『黄星のタイムパトロール』4巻
『黄星のタイムパトロール』4巻
信号につかまった。
変事「・・・通院ですか?」
お客「え?いえ・・・」
変事「そうですか・・・もしかして急いだほうがいいですか?」
お客「出来るんですか?」
変事「えぇ。」
お客「お願いします。」
変事「特別ですよ。え~と・・・」
悩んでいると、ハンドルの前にスイッチが三つ出てきた。少し乗り出すと、警察、救急、消防とレバー前に書いてあった。
変事「あなた、どこか悪いんですか?」
お客「いえ、娘が・・・」
変事「娘?」
お客「車に跳ねられたって・・・」
変事「では救急ですね?」
お客「はぁ・・・」
私は2個目のレバーを、手前に倒した。すると、ピーポーパーポー、というサイレンが鳴った後、ウィ~ンという音が後ろからした。見ると後部座席の間に間隔が開いていた。その奥には患者を乗せるためのベッドや器具が揃えて在った。
振り返ると、信号が青になっていたので加速することにした。少し急ぐためにサイレンのスイッチを探さなければならない。見回してみると、私の上にレバーがあった。サイレン、ランプが分かれているようだ。私は両方いれ、心置きなく、先を急いだ。
病院の正面広場まで急行すると、お客はカードを見せて礼を言った。しかしその氏名・・・古意 新蛇・・・政治企画長であった。
変事「あ・・・」
彼は急いでドアを開き、入り口に駆けていった。と、とりあえずタクシーに戻るかな・・・私は救急のレバーを前に倒した。すると、ウィーンという音が後ろでしていた。振り返るとやはり戻っていた。
ポンド「少し待っててください。」
20分ほど待っていると、企画長が出てきた。ゆっくりとこちらに近づいてきている。
ポンド「あ、出番ですよ。」
私は、ポンドさんに促されるように、定番のレバーを引いた。そのまま流れるように彼は乗車してきた。
変事「どうしたんです?」
古意「裁判所に向かってください。」
変事「は、はい?」
古意「裁判を起こすんです。」
変事「分かりました。」
私はギアを変え、裁判所へ向かった。
変事「やはり、娘さんのことですか・・・」
古意「うっ・・・聞きたいんですか?」
変事「え、まぁ・・・」
古意「賠償してもらうんです。わが子の未来や社会の利得を・・・」
変事「そ、そうなんですか?」
古意「違うんですか・・・」
変事「はい?」
古意「あ、貴方、警察官なんですよね?」
変事「え、あ、はい。変事巡査です。」
古意「何か思いつきませんか?」
変事「え~そもそも賠償とは・・・」
古意「そうだな・・・被害者が怪我などを負ったときに・・・加害者側がその利得を負担することでしょう?」
変事「そうですね・・・今回の場合は・・・」
古意「私たちに賠償させるんです。」
変事「そうでしょうか?先輩が言ってたんですが、賠償は本来、遺族ではなく本人にすることだそうです。」
古意「そんなの理想だよ。死者には届かないんだ。」
変事「そうですよね・・・死んだら解りませんよね・・・だったら、忠告しに行きますか?」
古意「何を愚かなことを・・・」
変事「まだ間に合いますよ。」
古意「まだって娘はもう・・・」
変事「何時ですか?」
古意「はい?」
変事「何時ならば彼女は生きてるんですか?」
古意「なっ、跳ねられる前だから10時36分以前かな・・・」
変事「分かりました。ではその10分前にセットします。」
私はそう言いながら強引にラジオのつまみを回した。中央右のレバーを上げ、過去へ行った。
続く・・・