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14話:麒麟児、剣を抜く

申し訳ございません!今日と明日は一話だけの投稿になります!

「着いたー!」


 お昼頃、俺たちはついに湖にたどり着いた。


 ここに繋がっている川の水からでもわかるけど、湖はめちゃくちゃ綺麗だった。それはもう輝いて見えるレベルで。


「でも、絶対に細菌が混じっているんだろうなぁ」


 もう川の時と同じ失敗をしない。

 失敗から学ぶ男、それがクウガ・グロタニカだからな!


「ここにはそんなのないよ」


「え?」


「うん。細菌なんていない」


「やった~!」


 いちいち蒸留すんの面倒だったんだよね!


 両手を上げて喜びながら湖に近づき、手で掬って飲んでみた。


「うおぇえええええ!!」


 そして……やっぱり吐いた。それも血を。


「えぇ!? ちょ、ちょっと、血がすごいよ!?」


「こ、ここには細菌とかいませんよ!? ど、毒も入ってないですし」


 ミノリが湖の水を飲んで確かめるが、本当に菌とか毒はないらしい。魔物には毒とかは効かないけれど、そういうのを感じ取ることはできるらしい。

 というか、俺もそういうので吐いたわけじゃないのはわかっている。


「マナ酔いだ……」


「マナ酔い?」


「ああ。魔力を限界以上に取り込んでしまうと、防衛反応で余分な魔力を血と一緒に吐き出してしまうという現象だ。大体、魔力を回復するマナポーションで起こるんだけど……」


 水を掬いとる。

 やっぱり、見た目は透き通った綺麗な水だ。さっき思ったように太陽の光が反射して輝いているようだ。

 でも、よく目を凝らしてみると、この輝きは陽光ではなく魔力の輝きだ。こんな高濃度なものを見たことがなかったので気がつかなかった。


「どうやら、この湖はただの水じゃなくて、超濃いマナポーションでできてるみたいだな」


「ふーん……」


 四人は首をかしげながら水を飲んだ。

 どうやら、本当に何ともないらしい。


 ……こいつら、もしかしたら万全の状態じゃないのか? 少なくとも、魔力の限界値は俺よりも上っぽいし。

 だとしたら、こいつらがSSSランクの魔物であるというのも納得できる。

 ま。今はまだ仮説段階だな。


 彼女たちに対する考察を深めたところで、さてどうしようか? と悩む。


 剣が刺さっているのは湖の中心……普通に考えて一番深いところだ。

 当初、俺は普通に潜って抜こうと思っていたが、少しでも飲んでしまうとマナ酔いが起こってしまい、剣どころではなくなってしまう。


「この島の魔物がそこそこ強い理由はこれにあるのかもな……『オーシャンディバイド』!」


 海すらも割る魔術を使う。

 すると、湖は左右に分かれて、彼女たちの言う通り中心に剣があるのが確認できた。無事に割れて良かった。


「なるほど……あそこか」


 この湖の大きさなら一〇分は持つ。

 十分、剣のところまで行って抜いて帰る時間はある。問題は簡単に抜けるか否かというだけで。


「にしても魚一匹もいないんだな。良かった」


 正直、こんな水に生息している魔物なんて最低でもSランクはあるだろうし、戦わずにすむのは嬉しい。


「よし。行くぞ」


「えっと、ボクたちは?」


「一応、ついてきてくれ。俺が溺れた時ように。あ、溺れるってのは、ここの水を飲んだら呼吸が困難になってしまうって意味で、俺は泳げるからな……俺は泳げるからな!」


「わかったよ。そんな二回も強調しなくても」


 重要なことだからな。


 というわけで、四人もついてくることになった。


「さて……」


 湖は大きいが、走れば三分で中心に辿り着ける。


 道中は何もなかったが、近づくごとになんかこう……神聖な気配が漂ってくる。魔力とはまた違うものだ。


「――よし!」


 謎の神聖さに気圧されそうになるも、負けずに柄を握る。


「イッ――!」


 握った瞬間、全身に電撃が走った。静電気では納得できない量だ。


「い、今のは?」


「……ぬ、抜けたのじゃ」


「え?」


 トウカの言葉を聞いて、反射的に自分の右手を見る。


 そこには、湖の中にずっとあったからか、すっかり錆びてしまっている剣が握られていた。

 それは錆びているせいで刃毀れがひどく、さらには魔剣のような魔力を一切感じられなかった。

 どう見ても、トウカたち四人をこの島に縛り付けるような力はなかったし、さっきまで感じていた神聖さもなくなってしまっていた。


「なあ、トウカ。なんか変わったところはある――ッ!」


 彼女たちの方に向いて、これについて聞こうとする……けど、すぐに止めて、トウカを押しのけた。


「え?」


 トウカが疑問の声を漏らすが、俺はそれどころじゃなかった。


「グハアッ!」


 お腹が熱い。

 ……だが、これは痛覚を熱いと錯覚しているだけだ。


「……ゴボオッ!」


 何か言おうとしても、出てくるのは言葉ではなく血だけだった。

 時間が経つごとに熱いと錯覚していた痛覚を正常に認識してくる。


 実に七年以上ぶりに感じる死の恐怖。結局、この島では感じなかったし。


 それを跳ね除けて、目の前のそいつ(・・・)を睨む。


 そいつは見たこともない姿をした魔物だった。

 体は鹿だが顔は龍モドキで、牛の尾と馬の蹄をもつ。毛は黄色く、身体には鱗がある。一番の特徴は二本の角で、バチバチと帯電していた。


『ブルルル!』


「ぐはっ!」


 俺の腹に刺さっている角から、雷撃が直に襲ってくる。

 それをよけきれるはずもなく、俺はもろに喰らってしまった。


「くっ! 『水弾』!」


 いち早く行動を開始したイズミが水の弾丸を放つ。

 龍形態の時のような大きさではないものの、水の弾丸は音速を超えており、Sランクの魔物でも無傷は免れないだろう。


『……ブルル』


「嘘! ノーダメ!?」


 しかし、この謎の魔物は傷一つつかなかった。


 くっ! 俺もいつまでもやられっぱなしじゃいられねえ!!


「『プロテクション』! からの『エアバースト』!!」


 自分を強化してから、空気を圧縮して爆発を起こす魔術を発動させる。

 爆風で角が抜け、俺と魔物は吹き飛ばされた。


「ぐっ! ゲホッガホッ!」


 くそ……俺は治癒術苦手なのに!


『ブモオオオオオ!!!!』


「イイッ!?」


 魔物が叫ぶと、周囲に落雷が発生した。

 落雷は光の如き速度で降り注ぎ、俺は四人を護るのに必死だった。


「『クワトロボール』!!」


 四属性の球体を同時に放つ上級魔術で、四人の頭上を護る。


「ぐあああああ!!!」


 しかし、俺自身を護ることはできなかった。

 致死に至る雷撃を浴びて、俺は……気を失った。

主人公最強と俺TUEEEへの道の第一歩。


☆1でも評価してもらえると嬉しいです!

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