第25話 悠真と陽菜
「あんっ、時間ないんだから早くしなさいよっ!」
「これが欲しかったんだろ、素直に言えよ」
「もう、だから早くしてってば! 悠真を待たせてるんだから。いくらトイレだっていったって、こんな長い時間ごまかせないわよ!」
陽菜は悠真に『ちょっと待ってて』と言ったあと、男女兼用の広いトイレの中で鬼塚龍也と会っていた。
スマホのメッセージで呼び出されたからだ。
「まったく、なにかと思えばヤラせろ、って……今日デートだって言ったじゃないの」
「まあそう怒るなよ。俺だって溜まってんだよ。おまえこないだまで生理でさせてくれなかったじゃん」
「それは悠真も同じなの! ほら、早くして、終わったら服とか髪とか直さなきゃいけないから。これのせいで悠真にバレたりしたら許さないからね。パパに言って退学させてやるから!」
「へえへえ、怖いねえ。怖いからさっさと終わらせるか。……うっ」
「もう、また中に……処理が面倒じゃない! ほら、さっさと帰って! しばらく会わないからね」
「へっ、ありがとよ」
龍也は黒のオールバックの髪が少し乱れていたが、そんなことは気にせずアクセサリをじゃらじゃら鳴らしながらトイレを出て行った。
「ああ、もうこんな時間、一時間近く経ってるじゃない。悠真は怒ってるかな、帰ったかもしれない、スマホに連絡は……何もないわね。とにかく早く行かなきゃ」
慌てて最低限の身だしなみを整えて、悠真を待たせている場所に向かう陽菜。
「どう言い訳しよ……トイレが混んでた、とか。もうなるようにしかならないわ」
だが、陽菜の心配は必要なかった。
悠真は美月と健人が密会してるかもしれないという妄想で頭がいっぱいで、時間が経っていることに気が付かなかったからだ。
「悠真お待たせ、メイク直すのにすっごい時間かかっちゃって、どうしたの? なんか顔が怖いよ?」
「いや、何でもないよ。陽菜、まだ時間ある?」
◇◇◇
僕が陽菜を連れて行った先は、休憩用のホテルだった。
部屋に入るなり、陽菜をベッドに押し倒す。
「ちょっと、服にしわが寄るじゃん。慌てないでよ」
「早く脱いでよ」
なんだか無性にイライラする。
「あんなに待たせたから怒ってんの? ごめんってば」
待たせたからというわけじゃない。
ただ……、自分に昔好意を持ってくれた人が再び現れて、いろいろ尽くしてくれたと思ったのに、親友とも会っててホテルに行くような仲だったなんて。
気がつけばズボンを下ろされているけど、この前の美月の時の情熱的なのと比べれば、なんというか、いまいち物足りない。
「ごめん、もういいからさせて」
陽菜をいったん引き剥がして、もう一度ベッドに押し倒す。
陽菜は特に抵抗しなかった。
「んっ、あっ、どうしたの悠真? なんかいつもと違う……」
「いや、何でもないよ。あ、久しぶりに陽菜とするからちょっと焦ってたのかも」
我ながら苦しい言い訳だ。
「ちょっ、悠真もっと優しく……」
健人のこと、美月のこと、いったいどういうことなのか、なにかズレてる気がするが、それもよくわからない。
なにかがパズルのピースが足りないもどかしい感じ。
陽菜を待っているときと同じようにまた思考が同じところを行ったり来たりするだけでまとまらない。
「そろそろ……」
「やっと、なの……?」
余計なことを考えながらだったから、いつもより時間がかかったと思うけど、腰が熱くなって終わりを迎える。
「はぁ……はぁ……」
僕は陽菜の横に倒れ込んだ。
◇◇◇
覆い被さっていた悠真が、あたしの横に倒れ込んできた。
いつもより息が荒い。
なぜだかわからないけど過去一乱暴だった。
ガッツかれるのは好きなんだけど、それとは違う。
なにか八つ当たりされているような……。
でも優しい悠真からしたらあり得ないわね。
それよりも、危なかった。
悠真をかなり待たせたから、誤魔化すためにと思ってあんまりしたくないんだけど口でしてあげたが、あんまりうれしそうでもなく、途中で止めさせられる。
なによ、普段ならうれしがるくせに。
そして、いつもやらせている前戯もなしに挿れようとする悠真。
童貞かよ、と思うけど今回ばかりは都合がいい。
直前までしてた鬼塚先輩の証拠を見られることもなく始まったから。
これでバレないでしょ。
終わった後はササッと洗って着替えればそれでおしまい。
「悠真、先にシャワー浴びてるね」
「……うん」
生返事をした悠真は、ベッドからしばらく動かなかった。
まったく、なんでこんな心配しながらしないといけないのかしら……。
本命は悠真だし。
将来性抜群だから、それ以外ありえない。
他の奴は遊びなんだし、ちょっとした日常のスパイスってやつよね。
でもあたしだけ楽しんでるのは不公平だから、悠真のこと彩由美たちにも貸してあげてもいいかな。
悠真も他の女の子としてから、やっぱりあたしが一番いい、ってなるのは間違いないし。
シャワーから出てきたけど、悠真は寝転んだままだった。
「悠真、あたし終わったよ」
「……うん、わかった」
ゆっくりと起き上がった悠真は、シャワーに向かった。
「危なかった……。もうデートの日は絶対に鬼塚先輩と会わないことにしよう」
いつもお読みいただきありがとうございます!




