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君のうた  作者: 川野りこ
122/126

第111話 消えゆく月

 ーーーー時々思う。

 ぜんぶ夢だったら、いいのにって……そんな訳ないのに。

 夢で終わっていい筈なんてないのに……


 『ママー!』

 「梨音、怜音、いってらっしゃい」

 『いってきまーす!』


 二人をぎゅっと抱きしめると、幼稚園に送り出した。


 週末のライブに向けて練習をする為、彼女はいつものスタジオを訪れていた。バンドの活動がメインの彼女は、一人きりで作詞作曲をしている。時折ギターを弾いたり、ピアノを弾いたりしながら、歌詞を考えていた。


 「ーーーー違う……」


 ギターの音色が気に入らないのだろう。だからといって、楽器に八つ当たりする事は出来ない。彼女自身の音色では物足りないだけだ。


 ーーーー和也の音が聴きたい……


 彼女は首を横に振り、ギターを奏でていく。

 

 ……しっかりしなくちゃ……ワールドツアーは、まだ続いていくんだから……


 気を取り直すように様々な曲を弾いていくと、良いフレーズが思いついたのだろう。頭に浮かんだフレーズに乗せて歌っていた。


 「あ……」


 ギターの音色も、歌声もんだ。


 ーーーーこの弾き方……和也と同じ……


 彼に教わった弾き方に、想い出していたのだろう。彼女の瞳から大粒の涙の雨が降っていた。


 「……っ…止まって…止まってよ……」


 拭っても、拭っても零れ落ちてくる涙に、消え入りそうな声を出しているが、止まりそうにない。幼稚園が終わるまでの僅かな時間を一人きりで過ごす奏がいた。


 腕時計に目を向けると、時刻は午後十二時半を指していた。


 梨音と怜音のお迎えに……そろそろ行かなきゃ……


 スタジオには、彼女が作詞作曲した楽譜が散乱していた。楽譜を手早く拾い集めると、三階まで駆け上がり、目元を冷やす。子供には心配させないように、いつも通りのママで振る舞っていたいからだ。


 「……hana?」


 背後から呼びかけられ、彼女は目元に乗せていた濡れタオルを取り落とした。何もなかったかのように拾い上げると、いつものように笑いかける。


 「……aki、お疲れさまー」

 「お疲れー、お迎えか?」

 「うん、そう……もう行くね!」

 「あぁー、午後からも来るだろ?」

 「う、うん……」

 「待ってるから、気をつけてな?」


 そう言って明宏は、彼女の頭を優しく撫でた。


 「ーーーーありがとう……」


 彼女は急いで駐車場に向かうと、車の中で気持ちを落ち着かせるべく、息を吐き出した。


 ーーーーっ、泣くな! 泣くな! 泣くな!!


 彼女の想いに反して、涙が零れそうになるのを堪えながら、二人を迎えにいくのだった。



 「aki、お疲れー」

 「お疲れ……hiro……」

 「どうかしたのか?」

 「これ……」


 明宏の指差したピアノには、先程まで彼女が描いていた楽譜が置かれていた。


 「hanaが……描いたのか?」

 「あぁー……昨日より増えてるな」

 「だよな……一日で一体何曲作ってるんだ? また寝れてないんだろうけど……」

 「あぁー、さっきすれ違った時も泣いた後だった」

 「そっか……」


 沈黙が二人の間に流れていると、仕事を終えたkeiが顔を出した。


 「お疲れー。ワッフル買ってきたけど、食べないか?」

 「食べる」

 「あぁー……hanaも二人を迎えに行ったら来るって言ってたから、三階で待ってるか?」

 「そうだな」


 コーヒーを淹れている間も、今後についての話をしていた。


 「……今週末からオーストラリアか」

 「あぁー……イタリア、フランスと、楽しかったけどな……」

 「そうだな……」


 ツアー中の彼女を揃って想い浮かべていた。


 ステージでは、いつも通り歌う彼女もバックステージでは、毎回のように過呼吸の症状を引き起こしていた。辛い筈の中、彼女はいつも微笑んで見せる。彼らが泣いている姿を間近で見たのは、日本でのフェス以来ないのだ。


