第22話 美月と健人①
健人と美月が会っている場面に出くわした。
美月は薄いピンクのブラウスと、白いスカートという出で立ちだ。
なんで、その組み合わせ。
しかも二人とも笑顔で仲がよさそうだ。
こころなしか甘い雰囲気もしている。
おい健人、どういうことだ?
お前には一つ上のサッカー部の美人ジャーマネがいるだろ。
美月も笑顔で対応してるっぽい。
ここからは何を話しているか聞こえないが、やがて健人が美月の手を引いてどこかへ向かい始めた。
美月は少し引っ張られるような形になっているが、その行く先は、渋谷のラブホ街がある。
えっ? えっ? そんなバカな。
今すぐ確かめてやりたい気になるが、陽菜を放っておくわけにはいかないからどうしよう。
迷っているうちに二人の姿が見えなくなっていた。
二人にメッセージでも送って確かめるという方法もあるが、その場合なんて聞けばいいんだ?
健人は学園に入学以来の親友だし、美月は……僕の彼女ではないけどそれなりの関係にある。
クラスだと二人はたまに会話するくらいだったと思うけど、二人はいったいどういうつながりなんだっけ?
「悠真、お待たせ、メイク直すのにすっごい時間かかっちゃって……。どうしたの、なんか顔が怖いよ?」
気がつけばあたりは結構暗くなっていた。
堂々巡りの考えをしている間にかなり時間が経ってたみたいだ。
「いや、何でもないよ。陽菜、まだ時間ある?」
◇◇◇
少し時間を遡り、健人が美月と外で会ったときのこと。
「どうしたの、健人くん、こんなところに呼び出して」
「来てくれたんだね、もしかしたら既読スルーかもしれないと思ったよ。俺は美月さんのSNS知らないから靴箱に手紙を入れたんだけど。学校のアカウントだと先生に見られるから送れないしね」
悠真と陽菜のデートの日、健人は美月を呼び出していた。
待ち合わせ場所は、偶然にも陽菜が化粧を直すために入ったビルの近くだった。
「で、どうしたのかな、学年成績2位でサッカー部エースのイケメン健人くん。あなたは確か、彼女持ちだよね」
「その彼女から許可はもらっているよ。なんなら同席させてもいい」
「え……ちょっと引くんだけど。まさかそんな人だとは思わなかったわ。人は見かけによらないものね。私にそんな趣味はありませんから、さようなら」
「お、おいちょっと待て! 美月さんは何か勘違いしている! 俺は話を聞きたいだけだ」
踵を返して去ろうとする美月の手を、健人は強引に掴んだ。
「私に話すことなんかないわ。だいたい何を話す気なの?」
「話す内容も含めて聞きたいんだ。頼むから付き合ってくれ」
「意味わかんない、いやです」
「悠真のためなんだよっ!」
少し声を荒げた健人に対して、チラチラと通行人が目を向けた。
「なーに、こんなところで痴話喧嘩かしら?」
美月の拒否に対して少しばかり昂ぶった健人だが、すぐに落ち着いた。
声を落として美月に提案する。
「大声を出してすまん。だが、話をしたい。できるだけ、静かなところで」
「……わかりました。それと私に合わせて笑顔でお願いしますね、健人さん。通行人に変な目で見られますから」
◇◇◇
そうして、少し歩いたところにあるビルの10階の喫茶店に二人が入る。
知らない人間からすれば、イケメンと美女の高校生カップルが落ちつくために入ってきたのであろうが、そんな雰囲気ではなかった。
あまり客のいない地味な喫茶店であったが、二人は念のため一番奥のテーブルに座った。
「ありがとう、とりあえず来てくれて。ここは俺が出すよ。好きなものを頼んで」
「じゃあ、ケーキとジュースのセットね、一番高いやつ」
「いいよ、俺も同じものを頼もうかな。それなら美月さんが気を遣わなくてもいいでしょ」
「見栄を張ると、財布が寒くなるんじゃないの、健人さん。無理しなくてもいいのよ」
「まいったな、これは。まあ悠真のためなら惜しまないさ」
塩対応の美月に対して苦笑いをしながら、店員にこの店で一番高いケーキセットを頼む健人。
「で、話ってなに?」
「最近、悠真の様子がおかしい」
「そうなの?」
「悠真をよく見ている美月さんのほうがよく分かっていると思うけど」
「なに、遠回しな言い方して。仮に悠真くんがおかしいとして、私のせいだと言いたいの?」
「そうかどうかを判断するために美月さんを呼んだ」
しばらく睨みあう二人。
健人は水の入ったコップを飲んで、喉を潤したあと続ける。
「悠真は入学してから間もなく陽菜さんと付き合い始めた。それから一年間は特に何もなかった。だけど、美月さんが転入してきてから、なんだか陽菜さんに対する悠真の動きが変わってる……なんというかぎこちない気がするんだ」
「はあ、あなたは悠真のことが気になるのね」
「最初っから悠真のためだって言ってるじゃないか。親友だぞ」
美月は普段の笑顔を捨てて、鋭い目で健人を見つめる。
美月もコップの水を飲んで一息ついた。
「あなたは、大丈夫そうね。悠真くんもあなたのことはよく褒めているし……。単刀直入に言うわ。私は悠真くんを寝取りたいの」
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