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最終話 出星



 東京からほど近い宇宙船港。シェリルがはじめて地球に降り立った場所だ。あのときぶりに来たが、やっぱり少し時代遅れなモニターからは堅苦しい格好のキャスターが堅苦しくニュースを読んでいる映像が流れている。


 

 今日、バルバドス宇宙海賊団は地球を離れる。


 目標であったドルネンファミリーのボス、ドン・ドルネンはあの巨大人型戦闘機のどさくさで取り逃がしてしまった。

 ファミリー幹部であるリタ・ウォンカと星間指名手配の武器密造人ギエン・バーツは捕らえることができたので、ファミリーの力は大きく削れたはずだ。

 捕らえた二人は日本宇宙軍が取り調べを行っており、わかったことがあれば逐次こちらに共有することになっている。


  

 それから、今回の件でレンジャー部隊は解体された。

 

 けれど新しい組織が日本宇宙軍の外部組織によってすでに立ち上げられ、機能を始めている。組織名とレンジャーたちの強化スーツの見た目に多少の変更はあるものの、五色のパワースーツという点は同じだし、組織の本部ビルも今はそのまま使っている。


 要は、組織の乗っ取りだ。

 今までドルネンファミリーの配下にあったとはいえ、民間人からは治安維持部隊として認知されている。組織を一から作り、信用を得るためには長い時間が必要だ。知名度の高い旧組織を利用しない手はない。


 組織の上層部がどんな人間かなんて、民間人はたいして気にはしていない。

 マフィアも軍も、民間企業のふりをして運営するものだから知る由もないだろうし、そんなものは知らなくたって生きていける。自分たちのことを守ってくれさえすれば、何だっていいのだから。

 あの日、組織本部で戦闘があった時に、民間人の救護に当たった五人のレンジャーたち。五人中四人の中身は別人だったが、そんなものは民間人には関係がない。それと同じだ。


 旧本部の職員でドルネンファミリーと無関係に働いていた者は引き続き採用しているし、システムも機材もそのまま使用している。

 表向きは何も変わっていない。

 そう見せかけるために、シェリルたちはなるべくコンパクトに襲撃作戦を実行した。それが日本宇宙軍との契約だった。


 途中、巨大人型戦闘機の暴走という隠しきれないほど大きなハプニングはあったが、それは事故ということで処理されている。

 レンジャー部隊があんな危険なものを秘密裏に製造していたなんてと糾弾もされたようだが、その足元で身の危険を顧みずに民間人の救護をしたのもまたレンジャー部隊だ。それもあって、報道の鎮火は案外早く終わった。


 今では、五人ともまったくの別人が強化スーツを着て地域の安全を守っている。

 まぁ、治安維持部隊などそんなものだろう。




 

 シェリルはロビーのベンチでターミナルを眺めながら出星の順番を待っている。

 ドルネンファミリーに回収されていたシェリルの小型宇宙船は無事に戻されている。これで、入星した時と同様にきちんと手続きを踏んでこの星を去れる。もちろん偽名だが、クリーンな経歴の偽名は持っているに越したことはないのだ。なにせ海賊なので。


 これで地球を出星して、途中で本船に合流する。

 そしてバルバドス宇宙海賊団が拠点にしている星に帰ることになる。

 

 シェリルにとっては第二の故郷といえる場所。

 海賊船だってそうだが、やはり居城の自室の広いベッドで眠りたい。広いバスダブにゆっくりと浸かってのんびりして、街のお気に入りの店でご飯をたべる。居城で働くみんなにお土産を渡すのも忘れない。


 それから、今回地球で買ったたくさんのものをぜんぶ並べて眺めるのだ。

 服、バッグ、靴、アクセサリー、宝石、化粧品、日用品、その他もろもろはすべてシェリルの戦利品。

 

 それから、地球から持ち帰るのがもうひとつ。


「シェリー」

「もういいの?」

「そろそろ時間だろう?」

 

 今回の一等品。地球での一番の獲得物は、隼斗だ。

 

 杢田との会話を終えて、こちらに歩いてきた隼斗の手には小さなバッグのみ。シェリルもそうだが、大きな荷物はすでに本船に運び込んでいる。


「お嬢さん、世話になった。ありがとう」

「こちらこそ。ミスタと出会ったからスムーズに事が進んだ。バルバドス宇宙海賊団を代表して礼を言う」

「それから、弟子をよろしく」

「もちろん」


 隼斗は正式にバルバドス宇宙海賊団の一員となった。

 今回の働きと実力が認められ、船長にも気に入られているとなれば当然だろう。


 それでも、隼斗は最初は渋っていた。

 知らなかったとはいえ、人身売買その他違法行為に関わっていた自分が云々と。それを説得したのは海賊団で隼斗と仲良くなった戦闘員たちと、隼斗を欲しがっている各部門。そこに幹部連中も面白がって参加していた。

 曰く、「一回や二回の違法行為なんて、海賊にいたら気にしなくなる」とか。それは説得方法として間違っていると思うが、今まさに偽名で出星手続きをしたシェリルに何も言えることは何もない。

 杢田も同様に、隼斗に海賊団に入るように勧めていた一人だ。広い世界を見て来なさい、と。


 最終的にはシェリルが引っ立てた。

 シェリルは途中から、なんとしてでも隼斗を連れて帰るつもりでいたから。海賊がほしいと思ったものを諦めると思っているのか。その身一つで連れ去られたくなかったら期日までに荷物を纏めておきなさい。そう伝えたら隼斗は笑っていた。


「先生。本当にお世話になりました」

「ああ、私も楽しかったよ。元気でやりなさい」


 隼斗は杢田と最後に握手を交わして、それから、ロビーの端に立って最後までこちらに近づくことはなかった四人に向かって手をふった。




 小型宇宙船に乗り込む。

 起動。システム、動力問題なし。管制官の指示にあわせ、機体を浮かび上がらせる。

 ここからしばらくは、二人きりで星間ドライブだ。急ぐ必要はない。


 地球に別れを告げて、二人は宇宙へと飛び立った。







□□□□□


これにて終幕。

地球では次のヒーローたちの活躍が始まったようです。



ここまでお付き合いいただきありがとうございました。


お楽しみいただけましたら、☆☆☆☆☆を押して頂けると励みになります。


あと3話くらい、本編に入れられなかったお話がありますので、明日からそれらをアップして終了となります。

そっちは基本コメディテイストですが、ご興味ありましたらぜひ。



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