 「ーーーー泣いたっていいのにな……」

 「あぁー……でも、俺達の前で泣くのも、hanaのストレスになるのかもな……」

 「そうだな…………あと……三ヶ月くらいでワールドツアーは終わりだけど……その後は、どうする?」

 「kei、どうするって? ……三月の……十三周年のドーム公演までが、決まってるだろ?!」

 「hiro……」

 「落ち着けってhiro! keiが言ってる意味は、分かるだろ?」


 思わず椅子から立ち上がっていて大翔は、二人の様子に我に返ったようだ。


 「悪い……」


 そう言って彼は、椅子に元通りのように腰掛け、告げた。


 「ーーーー活動休止って事か?」

 「……そうだな」

 「……akiも、そう考えてたのか?」

 「あぁー……hiroだって、本当は……ずっと考えてただろ?」

 「ーーーーうん……」


 カシャーーンと、何かが落ちる音がした。

 扉に視線を向ければ、車のキーが落ちている。梨音と手を繋いだ状態の彼女が立ち尽くしていた。


 「ママー?」 「どうしたのー?」

 「ーーーーううん、どうもしてないよ? 二人とも手、洗って来ようかー?」

 「……俺が行く!」


 大翔が咄嗟の判断で、彼女の代わりに梨音と怜音と手を繋ぎ、洗面台に連れていった。

 残された奏は、ただ茫然ぼうぜんと立ち尽くしている。その表情からは、彼女がどう思っているかは読み取れないようだ。


 「aki、しばらくhana借りてくな?」

 「あぁー……」


 圭介が奏の手を取ると、地下のスタジオまで駆け下りていった。


 「あれ? ママは?」

 「ママはお話中。だから……戻って来るまで俺達と遊んでようか?」

 「うん!」

 「おやつもあるからな?」

 『わーい!』


 二人の元気な様子に、ほっと胸をなでおろしていた。


 ーーーー活動休止……? そんな事しないよね?

 ……聞き間違いだよね??


