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18話:麒麟児、四人を逃がす

 雷を纏う魔物――麒麟と対峙する。


 麒麟は、元々の黄色い毛に、バチバチバチ! と電気が走っていた。


「なんかさっきと違くない!?」


 まずは、様子が明らかに異なる麒麟にツッコむ。


 こいつ……どういう理屈かはわからないが、明らかにパワーアップしてるな。


『ブルアアアアアアアアアアア!!!!』


 麒麟が大きな雄たけびを上げる。

 それだけで雷が大地を駆け、湖だった地を裂き、燃やし始めた。


 何を燃料にしているのかもわからない炎に戦々恐々としながら、俺は四人のもとに走った。

 まずは、彼女たちを離さないと、常に人質を取られたような状態になってしまう。


『ク、クウガ……さん……』


「おい! 人化できるか!?」


 魔物形態の彼女たちは、ゆうに五メートルを超える巨体だ。

 それらを一気に遠くに持っていくには、少々荒っぽくなってしまう。


 俺が受け取った《勇者の力》は聖剣の扱いだけ。魔力や身体能力の強化とかはしてくれなかった。

 わりとケチな神様だ。


『ひ、人化……』


 俺の声を聴いたイズミが人形態になる。

 それに続くようにカザネ、トウカ、ミノリが人化する。青・白・赤・黒の髪色の美少女たちが現れた。

 全員、酷い傷を負っているが、応急処置さえ施せばあとは魔物固有の治癒力で治るだろう。


「治癒術は苦手だが……『リジェネレート』!」


 唯一使える治癒術を使う。

 これは、効果のわりに魔力を喰うのであまり使いたくない代物だが、今はつべこべ言ってられない。

 俺の治癒術で自然治癒力が強化された四人に、風魔術を使う――


『ブルルル!!!!』


 ――前に、麒麟が纏っている雷を強くして突進してきた。


「『テイム』!!」


 それに対処するために従魔術を使う。


 従魔術は、普通なら魔物に心地よい魔力を流して「貴方は私の味方です」と暗示させる術だ。それが王道で正しいもので、格上の魔物でもテイムできてしまう。

 だが、俺のは違う。

 俺の『テイム』は、相手を圧倒するほどの魔力を見せつけて「俺はお前よりも強い。だから、言う事に従え」と本能を脅しつける術だ。

 俺のやつは、自分が相手よりも強くなければならないという条件と、自分が死んだ瞬間テイム対象は野生に戻るという二つの大きな欠点があるものの、知性があったり、凶暴な魔物にも有効であるという利点もある。


 俺と麒麟の実力差は、現時点では向こうが強くなったこともあって互角くらいだ。

 だから、このテイムはほぼ確実に失敗する。俺が普通の『テイム』を使えてたら成功していたかもしれないが。今嘆いても仕方ないことだが。


 しかし、俺のは相手を上から屈服させようとするものなので、威圧として足止めをするくらいはできる。


『……!? ブルウ……』


 俺の予想通り、麒麟は突進をやめて足踏みした。

 この間に、先程使おうとした風魔術を行使する。


「ちゃんと俺の戦いを見とけよ。『ブリーズキャリー』」


 優しいそよ風でイズミたちを運ぶ。

 彼女たちを一〇〇メートル先くらいでふんわりとおろす。


 なんでこの距離にしたのかというと、俺の今の強さを知ってもらうためだ。

 万が一……本当に万が一、彼女たちが人間を襲いたいがために人里に行こうとしているのならば、そんなことをしたら俺に確実に殺されるとわからせなければならない。


「ようやく一対一だな」


『ブルルル』


 まあ、今はそれよりも目の前の魔物だ。

 威嚇するように雷を周囲に放ちながら歩いてくる麒麟に、俺も同じように悠然と歩いて近づく。


『ブルアア!!』


「らあっ!!」


 そして、一〇メートルくらいまで近づくと同時に駆け出す。


 麒麟の双角と俺の聖剣が至近距離で激突した。

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