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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

青頭巾くん

作者: ビーメン

※ 汚い言葉遣いや残酷な表現があります。

 昔々あるところに、山のふもとに木こりの父ジョンと力持ちで寡黙な18歳の兄ダンテと、ズル賢く口の悪い15歳の弟トミーの3人家族が住んでおりました。

 「よぉトミー、今日はお前に一つやってほしいことがあるんだ。」

 父は下の息子に朝食を食べながら、陽気に話しかけました。

 「なんだい父さん、パンツの替えならタンスに入ってるぜ?」

 トミーも同じように陽気に答えます。

 「まぁ聞きな。実は山小屋を営んでる爺さんから、虫歯が痛むから薬を持ってこいと連絡が入ってな。あいにく歯医者は明日まで休み、俺は薪割りでお前の兄ダンテは水汲みに行かなきゃならない。ここまで言えば分かるだろう?」

 父親はコーヒーを飲みながら、しかし視線はトミーを射抜くような目で見ながら話します。

 「クソッ、こんな陽気な日はお庭のベンチで猟犬とひなたぼっこでもしていたい気分なんだぜ?」

 トミーは反論しました。

 「そう言うな、分かってると思うがあのじいさんは断ってもなかなか帰らないセールスマンのようにしつこいんだ。もしお前が行かないと、歯の痛みに発狂し最終的に斧を持ってけしかけてくるだろう。この家が血の池地獄になる前にさっさと行くことだ、頼んだよ。」

 そういうと父親は薪割りの準備に、兄は水汲みに向かって行ってしまいました。

 「クソったれ!だが行かなかったら、父の手によって俺の頭が今夜の薪代わりに暖炉にくべられることになるだろう…ちくしょう。お気に入りのコイツも持って、と…。」

 反抗期のトミーは少しのことで癇癪を起こすおじいさんが大嫌いでした。おじいさんは乱暴者で、いわゆる口より手が先に出るタイプだったのですから。一人ぶつぶつと悪態をつきながら、着替えて薬箱から歯痛の薬を取って仕度を済ませました。

 とても晴れた日ですから、日よけにと青い頭巾を頭に巻いてさぁ出発です。


 トミーは山登りが好きでした。それに今日は爽やかな青空が広がるとても良い天気です。木々の葉の隙間から零れる木漏れ日が美しく、それを眺めながら小鳥のさえずりを聞いていると憂鬱な気分など忘れ楽しくなってきました。歩いて汗ばんだ体に吹く優しい風も気持ちの良いものでした。

 山の動植物や昆虫を観察しながら、少し開けた川沿いに腰を下ろしお昼休憩にしました。水筒の水もサンドイッチも、山の美しい景色や青空とのコントラストを楽しみながらだと格別においしく思えるものです。

 ガサガサ…ふいに後ろで音がし、ビックリしてトミーが振り返るとそこにはオオカミがいました。しかも普通のオオカミよりも大きいのです。

 「オイオイまじかよ…オオカミさん、まさか俺を食べる気かい?」

 オオカミは唸りながらじりじりと近づいてきます。

 「お前は瘦せっぽっちで食べるところは少なそうだがな。」

 なんとこのオオカミは人間の言葉を理解し、さらに話したのです。

 「待ってくれ!俺は今からこの先の山小屋に住む、性格の悪い卑しいデブジジイのところに歯痛の薬を持っていかなきゃ行けないんだ。そうしないと俺の家族があの癇癪ジジイに殺されちまうんだ、頼むよ。」

 トミーは恐怖から必死でお願いしました。それを聞きながら、オオカミの頭に一つの案が浮かびました。この小僧デブジジイと言ったな、肉が多くて良さそうじゃないか。それならそいつも一緒に食ってやろう、山小屋はこの辺に1か所しかないしな。

 「フン。この辺は俺らの縄張りだ、気をつけな小僧。」

 そう言うと狼は去っていきました。

 「た、助かった…。そうか知らない内にオオカミの縄張りに足を踏み入れていたのか。あーあ、こんな爽やかな日にオオカミに襲われジジイの家におつかいに行かされ、なんて日なんだ。クソッたれ。」

 周囲を片づけると、トミーは再び山小屋に向かって歩き始めたのでした。


 ついに山小屋にたどり着きました。看板には『本日休業』という札がかけられています。トミーはおじいさんに会うことを思うと憂鬱で仕方ありません。はぁーと大きくため息をつくと、チーンと入り口のベルを鳴らしました。しかし返事はありません。