 階段を下る間も、彼女は聞き間違いであってほしいと願っていたが、聞き間違いではなかった。現実であった。


 「……hana、解散じゃない。三月の十三周年のライブを目処めどに、活動休止にしようかって話だよ?」

 「……どう、違うの?」

 「休止なら…また……いつでも演奏出来るだろ?」


 ーーーーわかってる。

 本当は……私の為だって……わかってる。

 頭では理解できても……納得するなんてできない。


 言葉が出てこない彼女に、圭介は優しく問いかける。


 「…………今は、納得できないかもしれないけど……休息は必要だろ? まだワールドツアーが残ってるから……すぐにって話じゃない。……考えてみてくれないか?」


 ぽろぽろと涙が零れ落ちていく。彼女自身もなぜ、涙が出るのか分かっていないようだ。


 圭介に目元を拭われ、ようやく自覚した。泣いていたのだと。


 「ーーーーkei……」

 「んーー?」

 「……私は……活動休止にするなんて……考えられない……」


 はっきりと告げる彼女を圭介は抱きしめていた。


 「……分かった」

 「……うん」


 彼の言葉に安心したのか、彼女はそのまま気を失っていた。


 「hana? hana?! hana?!!」


 力の抜けた彼女に呼びかけるも応答はない。圭介が彼らを呼ぼうと携帯電話を出したところで、小さな寝息が聞こえてきた。


 「……寝て…る……?」


 彼女は気を失ったように眠っていたのだ。


 「はぁーーーー……」


 彼から深い溜息が漏れる。心底心配していたのだろう。彼の腕の中にいる彼女の目元には、深いクマがあった。


 「ーーーー痩せたよな……」


 元々線の細い彼女だが、度々衣装直しをしていた。ここ数ヶ月で痩せてしまったのだろう。時折、貧血も起こしていた。


 「…………どうしたら……」


 彼の呟きに答えをくれる者はいない。

 こんな時、miyaがいてくれたら……と、何度となく感じていた事だろう。

 説得出来なかった自分を悔いたが、時は否応なく流れていく。彼らを、彼女を置き去りにしたまま、過ぎていった。




 water(s)のワールドツアーが大盛況!! と、大々的に報じられている。追加公演もあり、福岡でのライブを終えた彼らは、残すところ東京ドームの二日間だけとなっていた。


 「凄いな……」

 「あぁー……」


 一部解禁になっている彼女のライブ映像に、感嘆の声を上がる。


 「潤……hanaと連絡つくか?」

 「いや……九月くらいから、連絡つかなくなった。メッセージは既読になるから、読んでるみたいだけど……」

 「だよな……」

 「拓真、どうかしたのか?」

 「いや、石沢から連絡来てさ。日本に戻っても連絡があんまりつかないから、hanaがどんなか教えてって言われたんだけど……俺も連絡つかないから、どうしようかと思ってさ……」

 「俺の所にも来てたな。ツアーが終わるまで、待つしかないんじゃないか? water(s)自体がメディアの仕事、受けてないって噂だし……」

 「だよな……それにしても凄いよな……」

 「あぁー……」

 「今年も……じゃなくて去年か……レコ大とか数々の賞を受賞してたな」

 「そうだったな。収録には参加してないから、映像だけだったけど……感動した。特に、SSEアリーナライブアワードな……」

 「あぁー、受賞式に出てたからな」


 SSEアリーナライブアワード、英国ロンドンのウェンブリーアリーナで開催された最も優れた公演に与えられる賞。water(s)は世界で活躍するアーティストの中から一位に輝いた。世界中の音楽ファンから百万を超える票が集まる中、過去最多の半数以上の票を獲得していたのだ。


 受賞の際の彼らは嬉しそうにしていたが、その心中は定かではない。彼らが受賞した数々の賞は、全てmiyaがいた時のものだったからだ。


 「ーーーー……耐えられないな……」

 「潤、何か言ったか?」

 「いや……何でもない……次はジャケットの撮影だよな?」

 「あぁー」


 潤の表情で、拓真は彼が何を告げようとしたか分かったが、気づかない振りをした。それは、口にしたら消えてしまうような儚い想いだったからだ。



 ーーーーみんな……連絡をくれるけど……なんて返したらいいのか分からない。

 今は……このワールドツアーを成功させる事しか……


 奏はメッセージを打っては消していた。近況を伝えるにしても、何て書いたらいいのか分からなくなっていた。


 「……奏?」

 「……ばぁば、どうしたの?」

 「ううん、二人とも寝た?」

 「うん……二日間、梨音と怜音のことお願いね」

 「それは良いけど……ちゃんと食べてるの?」

 「食べてるから大丈夫だよー。私も寝るね?」

 「うん……おやすみなさい」

 「おやすみなさい……」


 娘の顔色が悪いことは分かってはいたが、頑張っている姿にかける言葉がない。何でも一人でしようする彼女の手助けになればと、ドームでライブを行う二日間だけでも、孫の面倒を見ると約束していた。

 綺麗に整理整頓されたリビングには、彼の写真と少し傷ついた携帯電話と共に花が飾ってある。毎日、水を入れ替えているのだろう。花は開いているが綺麗な状態だ。


 「ーーーー和也くん……」


 彼の写真の前で手を合わせ願っていた。このライブが最後まで無事に終わるようにと。


 「こんばんはー!!」


 彼女が声を出すと、一際大きな歓声が響き渡る。


 ーーーー戻ってきた……また……ここに立てたんだ……


 四人の音が重なり、心地よいハーモニーに観客は魅了されていた。その姿に、water(s)が活動休止や解散する素振りは微塵もない。ステージに立つ彼らは、いつも一際強い光りを放っていた。


