と惑う事は無いらしい
戦線の先頭に近づく。
先程と違って、
槍部隊は前に出れるようになった。
「槍構え!」
「はいっ!」
俺の部隊全員が、
上段にやりを構える。
「パラズ!」
パラズ少佐に合図をかける。
彼は疲れきった顔で頷き、
部隊に撤退を告げる。
「下がれ!」
パラズ少佐の叫びと共に、
歩兵分隊1が後方に下がる。
彼らはこの後、休憩と補給を行う予定だ。
俺達槍部隊の後ろには、
交代要員として歩兵分隊2が居る。
「始め!」
槍部隊に教えた戦い方だ。
技と言うのも大げさだが方法は簡単。
槍先を、中心を軸にして縦か横へと交互に動かすだけだ。
つまり十字に動かすだけ。
後は近い敵を槍で突けば終わりだ。
単純なように見えて、
実際は横の広い範囲も突くことができる。
「さて!いざ進ぐ・・・ん?」
急に肩を叩かれる。
「ケレン戦時少佐。
こちらに来ていただけますか?」
「え?・・・ああ」
槍部隊の士気は多少下がるだろうが、
呼ばれたのでは仕方ない。
「すまんが、後は頼むぞ」
「わ、わかりました」
少し心配だが、
後は例の小隊長に任せて下がる。
隙が有れば、また様子を見たい。
さて、先程俺の肩を叩いた兵士は、
伝令部隊の人間らしい。
彼に着いて行くと、
パラズ少佐とも合流した。
「一体何だ?」
「敵の別動隊を迎撃するんだ」
疲れているパラズ少佐に、
先程バッドン将軍から聞いた事を伝えた。
パラズ少佐と共に伝令兵に着いて行き、
将軍の元に着くと、
シャラとデガルズ、ホマ少佐だけでなく、
銀次さんも居た。
よく見ればアンザスやシルブレイル、シキックス
それと探偵仲間も30人程。
「これから出陣の者も居るだろうが・・・」
先程の声を聞いたな?
30人程の敵を別口で送るって話だ」
「ええ。聞きました」
あの不気味な声のことだ。
確かに別働隊が31人居ると言っていたな。
「街の南西にある洞窟から、
それらしい敵が出てきたと報告があった。
その別口を、お前らが迎撃してくれ」
探偵も丁度30人居る。
迎撃には適任だろう。
「でも今戦ってる敵はどうするんですか?」
「ああ。アテがある。気にするな」
将軍が目を向ける。
「将軍!着きました!」
「援軍か?」
ホマ特別少佐が聞く。
確かに俺も気になるな。
アテとはなんだろう。
「義勇軍500人。
確かに到着しました!」
義勇軍って事はつまり・・・
「住民が戦うってことか!」
「!?そんなバカな!」
またホマ少佐が文句を言う。
だが義勇軍までバカにするのか。
「住民なのに戦うつもりか?」
「俺たち兵士が戦ってるのにな」
パラズ少佐も文句を言う。
仲が良いなこの二人は。
いい加減士気に関わるぞ。
「俺達より弱いくせに」
「見ろ、足だって震えてる。
動きが遅い奴は敵に勝てねえだろ」
言いたい放題だ。
それを不快に感じる奴が、
ここには大勢居る。
「あんた達ねぇ、いい加減に」
「お前ら・・・」
シャラが何か言おうとするが、
俺の声が被ってしまう。
これは俺がやるべきだろう。
「なんだ?グゥ!」
「ブホッ!」
パラズとホマ両少佐を殴る。
こいつらのプライドも実力も、
高いのはわかった。
だが少佐って言うには、
器が小さすぎる。
「お前らいい加減にしろよ?
あいつらは自分より強い奴とも戦える。
『自分より弱い奴は戦っちゃ駄目』
『自分より動きが遅いから勝てる』
じゃあ何だ?
自分より強い奴とは戦えないのか?
