プロローグ
木漏れ日が差す夕方の教室…私はこの静かな空間が好きだ。ここで静かに本を読みこの空間に自分を同化させる。私ははこの空間でありこの空間は私である。そうすると自分がとても小さくて大きく感じてとても落ち着くのだ。
「まじありえないよねー」
「だよねーやばすぎー」
そんな自分だけの空間に異物が入り込んでくる。私の嫌いな騒がしいだけの同級生。
「あれ?地味子ちゃんじゃん。一人で本読んでるとか寂しすぎでしょー」
「言ってやるなよー友達いないんでしょ、地味子ちゃんだし」
「そっちの方がひどい」
そう言いながら彼女達は笑っていた。彼女達は1人でしかも自分達より下の存在だと思っている私が何も言い返さないことに気を良くしたのかさらに言葉を続ける。
「絶対処女だよねあれ」
「あたしのセフレ紹介してあげよっか?地味子じゃ勃たないかもだけど」
余計なお世話だ。あなたたちみたいなビッチとは違って私は体を安売りしてないの。そう思ったが言葉にすることはない。私もわかっているから、社会から見てどっちが勝者でどっちが敗者なのか。
「行こうぜー隼也達待ってるしー」
「今日どこ行くー?カラオケ?」
「昨日もだったじゃん。別んとこ行こー」
彼女達は去って行く。私のことなんてどうでもよくてただ見つけたから用事ついでに攻撃しただけ。反撃なんてされないしされても痛くも痒くも無いだろうから。私もそんな無益なことはしないしまた静かになって清々した。だけど、だけど。
何も言えない自分が情けなくて悔しかった。
「やり返してみないか?彼女達に」
「え?」
驚いて声が出てしまったが誰もいないはずの教室に1人の男の子がいた。いつの間に入って来たのだろうか。
「誰?」
さっきとは違いすぐに声は出た。たぶん纏う空気が私と同じようなものだったからだろう。あと顔がお世辞にも良いとは言えないし。
「ひどいな。クラスメイトだろ」
笑いながら彼はそう言ったがクラスメイトの顔なんて誰も覚えてないから仕方ないと思う
「まあ、いいや。で、どう?やり返して見る?彼女達に」
「犯罪者になるなんてごめんよ」
「そんな野蛮なことはしないさ」
「ならどう仕返しするっていうの?」
「美しくなることだ」
彼は笑みを浮かべながらそう言った。
「は?」
私が思ったのは何言ってるんだこいつだった。仕方ないと思う。言った言葉は自分にとってそれだけ予想外だったからだ。
「よく考えて見てくれ、学生たる彼らが友達何人いるかと同じくらい重要視してるものはなんだい?そう、容姿だ。かっこいい、綺麗、可愛い。それだけで一目置かれる存在になる」
確かにそうゆう面があるかもしれない。
「明日からちょうど夏休みだ。美しくなって彼女彼らを見返してやらないか?」
そう言いながら手を差し出してくる。馬鹿馬鹿しい、馬鹿馬鹿しいが何故自分は…手を取ってしまったのだろう。