 「…………奏……」


 思わず呟いていた綾子は涙を拭うと、ステージで歌う親友を見上げた。隣にいる慎二は、彼女の様子を心配そうに覗き込んでいる。


 「綾子?」

 「ううん、奏の姿が見れてよかった……元気そうで安心した……」

 「よかったな……」

 「うん……」


 綾子の手を握る慎二の肩には、彼らのフェイスタオルが掛けられていた。二人は、water(s)のファンの一員でもあった。


 その日の夜、彼女から届いたメッセージに綾子は喜んでいた。


 『綾ちゃん、いつもありがとう! ライブに来てくれてありがとう! 嬉しいよー!!』


 彼女はドームから程近いホテルに泊まっていた。自宅に帰る事も可能な距離だが、毎回同じ場所に宿泊している為、習慣になっているようだ。


 ーーーーごめん……ごめんね……綾ちゃん……

 ありがとう……いつも、ありがとう……ライブに来てくれて、嬉しいのも本当。

 だけど……これ以上は触れないで……口にしたら、消えてしまいそうだから……


 いつものように反省会を終えた奏は、大翔の部屋には行かず、一人でベッドに寝そべっていた。


 「ーーーー明日で……」


 明日で一年かけて行ってきた……ワールドツアーが終わる……どうだったかな?

 ちゃんと……歌えてたかな?


 ベッドに横たわったまま、窓から覗く夜空を見上げ、瞼を閉じた。瞳の奥には彼がいるのだろう。ひとすじの涙の雫が、零れ落ちていった。




 『ーーwater(s)の曲を、hanaの歌を……世界中何処にいても聴こえるようにする!』


 最終公演日には、ENDLESS SKYの二人が彼らのステージを関係者席から見守っていた。ラウンジから見ている為、いつも見ているライブの距離とは程遠く、静かに眺めている人が殆どで、騒いだりは出来ないのである。

 彼らは岸本きしもとプロデューサーの誘いに乗った事を少し後悔していたが、チケットが抽選で当たらなかった為、仕方がないと割り切ったようだ。


 「……JUNとTAKUMA、向きじゃなかったかな?」


 振り返ると、今回誘った岸本きしもとが飲み物を片手に立っていた。


 「いえ……」

 「JUNは分かりやすいな」


 彼は表情に出ていたのだろう。岸本の言葉に更に気まずそうな表情を浮かべた。


 「……そんなに顔に出てますか? 確かに騒ぎたくはなりますけど……自力では入手出来なかったので、岸本さんには感謝しています」

 「僕もJUNと同意です。water(s)のチケットは、入手するだけでも大変ですからね」

 「まぁー、世界的な賞も受賞したから、更に入手困難にもなるよな……それにしても……本当にいい声だな」

 「はい……」 「そうですね」


 ステージに立つ彼女は、いつも光り輝いているようだ。たとえプロジェクションマッピングの映像で彼らの姿が見えなくても、その音色だけは変わらずに精彩を放っていた。


 ねぇー……和也……ずっと歌っていたい。

 ずっと……歌っていられる人になりたい……

 akiのドラムに、hiroのベース、keiのギターの音色がすきだよ。


 ーーーーずっと……聴いていたくなるの……


 会場にアンコールの声が反響している中、四人はツアーライブのTシャツに着替えていた。

 乾いた喉を潤してステージ立てば、通常のライトに切り替わった。彼らの姿がよく見えるのだろう。その姿を見ただけで、一際大きな拍手と歓声が上がる。


 四人は顔を見合わせ微笑み合うと、演奏を始めた。それはセットリストに新たに加えられ、四人でアレンジを行った曲だ。


 「ーーっ……拓真、泣いてるのか?」

 「……そう言う……潤だって……」


 瞳から涙があふれている。その曲は、彼女が彼に捧げる鎮魂歌レクイエムであった。


 「……"りんごの花"か…彼女らしいな……」

 「そうですね……」


 涙を拭った潤はそう応えると、ステージで歌う彼女に視線を移していた。

 近づいたと思っても、遠い存在なのだろう。彼らの放つ強い光りが近くにいると錯覚させるが、その距離は遥か遠くにある。そんな事を考えてしまうほどに、water(s)は世界的なバンドになっていた。


