第26話 疑問はすぐに解決
あんまり寝られなかった。
陽菜との久しぶりのデートの日だったのに帰ってきてからも寝る気がしないから、ゲームとかして眠くなるのを待ってたけど、たぶん夜中の3時とか過ぎてたんじゃないだろうか。
それでも学校は待ってくれないので、制服に着替えて登校する。
「おはよう」
「また月曜日だよ」
「もうすぐテストだよな~早すぎない?」
「部活辞めたくなりますよ~」
朝からいろいろな声が聞こえてくるけど、どうでもいいかな。
教室に入ると、ほぼみんな揃っていた。
「おはよう悠真、珍しくギリギリじゃないか。目の下にクマができてんぞ」
「ああ、そうかもね……」
健人が声をかけてくる。
あいかわらずのイケメンフェイスとイケボだ。
目の下にクマもない。
「悠真くん、大丈夫?」
隣の席にいる美月からも声がかかる。
「うん、まあね」
見た感じ二人に特に変化はない。
いつもの二人に思える。
昨日のことはなんだったんだろう。
さらっと聞ければいいんだろうけど……。
結局、自分でも上の空とわかるくらい授業にも身が入らず、お昼休みになって健人と学食に行く。
A定食の食券を買って、定食を受け取ったら二人でテーブルに着く。
「ねえ健人」
「なんだ」
覚悟を決めてスパッと聞いとこう。
「昨日の夕方、美月……美月さんと会ってなかった? たまたま遠くから見ちゃったんだけど。二人でホテルのほうに向かってなかった?」
「ああ……お前が想像してるようなことはないな。知ってるだろうが俺には大事な彼女がいる。あの書店からなら方向は同じだが、いっしょに行ったのは喫茶店だ」
「そうなの?」
「ああ、お前のことで相談があってな。ラノベが好きだ、って教えておいたぞ、俺はお前の親友だからな!」
ドヤる健人。
ん、まあそうだな。
そりゃそうだよな。
なんてくだらないことで悩んでたんだ。
「そうだね」
「真顔で返すなよ。恥ずかしいだろ」
「ごめん」
「ついでに言うなら、喫茶店のマスターに聞けばいいだろうし、喫茶店で別れたあと俺は電車で帰ったからスイカの入場履歴を見て、そのまま家に帰ってきたから俺の親に聞けば……」
「いや、ほんとごめん、もう疑ってないから! 僕がバカだっただけなんだ」
もしかしたら、美月にも聞かなきゃいけないかも、って思ってたけど、この分ならそんなことしなくてもよさそうだな。
まったく、一晩悩んでたのもバカバカしいぞ。
◇◇◇
『美月さん、俺と会ったところを悠真に見られてたみたいだ』
休みの日に会って紆余曲折の果てに交換したインスタでのDM。
協力関係にあるのだからこういうことを一応伝えておくべきだろう、ということで部活も終わり家に帰ってきた健人は美月に連絡していた。
すぐにピコン、とスマホから音が鳴る。
『悠真くんがあの場にいたんだ、気づかなかったよ。確か陽菜さんとデートだったはずだけど』
『なんで把握してんだよ、こわっ。で、少し離れたところにいたから声をかけることができなかったようだ』
『悠真くんはなんて言ってたの?』
矢継ぎ早にDMが返ってくる。
悠真のこと好きすぎだろ、と思う健人。
『どうやら俺と美月さんの仲を疑ってたみたいだ』
『君は彼女いるよね、一つ上の』
『もちろんだ。だからちゃんと説明した』
『そっかぁ……悠真くん妬いてくれてたのかな、うれしいな』
そのあとのメッセージにはハートマークがたくさんついていた。
それは俺に送らなくてもいいんじゃないか、と思う健人だが、めんどくさくなりそうなのでそれについては打ち返さなかった。
『まさか美月さんと会うところを見られてたなんて、想像もしてなかったぞ』
『別に見られてもいいんだけどね。むしろそういうプレイだと思えば……キャー☆』
『やめろ、清純派アイドルがプレイとか言っちゃいけません!』
『健人くんだってノリノリじゃない』
『やかましい』
『それはおいといて、私のことを気にしてくれた悠真くんにいつかご褒美をあげなきゃね。何してあげようかな……』
それ以上はいろいろとまずい、と思う健人。
『これ以上は書くなよ。何をするつもりか知らんがさすがにそれは聞きたくないぜ』
『つまんないの。私は悠真くんを一生養う覚悟だってあるんだよ。グラビアの稼ぎでもう一生遊んで暮らせるんだから』
『悠真の性格的にヒモにはならねえと思うぞ』
一年程度の付き合いだが、健人は悠真が自分のことはできるだけ自分でしたい派だということを知っている。
『望むなら悠真くんがヒモでもいいんだけどね』
『ていうか半年で一生分の稼ぎがあるのか……』
『全ては悠真くんと生きて、添い遂げるため』
『おい、重いぞ』
『私の体重はグラビアで公表してるどおりだよ?』
『そうじゃねー。愛が、重いってことだ』
『分かってるよ。あとは、どうやって受け止めてもらうかってことだけ』
『受け止めてもらえなかったら?』
『悠真くんを殺して私も死ぬ』
『うっそだろお前』
『うん、嘘。私は「二番目でもいい」って悠真くんに言ってるからね。でも……』
『でも?』
『悠真くんを大事にしない奴には、絶対に譲らない!』
『……そうだな』
『じゃあ、また何かあったら教えてね』
『わかった』
インスタでのやり取りを終えた健人は、時間にして10分ほどだったはずだが、ひどく疲れた。
「美月さん、やっぱ頭いいんだよなぁ……めっちゃ反応早いし。でも相手するのは疲れるぜ」
だが、美月が悠真のことを好きなのはわかった。
いや、もう知ってはいるが、どこまで深いのか底が見えない。
これはどういう結末になるにしろ悠真が大変だ。
せいぜいサポートしてやるか、と思う健人であった。
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