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異世界新撰組  作者: ゆたぽん


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11/18

「光の特性と、もう一つの影」


訓練場の片隅で、

迅は倒れかけたリセリアをそっと地面に座らせた。


「魔力切れって感じじゃねぇな……」


リセリアはきゅっと膝を抱え、俯いている。


「す、すみません……

集中が切れたわけではなくて……その……」


赤くなった耳がぴくりと揺れる。

どう考えても“恥ずかしさで魔力が乱れた”としか思えなかったが、

迅はあえて触れない。


「リセリア。お前の魔法……なんか変だ」


その言葉に、リセリアの肩がびくりと動く。


「へ、変……ですか?」


「悪い意味じゃねぇよ。

結界の厚さが一定じゃない。

普通、こんだけ薄いと強度が落ちるはずなのに……

お前のは薄いのに“強い”。意味わかんねぇ」


リセリアは驚いたように瞳を見開く。


「そこまで……見えていたのですか?」


「いや……俺も説明できねぇんだけどよ。

なんか直感で変だって思って」


“本能で戦う剣士”と言われる迅ならではの感覚だ。


リセリアは数秒黙り込み、

やがて小さな声で尋ねた。


「……迅さん。“光魔法”の特性、

どこまで知っていますか?」


「光は攻撃より防御や支援が得意……くらいか?」


リセリアは首を振る。


「違います。

“光は、真実を映す”のです」


「真実……?」


リセリアは震える指先で、

自分の胸元の魔導刻印に触れた。


そして、小さく告白した。



「わたしの光魔法は……

“心の揺らぎ”に反応して勝手に形を変えます」


迅は眉をひそめる。


「つまり……?」


「嘘をつくと、魔法が弱くなる。

迷えば、光が濁る。

疑えば……結界が崩れる」


彼女の瞳は、

自分の弱点を告白する恥ずかしさで揺れていた。


「だから……

わたしは伊東先生を“疑えません”。

疑った瞬間、魔法が使えなくなってしまうから」


迅は息を呑んだ。


(……純粋だからじゃねぇ。

“魔法の特性”のせいで疑えないんだ)


伊東甲子太郎がそれを知っているなら――

利用しないはずがない。




リセリアは続ける。


「光魔法は“真実に最も近い魔法”です。

だから……王国は恐れるのです。

いつか“禁じられたもの”を照らしてしまうことを」


「禁じられたもの?」


リセリアは唇を噛む。


「……言えません。

でも、言えないのはわたしの意思ではありません」


その言い方はおかしかった。

まるで“何かに縛られている”ような。


迅は直感した。


(こいつ……何か“見ちゃいけねぇもの”を見てる)



そのとき――

風がひゅうと鳴り、

訓練場の外から視線を感じた。


迅が瞬時に振り向くと、

遠くの廊下で 長身の隊士がこちらを見ていた。


青い浅葱色の羽織。

新撰組の副長・土方歳三だ。


が――


(なんで土方さんが、こっちを“睨んで”んだ?)


明らかに、リセリアを見張っている目だ。


土方は迅と目が合うと、

無言で背を向けて去っていった。


リセリアは気づいていない。


(新撰組……リセリアを監視してんのか?

なんで?)





リセリアは立ち上がり、

制服についた埃を払った。


長い銀金髪がさらりと揺れ、

淡い蒼の瞳が迅を見つめる。


その瞳を見た瞬間、

迅はなぜか胸がざわついた。


(……誰かに似てる?

どこかで……こんな目を……)


喧嘩に明け暮れた現代では

感じたことのない、不思議な引っ掛かり。




リセリアはそっと手を合わせる。


「迅さん。

もし……わたしの魔法の本当の意味を知りたいなら……」


風に揺れる長い耳が、切なげに伏せられる。


「魔法庁の地下書庫……

“封印区画”にある禁書を読んでください」


「禁書……?」


リセリアは小さく頷いた。


「そこには、“光”について……

そして“エルフ”について、

誰も語らない事実が書かれています」


瞳に宿るのは、

恐怖とも期待ともつかない色。


「でも……絶対に一人では行かないでください」


その声は震えていた。


「なぜって聞いても?」


「答えられないのです……

“答えてはいけない魔法”がかけられているから」


その瞬間、

リセリアの胸元の刻印が微かに光った。


迅は確信した。


(こいつ……操られてる。

伊東か、魔法庁か……

どっちにしても厄介すぎる)


リセリアは恐る恐る言う。


「だから……迅さん。

わたしを助けてください」


その言葉は、

“恋”と“救い”の境界を曖昧に揺らしていた。

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