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幕間:宮廷従魔師長モルロ③(王国視点)

申し訳ございません!今日と明日だけ一話投稿になります!

とりあえず、第一章は一日二話投稿にしたかったんですけど……。

「くそっ! くそぉ! どうすればいいんだ!」


 アルチェア王国宮廷従魔師長であるモルロは、顔を真っ赤にして怒りながら真っ青にしてビビるという何とも器用なことをしていた。


 彼の頭の中を占めるのは、AとSランクの魔物どころかSSランクの魔物であるフェアリードラゴンなどという爆弾を残していったクウガへの怒りと彼女をテイムできなかったことに対する不安だ。

 前者は逆ギレで後者は自業自得だった。


「クウガが戻ってこなければ国を滅ぼすだとぉ……!! そんなこと、陛下に報告できるわけないだろうが!!」


 仮に、このことが国王に伝わったら、モルロは下手すると死刑になってしまうだろう。

 プライドと保身だけは凄い彼にそんなことを報告できるはずもなく、彼は解決法も見つけられないまま王宮内を歩くしかなかった。

 まあ、報告したとしても解決できるかと言ったら無理だが。


「そ、そうだ! 騎士団に頼むのはどうだ!!」


 名案とばかりに大声で叫ぶが、すぐにダメだと思い出す。


「……ダメだ。Sランク以上……最近はAランク以上の魔物はクウガに押し付けていたんだった。ならば冒険者は……無理か。許可が出るはずがない」


 冒険者ギルドに依頼を通して冒険者に倒させるという案も浮かんだが、国有の従魔の討伐などを市井に流せば国の信頼に関わってしまう。間違いなく、国王や宰相の許可は降りないだろう。

 それに、フェアリードラゴンは大きな戦力だ。クウガは無血開城を目指し、両国にプラスになるような同盟を結ぶことで相手国を事実上の属国状態にしていたが、今のアルチェア上層部は戦争による植民地化を目指している。フェアリードラゴンがいなくなれば戦力の七割(もしくはそれ以上)なくなったも同然だ。彼女よりも強いクウガは当然いないし。

 そもそもの話、フェアリードラゴンを討伐できる冒険者がいないという理由もある。大陸にはSSランクを倒したことがある二人のSランク冒険者(冒険者はSランクまで)がいるが、彼らに頼ったら最後、骨の髄までしゃぶりつくされるか、国を支配されてしまうだろう。


「どうしてこうなったんだ! どうして……」


 ――そもそも、気に食わないなどというふざけた理由でクウガ様を流刑にしたから、このような事態が起こったんじゃないですか!!


「うっ!!」


 先ほど言われた言葉が頭の中を駆け回る。


「クウガを追放したから? たった一人がいなくなっただけで国が崩れるのか?」


 モルロは信じられないとばかりに呟く。

 体の震えが止まらなかった。

 たった一人、それも産まれた時は男爵家だった男の有無で国の未来が決まる。


 到底、信じられることではなかった。

 ……少し考えればわかりそうなものだが。


「あら~、これはこれはモルロ様。ご機嫌麗しゅう」


 そんなモルロの様子を気にも留めずに引き留めたのはとある女性の声だった。


「……シークか」


 彼女はシーク。宮廷薬師長を勤める女傑だ。正確には女傑だった(・・・)、だが。


 シークは、モルロを嘲笑いながら問いかける。


「どうしたんですか~? 大変そうですけど……もしかして、うまくいかなかったんですかぁ?」


「うぐっ!」


「まあ、こちらとしてはフェアリードラゴンさえテイムできてたらそれでいいんですけどね」


 言っている言葉は正しいが、彼女にも「クウガなんかにできたんだから最低限の仕事はできるでしょ」という考えがあった。彼女もクウガの教育係だったからだ。


「貴様は働かなくていいのか?」


 モルロがばつが悪そうに話を変える。

 シークはそれに違和感をおぼえることなく、嘲笑を浮かべながら語る。


「私たちはいいんですよ。何せ、こちらが育てているのはエリクサーの材料である不死草。不死という名前の通り、枯れない薬草ですから。収穫にさえ気をつければいいのです」


 彼女がこんなに自信満々なのはこういった理由があった。

 “不死草”は、霊峰の山頂でしか育たない特殊かつ超貴重な薬草で、あらゆる病や傷を治すエリクサーの材料だ。

 高ランクの魔物が蔓延る霊峰にちょっとしか育たず、育て方も不明であったという理由からSランクの冒険者でも手に入れられたらラッキーと言われているが、アルチェア王国……クウガはそれの量産に成功していた。

 それを尋ねる者はいなかった。なぜなら、雲よりも高い(すなわち、雨が当たらない)霊峰の山頂でしか育たないということから枯れない薬草という有力な説があったからだ。クウガもそれを殊更に否定しなかったことも彼女らの怠惰につながっていた。


「じゃあ私はティータイムですのでここらで。ご機嫌よ~」


 オーホッホッホッホ! と笑いながら去るシークに恨みがましい視線を向けながらも、モルロは何も言えなかった。


「くそっ!」


 結局、純白の壁を殴ることしかできなかった。非常に惨めだった。

 シークの笑い声がいつまでも続く。


 しかし、この時のシークは知らなかった。

 まさか、自分もモルロと同じような目に遭うなど。

次話はクウガ視点に戻ります。


☆1でも評価してもらえると嬉しいです!

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