■ 第一話「時代を間違えた男」
夕暮れの路地に、風が渦を巻いた。
小柄な青年、藤堂迅は、また今日も誰かと揉めていた。
相手は見上げるほど大柄だが、迅の拳は躊躇なく狙いを捉える。
「ちっ、またやるのか…」
周囲の人々が道の端に避ける中、迅は小さな体を駆使して、あっという間に勝利した。
胸の奥にわだかまるのは、いつも同じ感情だ。
――俺は生まれる時代を間違えた。
強さを認めてくれる場所は、ここにはない。
家に帰ると、温かい灯りの下で母が微笑んでいた。
「迅、今日も大丈夫だった?」
「……ああ」
母の笑顔は心を落ち着かせるが、どこか虚しさも残る。
父は新聞を広げ、テレビから流れるニュースを横目に微笑む。
夫婦仲の良さを見て、迅は小さな孤独を感じた。
「守りたい相手と、ちゃんと支え合える世界…」
その夜、空は異様な光に包まれた。
突然、目の前の部屋が眩い光で揺れ、迅の体は宙に浮く。
「な、なに……?」
抵抗する間もなく、意識は闇に飲まれ、次に気づいた時には、異世界の戦場に立っていた。
目の前には、巨大な魔法を使う兵士たち。
地面は火と魔力の残滓で焦げ、悲鳴が渦を巻く。
混乱する迅の耳に、鋭い声が届く。
「そこだ!」
振り返ると、見覚えある装束を身にまとった剣士が立っていた。
小柄だが背筋の伸びた青年――いや、男たち。
「こいつら……新撰組?!」
一瞬で察した。幕末のあの隊士たちが、異世界にいる。
土方歳三の鋭い眼光が、迅を射抜いた。
「お前、目の奥が戦場を求めているな」
土方の声は低く、確信に満ちていた。
「だが戦を知らぬ。未熟者だ」
瞬間、迅の心は震えた。
現代で満たされなかった、あの渇望――
戦い、守り、誇りを持つ世界――
全てが目の前にあったのだ。
「――そうか。俺は、ここに来るために生まれたのかもしれない」
拳を握り締める。
小柄でも、喧嘩屋でも、戦う覚悟はできている。
そして、命を懸ける覚悟を持った男たちと、共に戦う未来が、今始まったのだ。




