すこしでも力になりたい
「ヨウエイ君は、
自分が世界で一番強いと思ってたんだよな?」
「・・・」
沈黙しているが、
先程自分でそう言っていた。
「別に恥ずかしいことじゃない。
一番強くなりたいって言うのは、
男の夢じゃないか?」
ヨウエイ君が俺の仲間を見れるように、
肩に手を回しながら、穏やかに話す。
「今あそこで戦ってる奴らが見えるか?」
「・・・うん」
「あいつらもさ、
それぞれにそれぞれの考え方があって、
誰かに優しくするために強くなった奴らだ。
でも、世界で一番強い奴なんて居ない。
何でだと思う?」
「・・・人より強い生き物が居るから?」
その答えを一度受け止める。
「なるほど。
でも俺はそう思わないかな」
「なんで?」
「本当に強い奴って言うのは、
心も体も技も、全部強い奴だと思うんだ」
闘って一番強い奴。
それは『闘いで一番強い奴』であって、
世界で一番強い奴では無いと思う。
「あいつらだって、色んな人に騙されて失敗して、
それでも今、歯を食いしばって戦ってる。
悪事をした奴だっているし、
あのデガルズって奴なんて、元海賊だぞ?」
シャラが柔術を使って、
その場から動かずに相手を倒す。
それをデガルズが重い一撃で止めを刺している。
「確かにヨウエイ君はとても不幸な生まれだった。
あそこにいる誰よりも不幸かもしれない。
でも生きてりゃさ、
やっぱり大なり小なり傷を作るもんなんだ」
「・・・」
銀次さんが力強い斬撃を放つが、
後ろから敵が襲い掛かる。
それをホマお得意の早撃ちで動きを抑える。
パラズが剣撃で敵を牽制。
後ろからシキックスが敵を斬る。
そんな姿を見ながら、
ヨウエイ君に語りかける。
「ヨウエイ君が『力』に拘って、
鎧に頼り切る事を否定はしない。
でも、知ってて欲しいんだ。
本当のヨウエイ君は、
自分の友達が欲しくて鎧に頼ってるって事」
「友達・・・?」
良かった。
反応を見るからに正解だった様だ。
「つまり、今まで『力』だけじゃなくて、
『心』にも拘ってたって事。
でも『心』の力が足りないから、
そうやって暴れちゃったのさ」
「・・・どうして、そう思うの?」
「それは、俺が探偵だから」
探偵だから偵察はお手の物。
そう答える。
ヨウエイ君が数日前に俺と会った時、
俺よりも鎧と話していたように感じた。
鎧から出たときに不安そうだった。
そして、いざ鎧の助力が得られないときは、
以前鎧から出た時のように振舞っていた。
それらを踏まえて考えると、
ヨウエイ君は力が欲しいんじゃなくて、
友達が欲しくて鎧に依存していた。
そう結論付けたのだ。
「まぁ!人生って言うのは怪我するだけじゃなくて、
楽しいこともなきゃな!
今辛いならさ、楽しくすれば良いんだよ」
「楽しさって、誰かを殴ったり、
他人を踏みにじるような?」
敢えて明るく話したが、
そう言う反論が来るとは予想外だ。
どうも、いじめられた経験もある様子だ。
だから幸せが貧乏臭いんだろうな。
「そんな簡単に楽しめるなんて、
楽しさが貧乏くさいぞ?
難しい事ほど楽しめるんだ。
誰かを騙したり殴ったりするんじゃなくて、
誰かと一緒に大きなことを成し遂げる!
壊れた街を皆と直すなんて、
成功した時の事を考えたら、
すごく楽しそうじゃないか?」
「・・・でも、僕が普通の人と話したって、
また違和感を感じるだけかもしれない」
「そうかもしれないけど、
新しい発見だってあるかもしれないぞ?」
・・・たったこの程度の言葉で、
ヨウエイ君は納得してくれないだろうな。
だけどその程度で良いのだ。
ヨウエイ君を見守ってしばらく様子を見る。
「でも、誰かの為に何かしても、
結局僕が痛い目を見るんだ。
もう、そんなの嫌だ」
「そうだな・・・」
たしかに俺が良かれと思ったことで、
誰かを傷つけることもある。
少し答えに詰まる。
この答えが、一番人に寄るだろうな。
「ヨウエイ君の言う通りだ。
でもそれで間違った分を、
また他の人を助ければ良いんじゃないか?」
「そんな綺麗事ばっかり、
ケレンさんみたいに強い人じゃないと出来ない」
俺が強い?
