『黄星のタイムパトロール』3巻
授与式の日・・・
結局、待ち人は来なかった。署外に出てみると、見知った車両が端に止めてあった。しかし中には誰もおらず、ワイパーに手紙がはさんであった。この車両を貴方に贈呈します。
詳しくは中へ。
私はこの車をとりあえず保管するため、運転席に乗った。すると車内の電気が付いた。それは照明ではなく、画面だった。中央クーラーの一番下。青い背景に黄色い線が波打った。
モニター「解析開始・・・本人と確定しました。ようこそ、変事さん。貴方が運転手です。」
変事「ま、そうなるよね。」
モニター「はい。」
うわ。変事までするのか。会話したほうがいいかな?
変事「あの。」
モニター「はい?」
変事「昨日の運転手はどうしたんですか?」
モニター「あ~生きてますよ。」
変事「ではどうして。」
モニター「・・・彼には休暇を与えました。いずれ戻りますよ。」
変事「そうですか。それで~私は何で呼ばれたんですか?」
モニター「勿論、このタクシーを運転してもらうためです。」
変事「え~私には警察官という大事な職務が・・・」
モニター「その職務もタクシーでやってしまえばいいのです。」
変事「あ、貴方はなぜ居るのですか?」
モニター「私はナビゲーターのパージン・ポンド。」
変事「日本人じゃないんですね?」
ポンド「えぇ。なのでいずれ送ってもらいますよ。」
変事「え?貴方は人間なんですか?」
ポンド「えぇ、人間ですよ。なのでよろしくお願いします。」
変事「えぇ、こちらこそ。」
ポンド「さて、貴方の仕事は社会を犯罪から守り、お客を安全に送迎することです。とりあえず出発しましょうか?・・・大丈夫そうですね?では、右下のボタンを押してエンジンをかけてください。」
言われたとおり、白文字でON,OFFと書かれた黒いボタンを押した。エンジン音がピーっと微かにしている。
ポンド「ではお客を拾うため、市役所に行きましょう。」
変事「道中でお客がいたらどうしたら。」
ポンド「残念ながら、このタクシーは到着が約束されているので、そこのレバーを満車にしといてください。」
変事「はぁ・・・」
市役所に着いた・・・
ポンド「10時56分、空車にしてください。」
変事「あ、はい。」
ポンド「待ってる間、天気の話でもしましょうか。今の天気は晴れ。天気予報では曇りだったそうです。明日の天気は・・・」
コンコンコンコンッ・・・突然、窓を連打する音が聞こえた。
音のした方を向くと、武将髭を生やした会社員のような人が居た。
ポンド「この人を乗せてください。」
変事「は、はい。」
私は座席の間から伸びる赤い球の付いた棒を引き、左後ろのドアを開けた。あれ?あのときは急いでて気づかなかったけど、開くドア逆じゃない?戸惑っていると心優しいのか、礼儀正しいのか、お客さんは開けてしまったドアから乗車した。
変事「え~どちらまで?」
お客「病院まで・・・」
変事「は、はい。」
続く・・・