第29話 本当の理由
『で、本当の理由はなんなの、美月』
『SNSを見てアイドルに憧れて……』
『陰キャのあなたがそれはないでしょ』
私の嘘が、一刀のもとに斬り捨てられた。
『実の娘に向かってひどい!』
『何年あなたの母をやっていると思うのよ。それに美月の行動、私にも心当たりがあるわ。血は争えないわね』
昔を懐かしむような顔をするお母さん。
『それって一体……』
『好きな男の子がいるのね』
『どうして……』
『やっぱりそうなのね。いいじゃない、頑張りなさいよ。私もお父さんを手に入れるために努力したわ。自分を磨いたり相手を陥れたり……』
『え? なんか後半が不穏すぎるんだけど』
『お父さん人気だったから。で、どんな男の子なの?』
『陸上の選手で、成績は常にトップ。顔はかわいい方向のイケメンだと思う。でもまだ誰とも付き合う気がない、って言ってたの』
『その子はどこの高校に行くの?』
『鳳翔学園に行くみたい』
『ああ、進学校の。そこでその子はきっとすぐに学園一の美女と仲良くなって付き合って……寝取り甲斐があるわね。あー楽しそう』
クスクスとお母さんは笑った。
でも、私は楽しそうとは思わない。
ただ悠真くんが欲しい、それだけなんだから。
でも、もしお母さんの言うとおり彼女ができていたら……。
いや、関係ない。
過程や……方法なんて……、なんでもいいから寝取るしかないというのなら、寝取るだけだ。
『あら、いい顔してるじゃない美月』
『お母さん!』
『冗談よ、冗談。それで、でもそれなら、最初から鳳翔学園に行けばいいんじゃないの? 盗られないように近くで見張ったほうがいいわよ』
『その悠真くんがね……、あ、好きな人の名前だけど、「グラドルが好きだ」っていうのを聞いちゃったから。鳳翔学園に行くのは確定としても、先にグラドルになってから会いたいの』
『……わかった。認めるわ。頑張るのよ』
『ありがとう、お母さん! 大好き!』
『じゃあ次はお父さんね』
そして、父の待つリビングに戻ってきた二人。
『やはり、お父さんは認めないからな! 芸能界には可愛い美月を狙うオオカミがたくさんいるに違いない!』
『アナタ』
『なんだ』
『どっちがオオカミだったのか、もう忘れたのかしら? これは思い出させてあげないといけないようね……』
『ひえっ! 仕方がない、許そう。だが、家から出るのはまだ早いぞ、ここから通うのが条件だ、いいな!』
『わかった。ありがとう、お父さん!』
そういってお父さんに抱きつく。
『仕方がないなぁ甘えん坊の美月は……。だけど、芸能界には気をつけるんだぞ。なにかあったらお父さんに言うんだ!』
『わかった』
チョロいわね。
母子二人は同じことを思った。
『でも、美月』
『なに、お母さん』
『学業はおろそかにしないでね。大学に行けとまでは言わないけど、高校にはちゃんと行ってもらうわよ』
『わかった』
そして、私は約束通り最初の1年は藤堂高校に通ったのだった。
◇◇◇
こうして、美月は体よく両親を追い払った。
そして迎えるのは週末。
週末の部活が終わって、のんびりしていた悠真。
そのスマホがピコン、と鳴った。
悠真は着替えを用意して、家を出た。
「母さん、ちょっと出かけてくる」
「悠真、こんな夜なのに、どこへ行くの?」
「友達のところ」
「また健人くんのところなの? こんな遅くからお邪魔して迷惑じゃないかしら」
「大丈夫だよ。みんなで集まってゲームするだけだから」
「ゲームもほどほどにしなさいよ。泊まってくるの?」
「そのつもり」
「夜更かしはだめだからね、悠真」
「わかってるよ」
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