自分より素早い奴とは戦えないのか?」
敢えて声を低くして話す。
「な、なんだよ?」
「そんなの当然だろ。現実見ろよ」
二人の胸ぐらを掴みながら、
続きの言葉を話す。
「良いか?戦争っていうのはゲームじゃない。
『自分より力がある』だの
『自分より素早い』だの、
そんな表面だけの戦争がしたいならゲームでもやってろ。
最近はそんなボードゲームあるだろ。
でもあいつらは戦争になっても、
自分の意志で戦える。
相手の強さなんて関係ない」
「・・・」
俺の腕を解こうとするが、
外れないようにしっかり掴む。
俺の話を是が非でも聞いてもらう。
「もういい!お前の話は長い」
銀次さんが話を遮るように、
俺の襟首を引っ張る。
しまった!
取り乱した。
「す、すいません・・・」
咄嗟に謝る。
つい本音を語ってしまった。
先程戦場に飛び込んだせいか、
いつもより感情的になっている。
「・・・俺は戦争について調べるのが好きだ」
バッドン将軍が語りだす。
「そして気付いた事がある。
戦時の民についてだが、
戦いを知らない者程
『人の態度に甘さを問う』
戦いを知る者程
『戦い方に甘さを問う』」
確かに・・・納得できる話だ。
実際俺達は人の態度を気にしていない。
戦い方だけを気にしている。
「臆病者が国の勝利のために立つ事は無い。
バカ正直な仲間を殺して勝利を握るだけだ。
お前らはどう思う?
あの国民は臆病者か?」
「い、いえ」
俺と違って、
将軍の話はわかりやすいな。
ホマ少佐とパラズ少佐も、
反論する気は無くなった様子だ。
「この街の住民達は強い。
いくつか依頼をこなしつつ見たが、
しっかりと戦えるだろう。
きっと勝ってくれる」
俺も汚名挽回したくて、
今度はキチンと真面目に言う。
「最初っからそう言う感じで言えばいいのに」
「戦ってない時はすぐ感情的になるんだよなこいつ」
シャラと銀次さんが言う。
俺を戦闘狂みたいに言わないでくれ・・・。
「わかったよ。悪かった」
「あいつらを守るために戦ってるのに、
そいつらが前に出るのが生意気だと思ったんだよ」
パラズとホマ両少佐が言う。
こいつらがそう思ってる事は周知だったが、
改めて言われると気持ちもわかる。
何はともあれ、
丸く収まったようだ。
「さて、ならば探偵達は義勇軍に参加だ」
銀次さんが集まった30人の探偵に言う。
俺達は少数精鋭で迎え撃つのか。
「それだと俺達の負担が大きくならないか?」
デガルズが銀次さんに聞く。
「不安か?」
「い、いいえ!そんな!」
銀次さんのやる気に圧されて、
デガルズが一歩下がる。
「俺達は戦えない住民を守るために戦ってるんだ。
折角だし戦える奴らには、
ここの敵をぶっ潰してもらおうぜ。
正直俺一人で別口を潰しても良いと思ってたがな」
「私一人でもじゅーぶん!」
この二人は別格だろ!
二人の言葉の後、
バッドン将軍も攻めに徹する意見を出す。
「俺もそれで良いと思う。
俺達は陣地を死守などしない。
迎撃から進軍に移せ」
まあ仕方ない。
「俺も行くよ」
「ケレンの返事おっそい!」
「ヘタレてんだろ」
シャラと銀次さんに言われる。
なんでそういう事になるんだよ!
「旦那が決めたんなら、俺も乗りますか」
「隊長に着いて行きますよ」
デガルズとアンザスも答える。
俺の味方も居るようで安心だ。
シルブレイルとシキックスも覚悟を決めた様子だ。
「ではお前らを特殊進軍隊とする。
別働隊を捻り潰して来い」
「わかりました!」
「りょーかい!」
皆がそれぞれの返事をする。
俺とシャラ、銀次さんに、
ホマ特別・・・いや、ホマとパラズ、
デガルズにアンザス、
シルブレイルとシキックス。
合計9人で特殊進軍隊だ。
「では5分後に南門で集合しろ。
報告等は敗戦時だけにしろ」
つまり負けは許さないってことだな。
俺達も勝つ気で行くから当然だ。
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