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13話:麒麟児、ミノリと木の実を採る

『10話:麒麟児、イズミと川の水を飲む』を少しだけ変えました。大切な台詞が抜けていたので。

 朝、起きてきた三人に挨拶をかわして、俺たちは再び湖に向けて歩き出す……前に朝食のための準備をしていた。


 イズミ、カザネ、トウカが魔物を狩ってきて、俺とミノリが木の実を採るという役割分担だ。

 人間でも食べられる木の実を知っていると言うので、ミノリに教えてもらっているのだ。


「こ、これは甘酸っぱくて美味しいんですよ」


「こっちは?」


「そ、それは毒があるので、食べたら死んじゃいます!」


「怖っ!」


 黄色い木の実を投げ捨てる。

 食べたら痺れるとか下痢になるとかじゃなくて、問答無用で死ぬって……。


「にしても、よく人間が食べられるものなんて知ってたな」


「こ、この子が教えてくれたんです」


 ミノリの背後から小さな蛇が現れる。

 大きさは異なるが、見た目は彼女の魔物形態時の尻尾の蛇と同じだ。


「尻尾の蛇?」


「は、はい。わ、私の魔力で創った生物で、この子が見たこと、聞いたことは私と共有されるんです」


「へえ……それはすごい」


「ご、ご飯を探す時に便利なんですよ」


 蛇が舌をちろちろ出す。

 よくよく見てみると可愛いな。


 つい、蛇の喉下を撫でる。


「ひゃああああ!」


「うおっ!」


 蛇を撫でたのに、なぜかミノリがくすぐったそうに変な声を出した。頬も赤らめている。


「わ、私とこの子は一心同体なんです! だ、だから、この子が痛いと私も痛いですし、気持ちいいと私も気持ちいいんです!」


 気持ち良かったのか……こいつ、もしかしてむっつりか?


「そ、それで、私は臆病なのでずっと住処にいたんです……」


 亀って特定の住処を持つっけ? なんか、いろんなところにいるイメージがあるけど……今は関係ないか。


「で、でも、この子は好奇心旺盛なのでよく住処を出てたんです。そ、それで色んな事を知れたんです」


「いい相棒だな」


「は、はい! あ、ありがとうございます!」


「でも、あの三人が呼んだらお前自身が来るんだな」


 これも友情というやつか。

 ……よくよく考えてみると俺って友達いないな。“賢者”くらいか。


「は、はい。で、でも、さすがにこの島を出ようとは思いませんよ……トウカちゃんには悪いんですけどね」


「ん? 知ってたのか?」


 トウカの話では、まだ伝えていないはずだったが。


「そ、それくらいわかりますよ。ト、トウカちゃん、何度も島の外を羨ましそうに見てましたもん。ほ、他の二人も知ってますし、ついていくらしいです」


 そうなんだ。

 まあ、彼女たちがどれだけの期間一緒にいたかはわからないが、長くいたらそういうのも察するのかもしれない。


「イズミとカザネも出るんだな。昨日聞いた限りじゃそんな雰囲気はなかったけど」


 あ、でも、イズミはちょっと出たそうにしてたか。人間のことは嫌ってたけど。


「き、昨日の夜に急に出るって言いだしたんです。い、今までは否定的だったんですけど」


 へえ~。なんか心変わりするような出来事でもあったんかな……それとも、俺がかっこよすぎるから人間もいいなと思い始めたのかな? ふふん。


「お前はどうしても嫌なのか?」


「い、嫌ってわけじゃないです。で、でも、勇気がないんです……」


 ミノリがうつむいてしまう。

 勇気がないか……それは難儀だな。


「わ、私もみんなと離れたくないんです……けど、迷惑をかけるわけにもいかないので」


「……かけていいと思うけどな。よっぽどじゃない限り」


 友達というのはよくわからないが、トウカは一緒に行きたいと思ってると思う。昨日話した感じだと。


「そ、そうなんでしょうか?」


「たぶんな。それに、お前は迷惑をかけるような奴じゃないよ。少なくとも、俺は一度も迷惑だと思ったことないし。会ったばかりだけど」


「ほ、本当ですか?」


「ああ。なんだかんだ戦えるし、今みたいに木の実のことも教えてくれるし」


「…………」


 あれ? 黙ってしまった。何かまずいこと言ったかな?


「……そ、それでも、怖いんです。こ、この島の中でさえ、住処から出るのも怖いのに」


「そうか。まあ、それはお前が選んだらいいさ。でも、あいつらについていくことをおすすめするぜ」


「ど、どうしてですか?」


 ミノリが不思議そうに聞いてくる。


「自分一人の力でできることには限界があるんだ」


 さっき捨てた黄色い木の実を拾う。


「お前がいなかったら、俺はこれを食って死んでたかもしれないようにな」


 本当に危なかった。

 野菜が不足しだし、それを補うために毒がある木の実を食べていただろう。いつかは絶対に。


「この世界はめちゃくちゃ広いんだ。一緒に行く仲間は多ければ多いほどいいだろ。お前も、友達がどっかで野垂死にするのは嫌だろ?」


「そ、それは嫌です!」


「ま。最後に決めるのはお前だ。よく考えておきな」


 そう言うと、ミノリは考え込むように黙った。

 そして、こちらに申し訳なさそうな瞳を向けて、尋ねてくる。


「……ク、クウガさんもついてきてくれますか?」


「…………は?」


「ご、ごめんなさい!」


 しまった、露骨に嫌な顔をしてしまった。

 それにしても俺もついていくか……なんで?


「なぜ?」


「え、えっと、人間の街についてよく知ってる人がいた方がいいかなって……」


 ああ。確かに、その地に詳しい知り合いがいたら安心するよな。


「……まあ、考えておく」


「あ、ありがとうございます!」


 気は進まないがな。それでも頼まれた以上、そして、今こうやって助けてもらってる以上、俺も応えるべきなんだろう。気は進まないけど。


「わ、私、勇気を出してみます!!」


「そうか。それは良かった」


 ミノリの言葉に嬉しく思う。


 その後は特に何もなく、俺とミノリは木の実を抱えて狩りを終えて待っている三人の元に戻った。

 この島固有の木の実は非常に甘くてジューシーだった。

☆1でも評価してもらえると嬉しいです!

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