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旅する探偵もの  作者: スーパー天邪鬼
独立戦争未遂事件:前編
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自分の得た情報

川で少し魚を獲ってから、宿に戻ってシャラを待つ。

19時頃にシャラが戻ってきたため、互いに調査報告を始めた。


「お帰り。こっちはいくつかわかったことがあったぞ」

「ただいまー。こっちも順調だったよ。

駐在所にも28人が勤めてたけど、10人は見回りで、

3人が狩りに同行してたから、15人しかいなかったの。

 最後には手紙を届けるって言って、2人イタールアに向かったし。

隠れるの簡単だったよ」


駐在所の前には開けた空間があり、横は壁だったそうだ。

もし攻め入られた場合には火炎瓶などを投げて対処するためだろう。


シャラはその、開けた空間で砂や壁に擬態することを思いついたらしい。

全身に砂を被って保護色になったそうだ。

因に今汚れていないのは川に入ったかららしい。


「今回は、最初から俺の顔を調査対象に割れてたこともあって、

事件の動きが早かったな」

「そうだね。いつもは調査に1週間くらいかかるのに」

「こういう場合は一悶着か二悶着あるかもしれないな。

いつ襲われてもいいようにするんだぞ?」

「わかってるって」


俺は予め、今回の調査内容を書いた紙を広げる。

紙にはこう書いておいた。


1.何故兵士のふりをするのか

2.新たに補充される偽兵士はどこの組織から来るのか

3.一部の人たちが支払ってしまった税金はどう使われたのか。

もし使われていなければ、何かに使うのか


「まず1について話そうか」

「うん」


シャラに確認を取ってから話し始める。


「さて、今回俺が絡んだ兵士についてだが、気になることをいくつか言っていたな」

「それって気絶してる人を運んでた人だよね?」

「あぁ。シャラもそいつについて気になることがあったのか?」

「うん。でも先にケレンの報告からで!」


俺は頷いてから少しだけ考える。

胸の章が古いと言った時の事だ。

Bの言葉を思い出してみると


『俺はこの街に半年前に来たんだ!詳しいことは知らねぇよ!』


と言っていた。

だが俺が言っていた胸の章は、この街のものではなくてイタールアの事だ。


「Bが鎧に付いている章を、この街の物だと考えていないと、あの時の反応はおかしい」

「震えるほど動揺してたって言ってたよね?

パニックになって、受け答えを間違えた可能性は?」


確かにパニックになっていたとも考えられるが、その後でしっかり

『イタールアに納める』

と言っていたことから、区別はしっかりついていたはずだ。

こういう場合はその時の状況をもう一度考えてみる。


「その可能性は低いな。俺はどうも、街の住民に誘導された気がしてならない」

「なんでそう思うの?」

「監視されていたからだな。

今日3人の男が俺の後ろを付いて来ていたり、行く道を先回りしていた。

素人だったからわかりやすくて、あえて無視したんだ」


街の住人は他にも不可解な行動を取っていた。

なぜAは蹴られていたのに、Bには何もしないのか。


「気の荒い住民が、いつも自分を虐げている兵士の無力化した場面を見たらどうする?」

「もっとやれ!ってもてはやすか、自分も!って殴りに行くよね」


あの時は10人程度がAを蹴っていた。

しかし、Bの元には誰も来なかった。


「この二つから、Bと街の住人は通じているのではないかと思われる」

「そうかもしれないね。こっちも、そのBが駐在所に戻ってきた時にこう言ってたよ」


『あの探偵気取りの野郎!俺たちを攻撃してきやがった!

こいつは変な武器で頭を殴られて、顔を何度も蹴られたんだ!

俺には言伝するように言いやがって、こう言ったんだ!

「さっさと帰って親玉に伝えろ。

この探偵ケレンが、お前たちの悪事を暴く」

ってな!』


「だって。Aを蹴ったのは街の人たちでしょ?ケレンのせいにされてたよ」

「そうか・・・。だが、Bの目的がわからないな」

「それがね、Bがその後、沢山のアルコールを持ち出してたの」

「あぁ成程、駐在所を燃やすつもりだろうな」

「だね。税金を取り戻したりとか、他の兵士を説得とかしないでしょ。

稼ぎが少ないもの」


成程。

となると、本当に警戒すべきは住民たちだということになる。

ザルインから受けた依頼内容も、ほとんど出鱈目だと思われる。


偽兵士などいなかったのだ。

問題は、何故そんな嘘をついたのか・・・?


「つまり、あの兵士は全員本物ってことか。大体、首都側に偽の駐在所建てるなんて話がまずおかしいな。つまり依頼自体が怪しい」

「ってことは、私たちがこの街についてすぐ、兵士が青年に当たってたのは・・・」

「街の人たちが暴動を起こす理由作り・・・か?」

「じゃあ街の人たちは私たちの敵ってことじゃ」

「多分な。今は襲われる雰囲気じゃない。だが夜になったら寝込みを襲われる可能性がある。

探偵である俺たちを殺すことで、詰所の兵士たちは事件の調査に出てこられて・・・」

「住民たちは兵士が私たちを殺したって言えるから、暴動に出られる。

詰所も人が少なくなれば燃やしやすいもんね・・・ってなると、

こっちも反撃する理由が必要だね」


状況証拠は充分すぎるほどあるが、

街の住民が敵だという証拠がないため、

俺たちが今反撃することはできない。


何か他にも手がかりはないだろうか?


「うーん。最悪の事態は想定できたが・・・

例えば、住人が暴動を起こすとして、その動機を知りたいなぁ」

「もし暴動が起こるとしたら何故か・・・

うーん税金が高いから?旗が気に入らないから?」

「旗?」

「だって、せっかくチキンが描いてあっても食べられないじゃん?」

「いや、だからあれはドラゴンだって・・・ん?」

「どうしたの?」


たしか、この街の名物料理は・・・鶏肉とリンゴが使われていたはずだ


「なぁ、この街で鳥を育てているとこってあったか?」

「無いって聞いたよ。川で水浴びしてる時に、魚獲ってるおばあちゃんが言ってた」


ふむ。ではどこから鳥を獲っているのか・・・

狩りだろうな。

犬が多い理由はそれか。


「暴動が成功したらイタールアから独立できる。

いつでも狩りができるようになる。北には山があるから、生き物も豊富だろう。

鶏肉に使う、野生の鶏もいるかもしれない。

 この街での食べ物はリンゴだけ。

西の森でも狩りはするだろうが、

兵士が同行するだろうから回数は限られる」

「この街の人は皆狩りができそうだもんね。

狩りができたら沢山食べ物が手に入るかな」

「あぁ、だが、狩りをして街の周りから食料が消えるなんてよくある話だろ?

だから猟銃なんて作らないって言う銃職人も多い」

「それで獲る量を制限してるんだ。

この暴動成功したら、この町の人たち自滅しちゃうんじゃない?」

「そうだな・・・」


これで動機も予測がついた。

だがまだだ。何か足りないだろう。これなら暴動じゃなくて、抗議すれば良い事だ。


「ここは敢えて、一悶着起こしてみるか」

「うーん。でもやっぱり証拠が必要だね」


うーん。

いや待て俺たちをただ利用するだけなら、あの依頼内容は全て囮。

なら、住民の警戒対象は食料から動かない・・・


「かなり過激な方法だけど、動いてみるか」


そう言って武器と魚を用意し、シャラと軽い打ち合わせをして宿を出た。

宿を出るときにシャラが

「お風呂ー!はいりたーい!」

とか言ってたが無視だ無視。


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