 いつものように一礼をする彼らに、惜しみない拍手と歓声が送られている。圭介と大翔と手を繋ぎながら去っていく彼女は笑顔だった。


 ーーーーーーーー終わった…………本当に……終わっちゃった……


 奏は二人と手を繋いだまま、その場に膝をついた。


 「hana?!」 「大丈夫か?!」 「hana!!」


 声をかけられているが、涙で声が詰まっているのだろう。上手く声の出せない彼女は、首を横に振り胸に飛び込んでいた。


 「……あ…ありが…とう……」


 その言葉に、彼らも涙を流していた。

 彼の死から半年、彼らはやり遂げたのだ。

 四人は強く抱き合っていた。彼らの、彼の夢だったワールドツアーを。


 「お疲れー!」 「お疲れさまー!」

 「やったな!!」 「あぁー!!」


 四人は円陣を組むように喜びを分かち合う。

 water(s)が行ったワールドツアーは、最多の観客動員数を誇り、記録となった。




 「こんばんはー!! water(s)は十三年目に突入しましたー! 」


 彼女の声からライブが始まった。

 それはワールドツアーを終え、一ヶ月程経った三月下旬の日曜日。

 十三周年ライブの二日目。彼らは最終日を迎えていた。


 四人の創り出すハーモニーが会場に広がっていく。彼のいた場所には、マイクスタンドもキーボードもギターも、もう置いていない。四人だけのステージとなっていた。彼のいない事実が、現実になっている。忘れた事は一度もないが、四人で紡ぎ出す事しかできずにいた。


 ーーーーーーーーどんなに歌っても……どんなに奏でても……どんなに…………和也には……届かない。

 歌う度に思い知る……和也のいない現実。


 彼女は胃が痛むのか、時折さするような、押さえるような仕草をしていた。


 「行くぞー!」

 『おーー!』


 彼らに続き、アンコールの声に応え歌っていく。彼女の声は、枯れそうな程に出ていた。いつもと明らかに違う声に、三人だけが戸惑っていた。

 その背中は歌う度にすり減っていくようだが、叫びたい衝動を抑えるように歌う彼女を止める事は出来ない。


 彼への鎮魂歌レクイエムにすすり泣く声が、観客から聞こえている。 会場が泣いているみたいだと感じながら、最後は柔らかな音色で会場を包み込み、ステージを去った。


 「お疲れー!」

 「楽しかったな!」 「あぁー!」


 いつものようにハイタッチを交わしていく中、彼女の声だけがない。一番後ろを歩いていた明宏が振り向くと、倒れ込んでいく彼女が視界に飛び込んでいた。


 ーーーーーーーー痛い……胸が痛いの……あんなに鳴っていた音が……


 彼女は目の前が、スローモーションのように見えていた。視界が真っ暗になると、床に倒れ込んだ。明宏が彼女を頭から倒れる寸前で、抱きとめていた。


 「危な!!」 「hana?!」

 「すみません!! 医療スタッフの方、お願いします!!」

 「早く!!」


 圭介がスタッフを呼ぶと、彼女は病院に搬送されて行くのだった。


 ーーーー時々思う。

 ぜんぶ夢だったら、いいのにって……そんな訳ないのに…………悪夢なら、どうか覚めて……


 そう願ってしまう彼女の目元は、濡れているのだった。

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