういうやつじゃないことはわかっている。だが、聞かないことにはわからないこともある。話してくれないか」
「……拙者、鬼塚先輩に脅されていたんでござる! 美月殿に告白して振られたことを言いふらされたくなければ言うことを聞けと。それで……」
健人と美月は、龍也がこれまで根岸に強要してきた様々な出来事を聞いた。
「そんなことが……。鬼塚先輩はひどい人ね。脅されていた根岸くんはやっぱり悪くないよ。私が保証してあげる」
「そうか、お前も辛かったんだな、根岸。話してくれてありがとう。それに、気づいてやれなくてごめんな」
「健人氏、美月殿、ありがとうでござる。心が軽くなったでござる」
「そうか、それはよかった根岸」
「根岸くん、ちょっといいかな? 私、いいこと思いついちゃった」
「美月さん、俺もだぜ。どうだ根岸、あいつらに一泡吹かせてやろうぜ」
「え、どうやってでござるか……?」
健人と美月が思いついたことを話す。
二人の考えたことは同じだった。
「できるでござるが……大丈夫なのでござろうか?」
「どうせ鬼塚先輩はそのうち学園にいられなくなる。ダメ押しするだけだ、問題ないさ」
「いざとなった810プロになんとかしてもらうから、大丈夫だよ」
「なんとかの内容を聞くのは怖いでござるが、わかったでござる。用意するでござる、データは拙者も持たされているゆえ」
「じゃあ、頼むぜ」
「お願いね、根岸くん。あなたが頼りなの」
「任せるでござるっ!」
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