第30話 後にも先にも一人だけ
「あっ、美月……」
スマホには、『部屋に来て』という短いDMが来ていた。
美月の部屋にやってきた僕は、部屋に入るなりいきなり服を脱がされ、うしろから触られる。
同時に耳も舐められたり、甘噛みされたりした。
「どう、悠真くん、気持ちいい?」
「どうしたのいきなり? 気持ちいいけど、耳はあんまり舐められたくないよ」
「あ、ごめん。それは止めるね」
スンッ、となった美月だが、僕の体を撫でる手の動きはやめなかった。
しばらくして手の動きが止まる。
「次はこっちでしてあげるね……」
美月は僕の前にやってきてしゃがみこんだ。
「あっ……、それ、いい……」
「んっ、んっ、んっ……」
前回より慣れた感があって、とてもいい。
「練習したんだ」
「なにで?」
「さあ、なにででしょう? んっ、んっ……」
美月にはぐらかされる。
なすがままの僕は手持ち無沙汰で特にすることもないので、服の上から美月の胸をさわる。
うーん、やっぱりでかい。
「悠真くん、そろそろ……」
美月が僕から口を離す。
「今日はこっちだよ」
美月は服を脱ぐ。
そしてベッドの上で仰向けになった。
なお、ベッドの上には大きなタオルがすでに敷いてあった。
「いいの、美月?」
「ふふっ、この間嫉妬してくれてたんでしょ?」
「なんの話?」
「私と健人くんが会ったのを見たって聞いたよ。それで健人くんに『何があったのか』って聞いたんだよね」
「あいつめ、余計なことを……」
「私と健人くんがそういう仲だと思った? 残念、こんなことするのは後にも先にも悠真くんだけだよ。それをこれから証明してあげるね。来て、悠真くん」
「美月……」
寸止めされていた僕は美月の前に腰を持ってくる。
「初めては前からお願い、悠真くんの顔を見ていたいから……後ろからが好きだったらごめんね」
「いや、特にそんなことは。じゃあ……」
◇◇◇
「はあっ、はあっ……美月、大丈夫?」
「うん、大丈夫。ちょっと痛みが残ってるけど」
美月の上から退いて下を見ると、ベッドの上に敷いてあったタオルには、赤いシミがついていた。
「ふふっ、悠真くん、好きよ」
「美月……」
もう一度軽く口づけあう。
陽菜の時にはない多幸感に包まれていた。
「どう、これで証明できたでしょ?」
「う、うん、これでわかったけど……」
「どうしたの?」
「これは、やってしまったんじゃないかって」
「これが男の子の賢者タイムってやつなのね。大丈夫だよ、悠真くん」
まだ少し顔の赤い美月が笑顔で僕を見てくる。
「陽菜さんのことはどう思ってる? 何か変わった?」
「いや、特に何も……」
嘘だ。
陽菜に対しての想いは変わらないが、罪悪感がある。
「悠真くん、罪悪感を感じる必要はないんだよ。だって、陽菜さんへの想いは変わらないんでしょ?」
「うん」
付き合い始めて一年経つから、だいぶこなれてしまった感はあるけど。
「だから、私と体が繋がったとしても、心は浮気してないから大丈夫。これは浮気じゃないよ。それに、これは私が一方的に初めてをあげただけの話。そうでしょ?」
それは無理筋じゃないかな。
でも、美月と体の相性はいいみたいだ。
比べてはいけない、と思うけど、それでも陽菜のときよりこちらのほうが気持ちいい。
それに、仰向けになってても美月の胸はポヨンポヨンしてて、つぶれていなかった。
正直、できるなら手放したくない。
不意に、去年のバレンタインを思い出す。
『この間話してたでしょ。そろそろ靴底が減ってきててヤバいって。あたしがバイトして買ったんだから……』
そう、陽菜は去年のバレンタイン兼バースデーで靴を買ってくれたんだ。
しかもバイト代で。
その靴はだいぶ底が減ってしまったが、まだ僕は練習のときに履いている。
このまま陽菜を裏切り続けるのか?
……少しうつむいた僕の顔を、美月が覗きこんできた。
「もちろん私はしゃべらないし、二番目でもいいんだ。都合のいい女ってことで」
「そんなモノみたいな扱いはできないよ」
美月はフォロワー1000万人いるんだよ。
きっとネットの特定班も粒ぞろいだろう。
清純派のアイドルを二番目にしてるとかバレたら、僕は社会的に死ぬ。
あ、その前に物理的に死ぬかも。
「彼女さんがしてくれないときは、遠慮なく私を呼んでね」
いや、そういう爛れた関係になりたいわけじゃないんだけど。
でも、ああ、今の彼女は、この関係は、どうすればいいんだ……。
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