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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

深夜昂り募る抑えきれない貴方への激情

作者: よくヘラ

「……っ……っぁ……ん……っ……はぁ……はぁぁ……あーあ……」

 家族全員が寝静まる夜中。私は私の部屋の私のベッドの上で私一人で私自身を慰めていた。

 達すると同時に私に芽生えるのは罪悪感。それと同時に、背徳感。それらが入り混じった、歪な快感。

「……ここのところ毎日だなぁ」

 自分の人差し指と中指の間を繋ぐ粘液を見つめながら、私はポツリと呟いた。

 じっと見つめる。私の愛の結晶、淫らな感情、抱く愛情、携える劣情。

 しばらく見つめた後、私は何となくそれを舐めてみた。美味しくないし、若干生臭いし、それがわかっていて舐めたのに、するとわかっていたのに、私はあえて舐め終えてから自身のその行為に後悔した。

 ため息をつきながら。私は近くにあるティッシュを手に取り、濡れた箇所、汚れた箇所、使った箇所を拭う。

 この後始末さえ無ければ、いつでもいくらでも出来るのになぁ。と、私は小さくため息をついた。

「……まだ起きてるかな。お姉ちゃん」

 拭き取りながら私は呟く。今日のおかずを、私の愛する人を、好き勝手に乱したい人を。

「……あ、やだ。まだ出来るじゃん私……あは……凄くね?」

 お姉ちゃんのことを考えて、溢れ出した液体の感覚を全身で感じながら。私は思わず苦笑いをしながら呟く。

 私はお姉ちゃんのことが好きだ。大好きだ。この世で一番、たとえあの世にいたとしても一番、天地がひっくり返っても、世界が滅んでも、何かしらの罪を背負おうとも。私はお姉ちゃんのことが大好きだ。

 理由なんて知らない。どうして好きになったのかなんてわからない。私は、小説や漫画に出てくるような、やけに細かく丁寧に抱く感情、気持ちが言語化された作り物の人間ではない。

 好きだから、好きになったから、そうなる運命だったから。私はお姉ちゃんが好き。ただ、それだけの単純な理由で私は、毎日毎日少しずつ狂っていく。

 好きと言う感情。抱く恋愛感情。とても甘くて、苦くて、素敵で、気持ち悪くて、臭くて、どうしようもない。人間が抱えてしまうこの感情は、どうしてこんなにも悍ましく美しく辛く儚く素敵なのだろうか。

 私はお姉ちゃんが好きだ、好きすぎる。毎日毎日毎日毎日彼女のことを思って、想って。叶わない夢を望んで、見続けて。甘美でビターな理想的空想空間に耽っている。

「……好き……好きだよ……お姉ちゃん好き……好き……好きぃ……好き……」

 全身から発せられる抑えられない感情。私を無意識に動かす激情。意識せずとも口から出てしまう彼女への気持ち。たった二文字の短くも重い単語。

 この気持ちを、この言葉を。彼女に伝えられたら私は、彼女に受け入れられたら私は、どうなってしまうのだろうか。

 今の私は、自分で自分を慰め自分を抑え自分を取り戻し自分を戒め自分を語り自分を苦しめ自分を楽にさせ自分を痛めつけ自分を悦に浸らせ自分だけで簡潔に完結している。だから私はまだ、お姉ちゃんの妹でいられている。

 どうしても変えたい現状。されど保ちたい心情。そんなんだから私は、毎日毎日少しずつ狂っていってるのだ。

 自分の心を犯すのは歪な感情。正反対の欲がぐちゃぐちゃに混ざり、存外綺麗に形作られ、されど本質はぐちゃぐちゃだから、私を徐々に壊していく。

「お姉ちゃん……好き……好き……好き好き……好き好き好き……♡」

 私は洗濯機から盗み取ってきたお姉ちゃんの下着を握りしめ、それに鼻を押し付け、彼女の匂いを必死に嗅ぎ取る。

 間接的だけれど淫靡な香り。確かに彼女のアソコが触れていたのだとわかる濃い残り香。今日はオリモノシートを付けていなかったのか、普段よりも芳しい。

 お姉ちゃんは当然として、私のこの行為と気持ちは誰にも理解されないんだろうな。と、時折寂しく淋しく感じる。好きだから、好きだからこそつい、してしまうこの行為。純真純白な動機から行われているというのに、側から見たら狂気の沙汰でしかないのは何故だろうか。

