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ぷるぷるの昇降係  作者: 舟津湊


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皐月の食卓(いちごの知らせ)

 最近変わったことが起きている。


 冷蔵庫にイチゴのパックがいつも五、六箱備えられているのだ。

 品種は、とちおとめ、スカイベリー、とちあいか、と栃木県産のものが多い。

「そうね、いろいろ食べてみたけど、今はこの三種類が好みかな?」

 スミレはそう言って、洗ったイチゴを小皿に載せてテーブルに置いてくれた。そこそこの量のイチゴが冷蔵庫に常備されているにも関わらず、僕がこうやって食後のデザートとして食べる機会は、実はそんなに多くない。

どうしてか?考えられる答えは一つだけ。

 スミレがほとんど食べてしまっているのだ。「スミレって、そんなにイチゴ、好きだっけ?」

「うん、昔から好きだったけど、最近は食欲がない時でもおいしく食べられるから」

 冷蔵庫のイチゴのパックの減り具合と増え具合から推察するに、スミレは一日に二、三パックは食べているのではないか?

「食欲がない時って、結構あるの?」

「……うん、最近増えたかも」

 そういえば食事の際、スミレの食器に盛られる食べ物の量が少ないような気がする。この会話のやりとりで、結婚披露パーティーの時に姉が両親に話していたことを思い出した。姉には二歳の男の子、レン君がいて、パーティーの時は、その子を旦那さんに任せて出席していた。

「いやー、レンがお腹の中にいる時、つわりがひどくてさー、何にも食べられないんだけど、これならいくらでも食べられちゃうのよね。ほんと助かったわ」

 姉はビュッフェスタイルのサラダコーナーからプチトマトを小皿に盛り、パクパク食べながら、自分の出産体験記を披露していた。当時、冷蔵庫の中はプチトマトのパックがいっぱいだったそうだ。

「ヨウ、だからスミレさんの変化も見逃さないんだよ」


 僕は、スミレに切り出す。

「あのさ、明日、病院に行って診てもらわない?」

「診てもらうって……陽君もそう思うの?」

 結婚してから僕の呼び方は、『高野君』から『陽君』に変わった。少し照れる。

 実質、僕の方が年上になったが、スミレにとっては今でも年下ガキなのかもしれない。「なんだ、スミレも気づいていたのか」

「うん。多分そうかもって。そろそろお医者さんに行ってみようかなって思っていたの」


 翌日の午前、僕は半休をとり、ミニにスミレを乗せ、産婦人科に連れていった。スミレが休みをいただく連絡を大野店長にメッセージで送ると、お勧めの病院をいくつか教えてくれたそうだ。さすが察しがいい。

 なるべく揺れの少ないよう、僕は慎重に運転した。


「おめでとうございます。妊娠六週目ですね。そして……胎嚢、つまり赤ちゃんが入っている部屋が……二つあります」

「二つ、ということは……」

「はい、双子ちゃんですね」

 診察してくれた女医さんがにこやかに説明してくれた。僕とスミレは顔を見合わせる。「ご安心くださいな。うち(当医院)では、双子の赤ちゃんの出産は、しょっちゅう手がけていますから」

今後の手続きや定期検診の説明を受け、病院を後にした。

 帰りの車の運転は、いやでも慎重になる。

「なんか、免許取り立ての人の運転みたい」

 スミレがからかう。


 家に着くと、早速スミレが大きめの皿にイチゴを並べた。

「これからヘアサロンの仕事、どうするの?」

「そうね、立ち仕事だし、お医者さんと大野店長と相談しながらかな……でも、なるべく働いていたい」

「まあ、無理しないで……あ、ゴメン、忘れてた。……おめでとう」

「ふふふ。ありがとう。でもあなたの子供たちよ」

僕はイチゴを五、六個つまみ、残りはスミレに譲って、仕事に向かった。

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