第31話 朝チュン
「悠真くん、起きて」
「ん、ああ……。あ、あれ、美月? そっか泊まったんだった……」
そうだった。
母さんには健人の家に行くといいながら美月の部屋に行って、とうとうしてしまったんだった。
それで、
『今日は両親いないんだよ……』
という定番の言葉に釣られて、美月とさらに続きをしたんだった。
「夢、じゃないよな……」
「初めてをあげたのに夢オチにされるなんてイヤだよ。で、朝ご飯できてるから、着替えたらリビングに行こう」
先に美月は起きていて着替え済みだった。
そして僕も着替えてからいっしょにリビングに行く。
とうとう美月と最後までしたんだよな……と思いながらリビングに着くと、ダイニングテーブルにはご飯と味噌汁と卵焼きとほうれん草がきれいに並べてあった。
「悠真くんの朝は和食派、洋食派?」
「家だといつもパンだね。別に和食が嫌いなわけじゃないよ」
「そう、よかった。悠真くんに食べてもらいたくて料理も頑張ったの」
「あ、ありがとう」
うーん、このスーパーアイドルたるや。
何ができないんだ彼女は。
実は、女の子の手料理は初めてなんだよな。
陽菜といっしょに外泊したことは何回かあるけど、食事はそのときついでに頼むか、外で食べてくるから、陽菜の手料理を食べたことはまだない。
「ん、どうしたの悠真くん?」
「え、いや、女の子の手料理は初めてだな……と思って」
「あれ、陽菜さんは? 作ってくれないの?」
「作ってくれない、というわけじゃないんだろうけど、その機会がなかったね。いつも外で食事してるから」
「そっかぁ……私が初めてかぁ……」
なにやらニコニコしている美月。
そうしてご飯を口に運ぶ美月の姿は、ちょっと小動物みたいで可愛いな、とも思う。
そういや陽菜は料理できるんだろうか。
ラノベみたいに料理以外は万能だけど、料理だけ壊滅的、とかそんなキャラだったりするのだろうか。
そんなこと本人には聞けないけど。
ラノベの読みすぎか。
「どうしたの悠真くん? おいしくなかった?」
「ううん、違うよ。この卵焼き、ダシが効いてるな、って思って。僕のお母さんよりおいしいよ」
「悠真くん、それは言っちゃだめだよ……お母さんが用意してくれてるんだから」
「ごめん」
「お代わりいる?」
「うん」
そして美月が僕に用意されたお茶碗を持って炊飯器……じゃなくてデカくて重そうな鍋からよそおっている。
「その鍋なに? 重そうだけど」
「ルクルーゼの鍋だよ。めっちゃ重くて洗うの大変だけど、炊飯器で炊くよりおいしく炊き上がるんだ」
そういや、僕のお母さんもそんなこと言ってたな。
買ったはいいけどすぐにめんどくさくなって炊飯器に戻ったから、ほこり被ってるはずだけど。
やがて、茶碗に山盛りのご飯が運ばれてきた。
「ありがとう、美月」
「うん」
「いっぱい食べる君が好き」
「でも僕は食費めっちゃかかるよ。部活してるし夕食も結構食べないともたない」
「食費なら心配しなくてもいいよ。私めっちゃ稼いでるから。たぶん慎ましく生きていったら働かなくてもいいくらい」
「すげーな」
「だから悠真くん、私のヒモになってもいいんだよ」
「それについてはノーコメントで。冗談だよね」
「さあ? どうだろう? 本気かもね?」
微笑んでいる美月の表情から本気度はわからなかった。
でももしそれが本気なら、たとえ僕がホームレスになっても付き合ってくれそうだな、と思ってしまった。
陽菜の場合は、たぶんそうはならないだろう。
◇◇◇
「じゃあ、帰るね。美月、また学校で」
「うん、悠真くん、またね」
夕方、悠真くんは美月の家から帰っていった。
朝ご飯のあと、昼間でいっしょにスイッチ4でゲームして、昼間はパスタを作ってあげた。
さすがに夕方は帰らなきゃ、というので至高の悠真くんタイムはそこで終わりだった。
大変だったんだから、この日を合わせるの。
まず、悠真くんの部活がないこと。
陽菜さんと悠真くんのデートの予定がないこと。
そして、お父さんが忙しくないこと。
大企業の部長であるお父さんは、いつも帰りが遅く忙しい。
まとまって休みを取れるかどうか、こっそりお父さんの会社に電話して聞いた。
こうして調整した結果、とうとう悠真くんに初めてをあげちゃった。
悠真くんに初めてをあげちゃった。
大事なので2回言ったよ。
陽菜さんはあげてないんだしね。
私のほうが悠真くんを好き。
たとえ他に私のことを好きなイケメンがいたとしても、そこに幸せが待っているとしても。
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