第3話 「王国へ向かう道」
帝国兵を退けた後、迅は荒れ果てた戦場を後にして、新撰組に従った。
土方、副長の背中は変わらず硬く、隊士たちの動きは統率されている。
「お前、まだ余裕があるな」土方が言う。
「え、ええ……なんとか」迅は息を整えながら答えたが、全身が熱く、興奮が冷めやらなかった。
歩きながら、沖田が囁く。
「迅くん、ここでは剣だけじゃ通用しない。魔法を読む目も必要だよ」
迅は首をかしげる。
「魔法を読む…?」
ちょうどその時、遠くの森の影が揺れ、青白い光が飛んできた。
魔法攻撃だ――矢のように高速で飛ぶ光線。
迅は本能でしゃがみ込み、すぐ後ろに回り込む。
「間合いを詰めろ、俺の後ろに隠れるな!」土方の声。
迅は咄嗟に剣を振る真似をして、光線を切り払う仕草をした。
実際には剣はない。だが魔法の軌道は、近距離での人間の動きを読むと微妙に逸れることを迅は経験で知っていた。
小柄な体で左右に素早く飛び込み、背後に回る。光線はかすり、地面に穴を開ける。
沖田と斎藤が間合いに飛び込み、帝国の魔法使いを捕らえる。
迅は初めて、自分の“間合いと反射”がこの世界でも通用することを実感した。
「……やっぱり、俺には戦う場所があるんだ」
歩きながら土方が説明する。
「この世界では魔法が全てじゃない。だが、魔法を理解して戦わねば命はない」
「つまり、力だけじゃダメだと」迅が言うと、土方は頷く。
「そうだ。体だけで戦えると思うな。頭を使え、戦場は生き残るための計算だ」
副長の言葉を胸に、迅は歩を進める。
道中、斎藤が横で淡々と剣を振る。
「お前は素早いが、無駄に動きすぎる。相手の魔力の癖を読むんだ」
迅は手を止め、目の前の草むらの揺れを観察する。
魔法は力だけでなく、使用者の癖でパターンが読める――なるほど、これは現代の喧嘩経験と似ている。
森を抜けると、帝国の斥候部隊が待ち伏せしていた。
小柄な迅はまた前に出る。
•間合いを見極め
•魔力の矢を避け
•斎藤や沖田の隙間に潜り込む
小さな体で俊敏に動き、帝国兵を翻弄する。
一度倒れてもすぐ立ち上がり、反撃する。
土方が遠くから叫ぶ。
「迅! 無駄に突っ込むな! でも、読んでるな――その動き、使える!」
迅は心の中で笑う。
「現代の俺でも、ここでは役に立てるんだ」
戦いが終わると、隊士たちは簡単な休息を取る。
沖田が笑顔で言った。
「君、動きは喧嘩そのままだけど、戦場向きだね」
迅は頷きながら、心の中で決める。
――この世界で、俺は戦う。
――命を懸ける覚悟を持った奴らと共に、生き抜く。
その夜、焚き火の明かりに照らされ、迅は小さな体を丸めながら考えた。
「俺、やっと生まれる時代を間違えた理由がわかったかもな…」
小さく笑い、拳を握り締める。
異世界の戦いは、まだ始まったばかりだった。




