第21話 最低だ、僕は……
「これが悠真くんの本体……」
「ためらいなくいったね……ていうか本体とか言わないで」
「いや、だって待ちに待った……じゃなくて、私も恥ずかしいの。でも散々胸を見られたんだから、悠真くんのを見てもいいよね、おあいこだよね」
なにか言い返さなきゃ、と思うが、僕をじっと見ている美月を見て何も言えなかった。
やがて、意を決したように美月が僕の股に顔を近づける。
「美月、そんなことまでしなくても……」
あやうく『いいぞもっとやれ』って言いかけた。
あぶねぇ。
「悠真くん、どこがいいか言ってね。本とか動画で勉強したけど、初めてだから……」
「あっ、気持ち、いい……」
というかそれ以外の言葉が出てこない。
いつだったか陽菜が『男ってエッチのときは知能指数がダダ下がりだよねー☆』って言っていたが、うん、否定できないな。
◇◇◇
「気持ちよかった?」
「ええ、ああ、うん、とっても」
今の僕のIQは人類最低値を記録しているだろう。
そのあと、窓を開けて空気を入れ換える。
二人とも落ち着いた後、せっかくだからテーブルに用意されていたスイッチ4でマリカをやる。
今度は僕と美月でいい勝負だった。
重量級だけトップスピードを維持できるというバグがすぐにSNSで見つかって直されてたからだ。
「ねえ悠真くん?」
「ん、なに?」
「今日のこと、私は誰にも言わないから。もちろん彼女さんにもね」
「美月……」
「前にも言ったから、『二番目でもいい』って。一方的に私が好きなだけだから、悠真くんは気にしなくてもいいんだよ。偶然抽選にあたった友達のところにスイッチ4を遊びにきてただけ、ほら、何もおかしくないでしょ。それに一線も越えてないんだし」
僕はどうすればいいんだろう……。
◇◇◇
悠真が帰ったあとの美月の部屋。
「ごめん、悠真くん、ちょっと言葉が足りなかったね。『二番目でもいい』っていうのは、ホントは『今は二番目でもいい』っていう意味だから。でも、そのうち意味がわかるからいいよね」
◇◇◇
「ゆーまっ、デートに行こっ!」
「うん、行こう」
久しぶりに陽菜とのデートだ。
陽菜が忙しかったり、また真夏のインハイに向けて陸上の部活が忙しくなったりで、いっしょに外へ行く機会がなかった。
スイッチ4の販売元が生産を一気に増やして手に入りやすくなったから、ゲーム仲間でひたすら遊んでたのもあるんだけど。
陽菜がまた服を買いたいというので、1○9に行ったり、ビルの中にある喫茶店でランチしたり。
いつもと変わらない感じでのんびりデートした。
夕方になってもまだ明るい渋谷の坂道を並んで歩く。
「あ、悠真、化粧直したいからちょっと待ってて」
「うん」
そう言って陽菜は近くの本屋に入っていった。
本のショールームには流行の本が並べられている。
いまの売れ筋はなんか効率的な仕事のやり方、みたいなハウツー本らしい。
まだ僕には関係なさそうだけど。
他にも『男女の恋愛のすれ違いを解明する! 婚活男女必見!』というタイトルの本も並んでいた。
ぼーっと見ていると、視界の片隅に見知った顔が映った。
健人だ。
ライトブルーのパーカーに、白いスニーカーを履いていた。
あまり見ない格好だな。
「おーい、けん……」
と声をかけようとしたが、薄茶色の短髪のさわやかイケメンは、さらに見知った顔と会うところだった。
それは、美月だった。
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