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お守りの中身を知る少年

作者: タカヒロ

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俺は神様が見える。小さい頃から神社に行くたびにそこにまつられている神様が見える。神様はあぐらをかいていたり、正座をしていたり、参拝者をじっと見つめてたり、寝ていたりと様々だ。


歳もおじいさんやおばあさんばかりではなく、若いイケメン神やスレンダーなモデル神もいる。そして俺が最近推している神様、いわゆる推し神は隣町の御坂神社のアイドル系神様御坂大御神だ。




今日も電車で御坂神社まで来てしまった。もちろんミサカちゃんに会うためだ。そして会う前に必ずお守りを買わなければならない。家には既に300個以上のお守りがある。お守り一つ500円だからそれだけで150000円以上つぎ込んでいることになる。


しかし、これは俺のミサカちゃんに対する愛の大きさだ。俺はミサカちゃんのためだったら何でもするし、出費も惜しまない。



200段ほどある石段を登り、小さな鳥居とお堂が見えて来た。今までたくさんこの神社に来たことがあるが、人が溢れかえったところを見たことがない。来るのはだいたい老人である。


鳥居の前で手を合わせ鳥居の中へ入る。ポケットから財布を出して500円玉を取り出す。この神社では500円以上の賽銭がなければ神様と喋ることもできない。アイドルでいう握手券のようなものなのだろうか。


決して安くはない握手券を投げ入れて目を瞑る。するといつものように頭の中にフリフリの衣装のミサカちゃんが出てくる。俺はミサカちゃんに久しぶりと声をかけた。するとミサカちゃんは満面の笑みをこちらへ向けた。


「あ、神宮寺くんだ。最近全然来なかったから心配してたんだよ。」


「ごめん。お小遣い使い切っちゃったから来れなかったんだ」


うちのお小遣いは月に3000円。だから数回来ればすぐになくなってしまう。


「私のためにお守りを買ってくれるのはありがたいけど、神宮寺くんと会えないのは嫌だな。」


ミサカちゃんは申し訳なさそうな顔をしてこちらを見てくる。そんな顔をされると来れないとは言いにくくなる。俺はこの神様のファンなのかもしれない。


「ミサカちゃん。俺君のファンなのかもしれない。だから俺君を応援し続けるよ。」


「ありがとう。神宮寺くん。君のおかげで私は神様を続けられているんだよ。本当に感謝しています。」


俺は本当に素晴らしい神様だと思った。ファンを大事にして感謝の気持ちも伝えられるアイドルの鏡のような神様だ。


「それじゃあ今日は失礼するよ。また来るよ絶対。」


「うん。またね。」



それからしばらくは俺は御坂神社へ行くことはなかった。学校や友達付き合い、資金不足などで神社へ行けなかったのである。


俺は数週間ぶりにミサカちゃんに会いに行った。いつものようにお守りを買って石段を登る。登り終わる前に俺はいつもとは違った風景に驚いて身を隠した。


顔を恐る恐る出すとそこにはミサカちゃんと喋っている同い年くらいの男性がいた。お世辞にもカッコいいとは言えない男だったが、男の両手には紙袋があり、その中にはお守りが溢れるほど入っていた。そして耳をすませるとミサカちゃんがその男とニヤニヤしながら言う。


「本当に頼れるのは西条君しかいないの。だからまた絶対来てね。」


「でもいいの?あのずっと来てた神宮寺くんは?」


「あ、あの男ね。あいつはもう用済みだよ。最近来ないし、お守りも全然買わないし。本当に愛してるのは西条君。あなただけなの。」


ミサカは上目遣いをして西条を見つめる。俺にしたように。俺は今までしてきたことを思い出してこの神に騙されていたことにようやく気づいた。この神は金があればいいんだ。俺のことなんてどうでもいい金づるにしか思っていないのだろう。



俺は家にあるお守りを全て燃やし、隣の隣町の神社へ厄祓いに行った。もう推しの神には懲り懲りだ。あの疫病神を祓ってくれと俺はその神社の神様のおじいさんに頼んだ。


じいさんは500円からと値段を設定して最高の祓いで3000円と言った。いかにも胡散臭かったが、俺は1番高い3000円のコースを申し込んだ。


儀式は始まり、5分ほどで終わった。そして儀式の後のケアとして施術士を呼んだ。そこで俺は運命の出会いをする。俺の好みの顔でスタイルも良く、おまけにいい匂いもする。じいさんにこの娘は誰かと聞くと、見習いの神様だという。


俺はなんて喋ればいいのかわからなかったのでじっとしていた。すると彼女の方から口を開いてくれた。

「あなたには女性に関する悪い霊がついています。その呪いからあなたを守りましょう。」


「是非。」


「じゃあ週に3回ほど通ってください。施術をしますから。」 


「はい。わかりました!」


「ではまたのお越しを。」






「じいさま。あの男本当にチョロいですね。」


「そうだな。同じことを繰り返すのは人間の悪い癖だ。愚かな若者よ。」


「愚かだと思っているのにやめられないんですね。」


「そうだな。これだから人間はおいしんいんだ。」


じいさんはニヤリと笑った。

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