「俺が強いかは知らないけど、
綺麗事が普通じゃないか?
『綺麗事だから無理!』
だんなんて言う事程簡単だろうな。
皆そこに飛びつくのはわかる。
でも、綺麗事に選ばれた者になるのも良いんじゃないか?」
「・・・」
それに悩みっていうのは結局、
他人に答えを教えてもらうよりも、
自分で答えを見つけるのが一番だ。
自分の優越感を得るために、
悩んでる人に指示をする者も居るが、
俺はそうしたくない。
「ま、一人より二人。
鎧と上手く、街の役に立ってみな。
その力があれば、どんなに困ってる人でも、
きっと助けることができるだろうからな」
「・・・わかった」
良かった。
納得してくれたようだ。
後はヨウエイ君がどう感じるか。
街を潰すかどうかは、
それから考えればいいだろう。
「ほら、見てみろ」
「え?」
ヨウエイ君に、皆の戦いを見るように言う。
「よっしゃ!ラストは俺が!」
『ビブゥウウウゥ・・・』
一番基礎がしっかりとして、
意外にも安定した戦いを見せていたアンザスが、
とうとう最後の機械騎士を斬った。
「どうだ?人間も大したもんだろ?」
「・・・」
ヨウエイ君が、皆の方を見つめる。
どう感じているのだろうか?
それはわからないが、
きっと良い方向に向かって欲しい。
「あ!」
ヨウエイ君が急に叫ぶ。
「どうした?」
「洞窟に友達が・・・。
そうだ、僕が連れて行ったから・・・。
ケレンさん、僕試してみます。
難しいけど楽しいこと、やってみます!」
「そっか。頑張れよ!」
何かを決意した目だ。
肩を叩く。
きっと上手くいくだろう。
鎧を着込んで例の洞窟に向かうヨウエイ君を送り出す。
ここからはヨウエイ君の戦いだ。
「・・・ケレン。いい感じじゃん!」
「あいてっ!」
シャラに腰を蹴られる。
「ったく、茶化すなよ」
「話聞いてたけど、
ケレンらしいクサい話だったね!
やっぱケレンはそうでなくちゃ!」
俺を戦闘狂やらおっさんやら、
そんな風に考えてるのか!
「さて、思ったより早く片付いたな」
銀次さんが肩を回しながら言う。
どうやら全員無傷な様子だ。
流石は街で一流の者達だ。
「ケレンも!流石だったね!」
「ああ、一番大物を一人で撃退できた。
これは認めるしか無いようだな」
全員が、俺の健闘を称える。
「あー、皆悪いんだけど・・・」
全員が一斉に黙り、俺からの言葉を待つ。
「俺の手柄は無かった事にして欲しい。
あー、あの鎧は、てっ敵に潜入してた、スパイ!だった」
「・・・」
俺が嘘をついたことに、
全員一瞬で気付いた様子だ。
俺の顔を見つめる。
「これは戦いなのに、
そんな甘い事を言うつもりか?」
「そうだ。
責められるのが嫌なら、
最初から戦いに出るべきじゃない。
相手が完全に悪いだろう」
パラズとホマが俺に文句を言う。
だが、今回は何も言い返せない。
「ケレンって、本当に!
甘ちゃんだよね!」
シャラが俺をわざとらしく貶す。
「こんな奴に手柄なんぞ必要ない。
そんな事より街に戻って、
敵の残存兵力を消すぞ」
銀次さんも話題を変えてくれる。
正直貧乏クジだとは思うが、ヨウエイ君には、
それだけ世話を焼いてもいいと思った。
そう考えて帰路に着く仲間の背中を追う。
次は明後日投稿します




