2話:麒麟児、国を追放される
「クウガ・グロタニカ。貴様に逮捕令状が出ている」
「は?」
それはいきなりだった。
書類をまとめている最中にいきなり、数人の騎士たちが王宮にある私の部屋に侵入してきたのだ。
彼らのリーダーである騎士団長は、手に一枚の紙を持っている。
「ついてこい!」
まるで、幾人もの罪なき人を殺した罪人のように扱われながら、王の御前に連れていかれる。
抵抗してもよかったが、どうせいつもの嫌がらせだと思っておとなしく従う。抵抗したらいちゃもんつけられるかもしれないし。
玉座の間には、この国の王であるイヴァン・アルチェアに第一王女であり私の婚約者であるエディタ、他の王族の皆様(第二王女であるルーチェ殿下だけ留学しているためいない)、宮廷魔術師長を筆頭した各部門の長たち、騎士団長と彼と懇意にしている騎士たち、私の家族であり公爵家当主の父上と母上……弟のリュカはいないのか。久々に会いたかったのに。
そんなこの国の上層部たちに混じって、一人だけ場違いな人物がいた。
王の御前にもかかわらずエディタの腰を抱いてニヤニヤと笑う男、確か名前はアレス・ギハニア。ギハニア公爵家の長男様で学園で何度か会ったことがある。私は一学期ですべての単位を修得したからそれ以来会ったことないが、色んな令嬢に手を出しているという噂はよく聞く。それに最後に会った時から一切の魔力の向上が見られない。次期公爵なのだからその怠慢を治せと言ったのに。
「罪人クウガ・グロタニカよ。貴様を流刑に処す」
「は?」
なんであの男がいるんだろう? と思っていると、国王陛下が唐突にそんなことを言い出した。
これには頭がショートしてしまう。
さすがに嫌がらせの範囲を超えていないか?
「……理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「うむ。我や娘たちへの不遜な態度、予算の私有化、言いたいことは多々あるが……」
不遜な態度? それは将来のために勉強をしてくれ、浮気をやめろ、税金の無駄遣いをするなと言ったことだろうか? 最近はそれ以外で話したことないし。
唯一、婚約者であるエディタ様にはパーティーでエスコートしたり、ダンスしたり、プレゼントを渡したりと関わってきたが、それも普通の範疇だ。
予算の私有化には本当に心当たりがない。予算案を練ったことくらいか?
「一番は才能のあるアレスに嫉妬し、彼を卑劣な手で貶めたり、皆に気づかれぬように虐めたことだ」
「はあ? 才能のある? 卑劣な手? 虐め?」
意味がわからない。
まず、才能があるということも知らなかったし、卑劣な手で貶めたり、虐めをするほど彼と関わっていない。
そういや、エディタ様が彼と浮気していたから、それを注意したことはある。でもそれくらいだ。
「心当たりがございません」
「ふん。犯罪者はみんなそう言うんですよ!」
エディタ様は勝ち誇ったようにそう言うと、アレスにうっとりとした表情で寄りかかった。
ハアーと大きいため息が漏れてしまう。
あれだけ王家の沽券にかかわるから浮気をするなと言ったのに、よりによって婚約者である俺の前でそんなことをするのか。陛下も注意すべきだろうに。
「証拠はあるので?」
「そんなもの、我が娘が言うのだから間違いないだろう」
「えぇ?」
さすがにひいてしまう。一国の王がそれはダメだろ。
とはいえ王は王。話にならないと一蹴するのも問題がある。
それに、ここまで大掛かりでなくても、陛下が親バカなのはいつものことだ。
「では、何時私が彼を陥れ、虐めたのかをお教えください」
だから、私の無実を証明するにはやっていないという証拠を提示すればいい。そうすれば、陛下も娘が嘘をつくこともあるとわかってくれるだろう。
幸か不幸か、私は常に働いていたので目撃情報はあるだろう。
「そんなものはいらん! 騎士たちよ! こやつを“絶望島”へと連れていけ!!」
「は?」
嘘だろ? どんだけ私のことが嫌いなんだ……。
「ふざけないでください。この国の王である貴方がそんなことで――」
「黙れ! 貴様など、エディタに相応しくないんだよ!」
「アレス……素敵……」
……なんだこの茶番。
エディタ様……エディタがアレスに寄りかかる。
これが……これが一七年も尽くしてきた私に対する仕打ちか……。
私は失意のまま、愉悦が篭った瞳に囲まれながら騎士に連行された。
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