第2話「異世界の戦場と新撰組」
炎と硝煙の匂いが鼻を突いた。
迅はまだ現実が信じられず、周囲を見回す。
目の前には、魔力で武装した帝国兵が、巨大な魔法剣を振りかざして迫ってくる。
「――くそ、こんな化け物にどう立ち向かえってんだ!」
小柄な体は緊張で硬直する。だが、反射的に前へ踏み出す。
喧嘩で鍛えた身体は、恐怖より先に動く。
相手の間合いに飛び込み、脚をすくわせ、腕を避けながら背後に回る。
だが、相手は魔法で空を飛び、剣を振り下ろす。
あっという間に体勢が崩れる――その瞬間、黒装束の剣士が飛び込んできた。
「そこからは俺たちが相手をする!」
低く響く声。土方歳三だ。
その背後には沖田総司、斎藤一、永倉新八――見覚えのある顔が揃う。
迅は息を呑む。
「……新撰組が、俺を助けに?」
瞬時に判断する。
•小柄で素早い
•喧嘩慣れしている
•武器なしでも、間合いと読みで勝てる
現代での経験が異世界でも通用する――胸が高鳴った。
土方が帝国兵の攻撃を受け止め、沖田が斬り抜ける。
迅は瞬間的に、彼らの戦闘リズムを分析した。
「突くより避けて入る。剣士たちは間合いを崩すと強い」
咄嗟に帝国兵の横に回り込み、肩を突き飛ばす。
小柄な身体での回避と踏み込みが功を奏し、魔力の剣をかすめる。
沖田が目を細め、微笑む。
「……やるじゃないか、君」
土方は背後から迅の肩を叩く。
「生き延びたいなら俺たちの動きを学べ。無駄に突っ込むな」
戦場の中、迅は実感する。
•小柄な体は決して弱点ではない
•喧嘩で鍛えた反応速度と間合いが、この世界でも役立つ
•そして何より、命を懸ける覚悟を持った仲間がいる
斎藤が近づき、低く言う。
「気を抜くな。ここは遊び場じゃない。だが、お前には才能がある」
戦いが終わると、帝国兵は退却し、戦場は一時の静寂を取り戻す。
炎の匂いと硝煙の中で、迅は立ち尽くす。
手のひらは血で赤く染まり、心臓は激しく鼓動している。
――この世界では、強さだけでなく、覚悟が全てだ。
そして、その覚悟を持った男たちと、自分も戦える――。
迅は拳を握り、呟く。
「――俺は、ここで戦う。ここで生きる」
土方が一歩近づき、目を細める。
「よし、なら教えてやる。新撰組の戦い方を――生きる術をな」
迅は小さくうなずいた。
この瞬間、彼の異世界での人生が、動き始めたのだ。




