1話:麒麟児、尋常じゃない量の仕事をこなす
お待たせしました!連載版です!!
私はクウガ・グロタニカ。グロタニカ子爵……公爵家の長男だ。
ここまでだとただのお坊ちゃんだが、一つだけ普通とは違う点があった。
それは、生まれた時から笑うことが少ないということと、少しばかりの才能を持っていたということだ。
とはいえ、生まれて数年は才能を活かす機会などなく、ただただ気味の悪い忌み子だと言われ続けてきた。
しかし、私が僅か五歳の時に、私が並外れた魔力を持ち、火・水・風・土の四属性に高い適性があることが判明するとみんなの私を見る目が変わった。
不気味な忌み子から、不気味だがそこそこの才能を見込める忌み子へと。
それから私は将来国を背負う者になることを強制され、虐待と言っても過言ではない教育を強いられた。
算術や古代語、歴史、魔術、剣術、戦術、礼儀作法etc……。
考えうる教育をすべて受けさせられ、たとえ泣いても許されない。
それどころか、いつも涼しい顔をしていた私を泣かせられるのが楽しいらしく、さらに苛烈になっていった。
将来この国を背負っていくのだからこれくらいはできて当然。
この言葉を言い訳にいじめられ続けた私は、一度倒れてしまった。
それで私の中の何かが吹っ切れたのか、どんなことにも何も感じなくなっていった。嫌だと思っていた勉強も鍛錬も泣き言を言わないようになった。一人称も知らないうちに私に変わっていた。
年齢が二桁になったころには、既にどの教育係よりも賢くなり、どの宮廷魔術師よりも魔力が高く、どの剣術指南役よりも剣がうまくなった。
それでも、国の上層部は誰も私を認めなかった。いや、認めようとしなかった。
それどころか、まだ子どもでずっと泣かせていた私に負けたことが屈辱だったのか、さらに強く当たってくるようになった。
ここまでくると諦めがつく。
「おい! 今年度の予算配分はどうなっている! 貴様に任せたはずだろ! 忌み子にはしんどかったかぁ!?」
今日も今日とて、財政大臣が仕事もせずに文句をつけてくる。
予算案の作成など命じられた覚えはないが、こんなのいつものことだ。
この国の仕事はすべてクウガ・グロタニカの仕事。責任もすべてクウガ・グロタニカのもの。
それが、わが国のスローガンらしい。
「それでしたらこちらになります」
なので、私は考えうる仕事はすべてやっておかなければならない。言われてないは言い訳にできないからな。私だけは。
事前に作成していた予算案を手渡す。
「な、なんだと!?」
さすがに予想外だったのか、財政大臣が目を剥きながら予算案に目を通した。
「こ、これは去年と同じだろ!」
「はあ?」
「手抜きをするなんて、恥を知れ!」
「何を仰っているのですか。軍備は縮小しましたし、逆に医療の予算は増やしました。他にも――」
「……も、もういい!」
屈辱で顔を赤くした大臣はそれだけ言うと、ずかずかと大股で遠ざかっていく。
「ふん! どうせ貴様はもう終わりだ!」
最後にそんな捨て台詞を残して、大臣は消えていった。
「な、なんだったんだ?」
この国一の頭脳を自称しているが、さすがに困惑してしまった。
まあ、いつものことだ。切り替えよう。
「そんなことよりも働かないと。この国が回らなくなってしまう」
この国の医療の要であるエリクサーに必要な不死草の水やり、同盟に関する資料作成、飛空船の生産、スラム街の対策と救済、今度ある隣国とのパーティーでうちの王族が渡すプレゼントの選定、別大陸から来た大商会との商談、不作だった領地への補助、転移魔術陣の更新、明日の天気予報、竜舎の掃除、住民トラブルの解決、騎士団の武器にエンチャント、最近国境付近に現れた騎士団じゃ勝てないドラゴンの討伐etc……。
最低でも今日の内にこれだけはしないと。
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