第2話 練習試合
「悠真くん、頼みたいことがあるんだ」
入学二日目の二時間目が終わった後、話しかけてきたのは僕の前の席に座っている薄茶色の髪のさわやかイケメン、三浦健人くんだった。
「ん、いいけど。なに、健人くん」
「俺サッカー部に入ったんだけど、一年生が少なくてさ、他校との練習試合に人が足りないんだ。助っ人で出てくれないかな?」
「サッカーやったことないんだけど、それでもいいの?」
「いいよ。足が速いんだろ、とにかく動き回って撹乱してくれればそれでいいんだってさ。先輩から頼まれたんだよ。なあ、頼む!」
両手を合わせて僕を拝み倒してくる健人くん。
「ていうか健人くんだって昨日サッカー部に入ったばかりじゃないの。なんでいきなりこんな話になってるの?」
「なんか1年生の入部希望者がいつもより少ないらしくてさ、保留にされてるのを含めても足りないんだって。今のうちにそういう雑用の経験しとけ、って言われたんだ」
「そうなんだ、サッカー部って意外と体育会系なんだね。うん、わかった、いいよ」
「ありがとう! 助かるよ!」
僕の手を握ってぶんぶん手を振る健人くん。
「あー、それでさ、クラスメイトでしょ、呼び捨てでいいかな」
「そうだな、じゃあ頼むよ悠真」
「わかった健人。SNSの連絡先交換しない?」
「オッケー。あとでまた詳しいことメッセ送るわ」
◇◇◇
次の日の放課後、学園のサッカー場にて僕は約束通り他校との練習試合に出場した。
「ちっ、この1年、ちょろちょろしやがって!」
という声が聞こえてきたと同時に僕はタックルを食らって転んでしまう。
「悠真、大丈夫か!」
健人が駆け寄ってくるが、笛も鳴らずそのまま試合は続行だ。
あからさまな悪質タックルだったのに……。
「ちょっと審判! 何やってんのよ! さっきの絶対反則でしょ!」
フェンスの外から大きな声が聞こえてきた。
そこにいたのは鳳翔さんだ。
気が付かなかったけど練習試合を見に来ていたらしい。
フェンスをつかんで、長い茶髪を揺らしながらこっちに向かって声を張り上げていた。
「うるせぇ、外野が騒ぐんじゃねえよ! たまたまぶつかっただけだ、そういうことはよくあるんだよっ!」
「なによっ、スポーツマンシップってあんたたちにはないの!?」
僕にタックルしてきた選手と鳳翔さんが大声で言い合っている。
サッカーのことはよく知らないけど、ボール持ってない僕にわざとぶつかるのはありなのか。
とにかく試合は止まらないので僕はさっきの選手も含めてぶつからないようちょこまかと動き、試合はこちらの勝ちで終わった。
◇◇◇
「よくやってくれた、お前が撹乱したから相手は勝手にペースを乱してくれたよ」
上級生からお言葉をいただいたよ。
ちょっとしかボールに触ってないけどね。
「悠真くん、大丈夫⁉︎」
グラウンドに入ってきたのは鳳翔さん。
「うん、たぶん。どこも痛くないよ。広いフィールドを走り回って疲れたけど……」
「もう、陸上の選手でいきなりエース候補なんでしょ、足でも怪我したらどうするのよ⁉︎」
「あのあとぶつからないように避けてたから大丈夫だよ。ってか心配してくれてありがと」
鳳翔さんは少し顔を赤くして横を向いた。
「別にあんたのことを思ったわけじゃないからね!」
そして鳳翔さんはグラウンドから出て行った。
「悠真、大丈夫か。すまん、相手があんなラフプレーをする奴らだったなんて、知ってたら助っ人はお願いしなかったんだけど」
「ちょっと危なかったかな。しばらく助っ人は遠慮したいよ」
「わかった。それと鳳翔陽菜さん……だったっけ、試合を見に来るような仲だったのか? 陸上のエース候補ってことも知ってたし」
「いや、まともに話したのはさっきが初めてだよ。席が隣だから何度か目が合ったことはあるけど」
◇◇◇
「悠真くん、あたしと付き合って」
翌日、なぜだか告白された。
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