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7 二人の魔女


 終業チャイムが鳴り響く。寝不足ながらも一日の授業を完走した薬師寺えいるは、がやがやと騒がしい教室の騒音も気にせず、疲れ果てた様相で自身の席に突っ伏していた。

 ほんの一瞬クラスの話題になった爆発事故や遊園地の臨時休業などの悲しいニュースはすぐに流れ去り、新作コスメや月頭の連休にどこへ遊びに行くかなどという話題で持ちきりだった。

「えいる、今日サキとコハル誘ってスイパラ行くんだけど、一緒にどう?」

「え、行きたい……!あ、でも待って、ごめん!今日ダメな日だった!」

「あらあら~やっぱりアツアツですなぁ~」

「もう!からかわないでよ!」

「いいじゃん、照れるえいるも可愛いぞ」

「か、かわっ――!」

 ダル絡みしてきたクラスメイトたちとのやり取り。真っ赤になって照れるえいるを見て、クラスメイトはキャッキャと笑った。

 この一ヶ月、本当にいろいろあったとえいるは自負している。目まぐるしく過ぎ去った日々は、だらだらと過ごしていた一学期の頃と比べて遥かに忙しかった。

 とはいえ、ダラダラ過ごすのも好きなので今週末は家でゆっくりしようかな~、なんて考えていると、メッセージで飛んできた予定でまたごろごろする休日が消滅することにえいるはなんとも言えないため息を付いた。

 無意識に弾むステップで、吹き抜けの螺旋階段を駆け下りる。時間を持て余していた今までと違い、忙しくはあるが、えいるは充実を感じていた。

 学園のエントランスに立っていたのは、半日ぶりの再会を果たすこととなる少年だった。

「おまたせ」

「おう」

 何気ない会話をしながら駅まで歩く。『夜間の道路工事中に発生したガス管の爆発事故』の影響で駅までの道のりに迂回を余儀なくされた「普通の高校生たち」は、昨晩の、そして今までの出来事に思いを馳せながら、互いに前を向こうと決めていた。

「じゃあ俺、こっちだから。週末はよろしく頼む」

「うん、楽しみにしてる」

 改札を通過する少年を見送ったえいるは、駅を出てすぐに目に付く建物――ロープウェイ乗り場に足を運び、異邦からの観光客や午後を満喫する老夫婦たちの中にまぎれてそのチケットを購入し、一人、ロープウェイに乗り込んだ。

 ロープウェイのドアが閉まる。座席に腰掛けたタイミングを見計らったかのようにかかってくる着信画面を見たえいるは思わず心臓を加速させた。

『もしもし、えいるちゃん?』

「う、うそうそうそ!?」

『びっくりしたでしょ!ごめんね、心配かけて。あたし、嘘は得意だからさ!』

「え、え、え、えええ~~~!!」

 えいるは一人、衝撃の事実にゴンドラの中で叫んでいた。

 ロープウェイもまもなく到着だ。しかし、えいるが見据えていたのはまもなく到着する乗降場ではなく、破損した大観覧車の方だった。

「今から行くよ、ラミア」

 えいるがそう呟くと、ロープウェイのケーブルは虚空へ溶けてゆく。

 いつも通り気がつけば小屋の中のチェアに座っているので、もう慣れたように感じられた。

「いらっしゃい、えいる」

「こんにちは、ラミア、レードル」

 注がれた紅茶を一杯すすると、えいるは声にならない喜びの声を上げた。

「あのね、ラミア。今日はね、学校でこんなことがあって――」

 眼前の魔女は目を細めて微笑み、えいるの土産話を楽しそうに聞いていた。


 薬師寺えいる、高校一年生。高校デビューには時間がかかったけど、なんとかそれなりに馴染めるようになりました。そして実は魔女の友達が居ます。あと、実は私も、魔女だったりします。あと、あとあと!

人生初!男の子に告白されました!



 おしまい



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