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異世界新撰組  作者: ゆたぽん


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15/18

「風変わりな弟分」



リセリアのことが気にかかりつつも――

まずは子どもを家まで送り届けた迅は、

気持ちを落ち着けようと王都の裏通りを抜けていた。


夜霧が薄く漂い、灯火が揺れる。


そのときだった。


「……痛っ、ぐっ……やめ、て……!」


路地の影から、

くぐもった声が聞こえた。


迅は身構える。

声の主は子どもではない。

だが、明らかに“弱者の声”だった。


(またかよ……今日は多いな)


裏路地へ踏み込むと、

そこでは――


小柄なゴブリンの青年が、

二人のチンピラに殴られていた。


「ゴブリンのくせに街歩いてんじゃねぇよ!」


「種族登録もしないで王都をうろつくとか、

何をしに来たのか吐けよ、コラ!」


ゴブリンの青年は震えながら首を振る。


「ぼ、僕は……ただ、ここに……

家族、もういないから……」


「言い訳すんな!!」


拳が振り上げられたその瞬間――

間に入る影があった。


「お前ら、よせよ」


ふっと軽い声。

だが、声音には揺るぎない圧がこもる。


チンピラたちは振り返った。


「んだテメェ……子どもか? ちょっとチビじゃねぇか」


迅は肩を竦める。


「俺も今日二回目なんだけどさ。

弱ぇやつ殴って楽しいのか?」


「誰に口きいて――」


その手が伸びた瞬間。

迅の足が一瞬だけ地を蹴り、

剣より速い“拳”がチンピラの手首を弾いた。


「いってぇ!? 骨折れた!?」


迅は冷めた目で言う。


「折ってねぇよ。

折るなら、そんな軽く打たねぇ」


もう一人が叫ぶ。


「ふざけんなぁ!」


刃物を抜くが――

迅は踏み込むと同時に地面を滑るように動き、

刃を躱しつつ相手の腹に拳をねじ込んだ。


「ぐえっ……!」


一瞬。

本当に一瞬で、二人が地面に沈んだ。


迅は頭を掻きながら呟く。


「……はぁ。

俺さ、弱ぇ奴いじめてる奴見るとイラつく体質なんだわ」


そう言いながら、ゴブリンの青年に手を差し出す。


「大丈夫か?」


ゴブリン青年はおそるおそる手を取った。


「た、助けてくれたん……ですか……?」


「そうだよ。

別にゴブリンだろうがなんだろうが関係ねぇだろ」


その言葉に、青年は唖然とした顔で固まり――

次の瞬間、その目に涙があふれる。


「……こんな……人間に、初めて……」


迅は気まずそうに目を逸らした。


「泣くなって。

泣かれると俺が悪いことしたみてぇになるからさ」


「ひ、ひっぐ……ごめんなさい……」


青年は涙を袖で拭いながら名乗る。


「僕……“ロッカ”って言います……

母さんと群れを失って……王都に来たけど……

人間に、ずっと追い払われて……」


迅は少し視線を下ろしてから言った。


「……俺もさ、

周りに馴染めなくて喧嘩ばっかしてた時期あった」


ロッカは驚いた顔で見上げた。


「でもよ。

生まれがどうとか、見た目がどうとかで決めつけられんの……

俺もムカつくんだよ」


ロッカの目がさらに丸くなる。


「あの……あの、迅さん……」


「ん?」


ロッカは突然、深く頭を下げた。


「僕……!

あなたみたいな人に……ずっと会いたかった……!」


「いや、そんな大層なもんじゃ――」


「ついて行きます!!」


迅は固まった。


「……は?」


ロッカは必死だ。


「僕、今日……命、助けてもらって……

だから、あなたがどこへ行くのか、何をするのか……

全部ついて行きたいんです!!

兄貴って呼んじゃ……ダメですか!?」


「兄貴!?」


王都の裏通りに響く声。


ロッカは瞳を輝かせている。


「兄貴みたいな人に……僕もなりたいんです!」


迅は唖然とするが――

ロッカの必死さに、思わず噴き出した。


「……ははっ。

なんだよその目。

そこまで言われたら……断れねぇだろ」


ロッカの顔がぱぁっと明るくなる。


「じゃ、じゃあ……!」


「勝手についてこいよ、ロッカ」


ロッカはその場で跳ねるほど喜んだ。


「はいっ! 兄貴!!」


迅は頭を抱えながら笑う。


(……また、面倒くさいの拾っちまったな)


しかしその笑顔は、

どこか温かかった。


夜風が二人の横を通り抜け、

遠くで新撰組の灯が揺れていた――。


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