 自分で言うのもなんだが、私は一途だ、とても一途だ。子供の頃──今もまだ子供だけど──から私はずっとお姉ちゃんが好きだと言う事実がそれを示している。

 人は誰しも愛を求めている。どんなにカッコつけたって、逆張りしたって、嘘をついたって。根本的に人は人との繋がりを求めてしまう。

 自分を愛して。自分を愛して。自分だけを愛して。みんな隠しているか気づいていないだけで、自分だけを見てくれる都合の良い己に向けられる愛情を求めている。

 私だってそうだ。お姉ちゃんが好きだから、お姉ちゃんが大好きだから、私はお姉ちゃんを愛するし、お姉ちゃんに愛されたい。お姉ちゃんしか愛さないし、お姉ちゃんにしか愛されたくない。

 そう。例えそれが私の望む感情でなくとも、上辺だけでも私はお姉ちゃんに愛されたい。

 だから私は普段から言っている。周りに誤解されないように、誰にもバレないように、お姉ちゃんに気づかれないように。彼女に好きだよ大好きだよと、毎日真っ直ぐと目を見て言っている。

 私の隠蔽告白に対して返すお姉ちゃんの返事はいつもこう。「私も好きだよ」

 それを聞くだけで私は満足できる。お姉ちゃんはちゃんと、ちゃーんと、私のことを妹として好きなんだって実感できるから。

「……けどまぁ……そんなんで満たされるわけないし……足りないし……本当は不満が溜まるだけなんだけどね……」

 私はため息混じりにそう呟く。心の中で思っているだけだと、辛い感情が徐々に募って心を壊してしまうから、時折こうして一人で呟く。

 でも、だけど。本当はこんな事はしない方がいい。自分の心を守るために欲を声に出して発するなんて、絶対にしない方がいい。

 だって。だってだってだってだって──

「……犯したい……お姉ちゃん犯したいよ……」

──自分の気持ちをハッキリと理解して実感して、止まらなくなるから。

「舐めたい……ペロペロっと脇を……お腹を……当然秘部を……!」

 止まらない。

「抱き合いたい……お姉ちゃんの綺麗でスベスベな肌に私のガサガサな肌をくっつけて摩りたい……!」

 止まらない。

「髪食べたい……絶対美味しいし甘い味する……食べたいっていうか啜りたい……ずぞぞーって……蕎麦みたいに……スパゲッティみたいに……感触を舌で全力で味わいたい……うぅ……食べたいよぉ……!」

──ダメだ。もう襲おう、犯そう。

 私は掛け布団を蹴り上げ、それと同時に立ち上がり、パンツをしっかりと履いて、ベッドから飛び降りる。

 急ぎつつも足音立てず。私は部屋から飛び出て真っ直ぐにお姉ちゃんの部屋へと向かう。

 普段はする三回のノック。今回はそれを省略して、勢いよく扉を開けた。

「……!? ふぇ……美優……!? な、なんで……!?」

「……お姉ちゃんっ」

 私は、固唾を飲んでお姉ちゃんの名を呼んだ。

 部屋の扉を開けた時、お姉ちゃんは意外にも起きていた。常夜灯を付けて、ズボンに右手を突っ込んで、顔を真っ赤にして、額に汗水垂らして、目を見開きながら私を見ている。

(……エッチだ)

 お姉ちゃんはしていた、お姉ちゃんもしていた。

 左手に持つスマホの画面に写っているのは、いつと撮ったのかわからない私の裸の写真。背景が洗面所だから、きっとお風呂に入る前後、私が着替えている時に盗撮したのだろう。

(……あはは……何だお姉ちゃんも好きなんじゃん……私のこと好きなんじゃん……)

