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1話
匠
私の携帯に家族以外で初めて登録した男の名前だ。これから活動するにあたって連絡が取れないのは不便だということで連絡先を交換したのだ。
『〇〇駅前7時集合 朝食はこちら持ち』
昨夜決定事項のように場所と時間のメールが送られてきた。文句を言ったが返事は帰ってこずこちらの都合など考えてないようだ。まあ、用事などないのだけれど。
次の日、私は約束通り駅の前で待っていた。こんな形だが初めての異性との待ち合わせだ。少し緊張してしまう。
「おはよう」
そう彼はあくびをしながら私に声をかけてきた。
「おはようございます。そんなに眠いならもっと遅い時間にすればよかったのに」
「それはだめだよ。やることたくさんあるし、これからのことを考えてもね」
真剣な顔でそう言われて私は黙るしかなかった。
「じゃあ、ついてきて。案内するから」
「ちょっ、ちょっと待って!どこ行くのよ!」
「行ってからのお楽しみ」
そう言うと彼は歩き始めた。