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7 黒
ぼくは空ろだ。
一つなのか無数なのか、大きいのか小さいのか、どこにあるのかすら判明ができないが、身体に穴が開いていることだけはわかっていて、そこから常に風が吹き荒れて全身を、心を凍らせていた。
どうしてこんな身体で生まれ落ちてしまったのか。
この世を恨めしく呪う日々が続いたが、そこから免れる瞬間があることはどうしてか、生まれながらに知っていた。
一年に一回、現世に訪れることができる日。
かぼちゃの味を吸い取り形骸を作った時だけ。
風は止み、僅かな温もりを感じることができるのだ。
吸味は最初、順調に進んでいた。
もしかしてこのまま穴が塞がるのではと希望を抱くくらいに。
順調だったのだ。
やつらが、
死神が出現するまでは。
ぼくの吸味を邪魔するまでは。
ぼくは、
ぼくの吸味を邪魔する死神が憎い。
ぼくが唯一生を感じられる瞬間を。
ぼくが唯一安堵できる瞬間を。
「奪ってくれるなよ。死神」
「私は私の任務を全うするだけだ。吸血鬼」
(2022.10.20)