「あのね美優! これは違うの……違うの!」

 お姉ちゃんは急いでスマホを隠し、急いでズボンから手を抜き、掛け布団で全身を隠しながら釈明をし始める。

 私はそんなお姉ちゃんが可愛くて、愛おしくて。だけどどこか呆れて、ガッカリして。そのまま一歩足を踏み出し、ぴょんっと彼女のベットの上に飛び乗る。

「美優……!?」

 お姉ちゃんが驚くように私の名前を叫ぶ。それを聞いた瞬間、私の脳の何かがプチッと切れて、気づいた時には私は、お姉ちゃんの被る掛け布団を勢いよく引っ張り、それをベッドから放り投げた。

 すると現れたのはお姉ちゃん。顔を真っ赤にしながら、目尻にほんの少し涙を浮かべながら、今にも泣き叫びそうに口をプルプルと震えさせながら、私を子犬のような目で見つめている。

「ねぇお姉ちゃん……私でしてたよね? あはは……やっば……」

「ち……違うの……これはね……これはね……!」

「まあ落ち着いてよお姉ちゃん……ほら、見てこれ」

 と。私はお姉ちゃんを宥めるように優しく声色を作りながら、ポケットの中をゴソゴソと探り、そこに入っているお姉ちゃんのパンツを取り出し、彼女に見せつけた。

「……へ? 何それ……私の……下着……? 何で……何で!?」

「……あは。答えないくせに質問するんだ、お姉ちゃん」

 私は手に持っているお姉ちゃんのパンツを広げ、クロッチ部分を一度お姉ちゃんに見せてから、そこをペロリと、彼女に見せつけようにして舐めた。

「……な、何してるの美優……汚いよ……?」

「何ってわかってるくせに……誤魔化そうとしないでよお姉ちゃん。私は今見せたじゃん、今ので察せられるように大胆に見せたじゃん」

 一度唇をペロリと舐めてから、私はお姉ちゃんに向け、持っていた彼女の下着を彼女に向け投げつける。

 それと同時に一瞬で彼女の元へと距離を詰め、普段よりも近くで、お姉ちゃんの目の前まで顔を持ってきて、私は囁く。

「お姉ちゃん……好きだよ……」

 そのまま私は両手でそっと彼女の挟み、じっと目を見つめる。

 お姉ちゃんは必死に顔を動かし、目をキョロキョロと動かして私から逃れようと、視線を逸らそうと試みる。だけどそんなのは無駄。私がちゃんと固定して、私しか見えないようにしてるから。

 お姉ちゃんもそれをわかっているからなのか。抵抗する割にその力が弱い。

「美優……駄目……私たち姉妹なんだよ……お父さんとお母さんに知られたら……それに……私たち姉妹だし……姉妹だよ……血の繋がった姉妹なの……だから駄目なの……だから……私は……だから……」

「いいじゃん……バレなきゃいいじゃん……言っておくけど私、もう我慢できないから。こんなに都合のいい自分の想像する妄想通りの現実に抗えるほど私、いい子じゃないし強い子でもないから……」

「……駄目ッ!」

 私が唇を近づけ、お姉ちゃんにキスをしようとすると、突然彼女は両手を動かし、私の顔を押し除けようとした。

 けれどやっぱりその力も弱くて、必要最低限の力しか出せていなくて。本当は抗う気なんてないのが察せられる。

 きっとお姉ちゃんは今、誰かが定義した正しい普通という名の理性に従おうとしているんだ。自分の気持ちが世間的にはおかしいとわかっているからそれに抗って、嘘をついて、私と正しい関係のまま居ようとしているんだ。

 けれどそれって本当に正しい関係なのかな。どちから一方が一方的に片思いしているならば、思いを寄せているならば、それを保とうとするのは理解できる。

 けれど私たちは両思いなのだから。だったらするべき事は、愛し合っている気持ちを隠すのではなく、愛し合っている事実を世間から隠す事なのでは?

「駄目なんだってば……だって……だってぇ……!」

 お姉ちゃんが泣きながら、私の肩を強く掴み、全身を弱々しく震えさせている。

 私はそんなお姉ちゃんの頬から手を離し、代わりに彼女を優しく抱きしめ、耳元でこう囁く。

「……大丈夫。私、隠すの上手だから」

 そう言って私は、お姉ちゃんをゆっくりと押し倒した。

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