5話:麒麟児、青龍と戦う
短編版を読んでくださった方には申し訳ないのですが、ヒロインの一人である青龍ことイズミちゃんの性格を大幅に変えました。
「いってー……」
地面に激突する寸前、『フライ』で衝撃を和らげた俺は、それでも無傷とはいかなかったので頭を押さえる。
『フライ』は完全に飛ぶまでにタイムラグがあるのが難儀だな。
「さて、どうしよう」
あの青い龍……最低でもSSランクはありそうだ。さすがは“絶望島”。
なんせフェアリードラゴンと対峙した時以上の威圧感があるし。
『へえ。人間が今のを耐えるなんてね……』
「昔からそうなんだけど、人の言葉を話す魔物はやりにくいんだよな」
いや、殺さないといけない時はちゃんと殺すけどな。
「『アースランス・レイジング』」
とりあえず、土の槍を射出する。
普通の『土槍』とは威力も大きさも違う上級魔術なんだけど……普通にかわされた。
「『ストームカッター』」
『……ッ!?』
でも、二発目の風刃は当たった。
やっぱり飛んでいる相手には風魔術だな。
『やるね! でも、これはどう? 雨矢!!』
龍がそう言うと巨大な水の塊が上空に現れ、それが雨のように降ってきた。
しかし普通の雨ではなく、一滴一滴が矢のように鋭くて大地を貫いている。
「『スーパーノヴァ』!」
水の塊を爆発させる。
あんなのずっとやられきゃ敵わない。
……とはいえ、この島の魔物の強さも知れたし、そろそろ終わらせようか。
『フフフフ。ボクが飛んでいる限り、君じゃ勝てないよ!! 空中戦じゃボクの方が慣れてるからね!!』
「『ヘヴィエア』!!」
『――ほぇ?』
オリジナル風魔術で空気を重くさせて龍を落とす。
龍は間抜けな顔とともに墜落し、大きな隙をさらした。
「『クリエイト・ソード』『エンチャント:シャープ』」
錬金術で地面から剣を創り出す。
それを付与魔術で鋭さを上げ、龍に向かって走る。
『ちょっ! タンマタンマ! 冗談じゃん!』
……いや! 往生際わる!?
いちいち構っていられないので、そのまま切ろうと剣を首に振ると――
『ふぎゃあああ!! 人化!!』
突然、龍の体が輝いて、次の瞬間消えていた。
空振りした剣が大地を切り裂いた。
「ん?」
「あぶなかった……って! めっちゃ地面が切れてる!?」
横から声が聞こえる。若い女の声だった。
「すごい……人間に初めて負けた」
声の方向に視線を移すと、そこには青髪の美少女がいた。
角と尻尾が生えている。
見た目と状況的にさっきの龍だろうか?
「……人化?」
聞いたことがある。
SSランク、つまり伝説に名が残るような魔物を超えるSSSランクの神話級の魔物は人になれると。
でも、こいつがSSSランク?
確かに強いっちゃ強いし威圧感もあったけど、正直SSランクのフェアリードラゴンよりも弱かった。
油断していたのだろうか? それとも伝承が間違っていた?
「君の名前はなんなの?」
龍娘が尋ねてくる。
「……クウガ・グロタニカだけど」
「カッコいい名前だね! ボクは青龍って言うんだ!」
青龍って、そのまんまな名前だな。
「で、何か用か?」
「明日、ここで会ってくれない? 二つだけ頼みたいことがあるんだ」
「頼みたいこと? 二つも?」
「うん。また明日、お昼ぐらいに仲間を集めてから教えるね」
「……無視したらダメ?」
もう働きたくないんだけど。この島の真ん中にある湖にも行きたいし。
「無視したら、この島にいる限り追い回すよ」
「待っとくわ。明日の昼ね」
せっかく自由になったのにストーカーされるのはキツイ。特にこいつは空を飛べるし。
まあ、そんなに難しいことを頼まれたりはしないだろ。
「ありがとね! ボクらのリーダー!」
「は? リーダー?」
「じゃ! 他の三人を連れてくるね!」
「いや、リーダーってどういう……聞いてないし……」
俺が聞き返すよりも早く、青龍は龍形態になって飛んで行った。
「……待つか」
とりあえず、ご飯でも獲りに行こうかな。
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