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異世界新撰組  作者: ゆたぽん


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10/18

「白百合のエルフ、森で微笑む」


王都の外れにある訓練場。

風が通り抜ける広い芝生は、

剣士と魔法士が共に使う数少ない場所だ。


迅は肩を回しながら、軽く息を吐いた。


(エルフと訓練なんて……俺の人生、どこで間違えたんだ)


そんな独り言を消すように、

軽い足音が背後から近づいた。


「迅さん、お待たせしました」


振り返った迅は、反射的に瞬きした。


リセリアだった。


真っ白な魔法庁の制服は、腰まで流れる

銀金色の髪と驚くほどよく似合っていた。

光に照らされた髪は、金糸にも銀の雫にも見える。


細身の体に沿って揺れるロングコートが風になびき、

そこから覗く 尖った耳 が陽に透けて淡く輝く。


まるで森の精霊がそのまま歩み寄ってくるようだった。


迅は少しだけどぎまぎする。


「……なんか、今日すげぇ綺麗だな」


「えっ!? あ、あの……」

言われた瞬間、リセリアの耳がぴん、と立った。


そして、ふにゃっと赤くなる。


(耳が赤くなるの反則だろ……)


慌てて視線を逸らしたリセリアは、

胸に手を当てて深呼吸するように整える。


「きょ、今日の訓練……よろしくお願いします」


その声は震えているのに、

瞳は真っ直ぐで、どこかすがるような光を帯びていた。


◆ 戦いの姿勢に入るリセリア


リセリアは訓練用の杖を構えた。

白い杖の先端から、淡い光の粒がふわりと散る。


「迅さんの動きは“読めない速さ”だと聞いています。

だから……わたしは“守る魔法”で挑みます」


蒼い瞳に決意が宿る。

優しい少女が一瞬だけ“戦士”の顔になる。


その表情は思わず息を呑むほど美しかった。


(こんな細い身体から……あんな目ができるのか)


すぐ横で、白百合が静かに戦いの準備を整えているようだった。


◆ 訓練開始――予想外の接近


迅は腰を落とし、構えた。


「じゃあ……行くぞ、リセリア」


「はいっ!」


その瞬間――

風と共に迅が一歩踏み込む。


リセリアは驚くほど冷静だった。

長い髪が宙に浮き、

光の結界がぱっと花開いたように展開する。


「《光盾ルミナ・ヴェール》!」


迅の拳が結界に触れた瞬間、

透明な薄膜が光の花びらを散らすように震えた。


「やっぱすげぇな、エルフの魔法……」


「い、いえっ……!

迅さんの動きが速すぎて、見失いそうなくらいで……!」


リセリアの耳がわずかに震える。

緊張している証拠だ。


結界越しに見える彼女の瞳は、

驚きと高揚でゆっくりと色を深めていく。


そして――


結界が急にしぼみ、光が弾けた。


「えっ――」


リセリアの身体がふらりと傾く。


「危なっ!」


迅は反射で腕を伸ばし、

倒れかけた彼女の腰を抱えた。


ふわりと、森の清水のような香りが鼻先をくすぐる。


リセリアは目を丸くしたまま、

耳を真っ赤にして固まった。


「~~っ!! あ、あの、すみません……!」


「いや、魔力切れか? 無理すんなよ」


「……迅さんが近くにいると、

ちょっと緊張してしまって……魔力の集中が……」


「え?」


「なんでもありませんっ!!!」


とっさに目をそらすリセリア。

髪がさらりと流れ、

光を受けて金と銀が混じる色がきらめいた。



◆ 迅の胸に芽生える、小さな違和感


倒れたリセリアを支えながら、

迅はふと胸がざわりと波打つのを感じた。


(……なんだこれ)


触れた瞬間に伝わる体温。

頬が近い。

髪の香りが鼻に残る。


喧嘩と荒事ばかりの日常では

決して感じなかった種類の緊張。


そして――

リセリアの蒼い瞳が、一瞬だけ揺れた。


その瞳の奥には、

“迅への憧れ”と“伊東への忠誠”が同時に燃え上がっているように見えた。


二つの火は、今はまだ小さい。


けれど、いつか必ず――

どちらかが彼女の運命を焼き尽くすだろう。


迅はまだ、その意味を知らない。


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