 もう一度ベルを鳴らしてもおじいさんの返事はありません、トミーは不思議に思いながら今度はドアをノックしました。

 「おーいじいさん、お待ちかねのお薬を持ってきたぜ。それともあまりに歯が痛すぎて腰が抜けちまったのかい?」

 軽口を叩くも、返事はありません。どうしたことかと考えていると、トミーは鼻につく臭いに気が付きました。

 「なんだこの臭い…血か?おいおいじいさん大丈夫かよ!」

 トミーが山小屋のドアに手をかけると、鍵はかかっていませんでした。扉を開けると、奥のベッドは白いシーツが真っ赤に染まり血が滴り落ち、その上にオオカミが乗っていました。オオカミはトミーに気付くと”食事”を止め、顔を上げました。口の周りが真っ赤に染まっています、何を食べていたのかトミーは一瞬で察しました。

 「来たな小僧。このジジイで俺は腹いっぱいだがな、お前は仲間のところへ持って行ってやろう!」

 そう言うと、オオカミはベッドの上からトミーに向かって飛び掛かって来たのです!


 しかしトミーの方が一枚上手でした。オオカミが襲ってくることを予測していたため、素早く前方に身をかがめオオカミを回避したのです。そしてオオカミの背後を取り、無防備なオオカミに拳銃を突き付けました。実は薬と一緒に護身用の銃も持ちだしていたのです。

 「動くなよ?さもないとこの銃の弾丸が、お前のケツから鼻の先まで風穴を開けることになる。」

 「フッ…人間のガキがそんな物騒なモン持ってるとはな。やれよ。」

 オオカミは観念したように地面に伏せました。

 「まぁ聞きなよ賢いオオカミさん、俺は感謝してるんだ。」

 銃は降ろさずトミーが言いました。

 「感謝だと?銃といいクレイジーなボウヤだ、俺はアンタのじいさんを喰い殺したんだぜ?」

 「俺はな、あの傲慢で乱暴なジジイが大嫌いだったのさ。それがオオカミさんのエサになったとはな、俺にとってはまさかのハッピーストーリーさ!そこでだ、今から俺とオオカミさんで取り引きをしようじゃないか?」

 「人間がオオカミの俺と取り引きをするだと?ここは夢の中なのかい?」

 オオカミは銃を突き付けられながらも悪態をつきます。

 「夢かどうかはこの引き金を引けばわかることさ。良いかいオオカミさん、俺のことは見逃してくれよ。15になったばかりでまだ酒も女も知らねぇんだ、それで死ぬなんて悲しすぎるだろ?」

 「そりゃそうだ、俺なら絶対成仏できないね。それで、ボウヤは俺に何かしてくれるのかい?」

 オオカミが尋ねます。

 「オオカミさんには仲間がいるんだろう?俺はここの物置を開けて帰るから、そこにある肉や果物を好きなだけ食っちまいな。どうせ俺一人じゃ運べないし、ジジイが死んだ今となっちゃ食料はもう腐るだけだからな。」

 「こりゃ傑作だ、自分のじいさんを殺したオオカミに食べ物まで恵むとは。お前本当にクレイジーなボウヤだぜ!」

 「さっきも言っただろう?俺にとって、あの暴力ジジイが死んだことはハッピーニュースでしかないのさ。さぁどうだこの取り引き、悪くないだろう?」

 「オーケー、ボウヤ。じゃあ俺は5分間だけこのまま伏せている。5分経ったら仲間を呼ぶからな、限界まで腹をすかして待ってるんだ。」

 「取り引き成立だな。じゃあなオオカミさんよ、俺たち最高の友達だぜ!」

 トミーは山小屋の壁にかかってる鍵を使い食糧庫の南京錠を外すと、そのまま山を下りました。少し下ったところで背後からオオカミの遠吠えが聞こえてきたのでした、仲間を呼んだのでしょう。


 「まさかコイツが役に立つとはな、嘘も方便とはよく言ったもんだ。」

 トミーの見つめる先にはオオカミを脅した時の拳銃が。実はこれ、トミーが先日15歳になった誕生日に父親にねだってプレゼントしてもらったエアガンだったのです。それを話術で本物かのようにオオカミを騙したのでした。

 「さて、もう一芝居打つとしますか。」


 自宅に帰ったトミーは、さも慌てて帰ってきたという風にハァハァと息を乱す演技をしながら、父親におじいさんが死んでいたと伝えました。父親が警察に電話する背中を見つめるトミーは、オオカミの群れが猟師たちに殺されないよう祈りながらニヤリと笑ったのでした。


思い付きと勢いで書きました。

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