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旅する探偵もの  作者: スーパー天邪鬼
イタールア戦争
46/55

へたを打つ人間と、多少は武道を学んだ者の違い

今は4万だけ持っているので、

残り1万はデガルズに受け取るよう伝えた。


「約束通り馬は借りていく」

「どうぞぇ」


ホクホク顔で家まで向かう。

棚ぼたな程に良い買い物をしたが、

街の様子を見るとやはり、

また気分が落ち込んでしまう。


壊れた建物と人気のない街。

今までは活気に溢れていたのだ。

それがここまで寂れる事があるのか・・・。


家に向かう。

今までよりかなり遠い場所にあるだろうが、

今まで家だった場所を進めるため、

近道をし放題だ。


だが、いくら近道をしても、

自宅までの道のりは、今までで一番長く感じた。


帰る途中避難している人の姿が見えた。

側には手伝いのためか、警察の姿もある。


俺を見ると、こちらへ寄って来て、

話しかけられる。


「なああんちゃん!

敵は今どのくらいに居るんだ?」

「伝令役だろ?

俺たちにもちょっとぐらい教えてくれ!」


どうやら伝令兵と思われたらしい。


「それは機密情報です。

公式な発表があるまでお待ちください」

「なんだよその態度!

俺たちだって何が起きてるのか知りたいってのに!」


当たり障りのない答えを出すが、

彼らには不足の答えだった。

騒ぎ出してしまう。


しかし俺も今急いでいる。

悪いと思いつつも、そのまま馬を駆ける。

後ろから不満の声が聞こえるが我慢する。



さて、家に着いたが・・・。


「完全に廃墟だな」


自宅が崩壊していた。


少々の寂しさは覚えるが、

今は他にすべき事がある。


しっかりと金を回収して、

妻の形見である刀を腰に挿す。


「後は・・・」


素槍を回収する。

長さが3m半ある槍だ。


予備として、

マロホシを一つと、

長さ2m半ある両鎌槍も持つ。


「さて、行くか」


武器を馬に括り付ける。

その馬を走らせる。


時刻は夕方の手前だ。

急がないと、夕方に別働隊と戦うことになる。


馬を急がせる。


------------------------------------------------------

馬をおばちゃんに返して、

槍を腰にかけて歩く。


俺の部隊が居る場所に戻ると、

例の選んだ4人と、

それ以外の奴らが怒鳴り合っていた。


「どうした?」

「ケレン隊長。

こいつら、槍が重すぎるって言い出して」

「はぁ?」


確かに彼らは重さに疲れたのか、

槍を地面に置いていた。


「お前ら・・・根性無さすぎる!」


俺の道場に居た子供はもっと根性があったが、

どうもこの兵達は情けない。


「いや・・・でもこれ、

重さ3kgくらいあるじゃないか!

腕が疲れちまうよ!」


確かにずっと3kgの長物を持って、

さらに戦いに使うなら疲れるだろう。

戦場ではずっと槍を構えたままなのだ。


だが戦いとはそう言う事だ。


「馬鹿野郎!命がかかってるんだぞ!」

「じゃあ戦いなんてやめときましょうよ」

「そうそう。強い奴に任せときましょう」


根性が無さすぎる。

こいつらの事を考えるのが億劫で、

つい否定形の言葉で思考してしまう。


だがこう言う奴らほど、

戦場から離れた場所でふんぞり返る。


負けた者には言いたい放題言って、

努力を無駄だと吐き捨てるのだ。


「俺が逃がすと思うか?

お前らには是が非でも前線に行ってもらう」


こいつらが前回戦場に出た時は、

どうも盾兵の後ろで構えていたようだが、

今度は最前線に立ってもらう。


自分一人の力で前線に立ってもらう予定だ。

元々そうだったが、今完全にその気となった。


「クソ。やっと下がれたと思ったのに」

「槍兵なんて、現場に出ても見下される。

こいつにはそんなことも分かんねえんだよ」


俺のことを『こいつ』とまで言うとは。


「おいお前ら、槍を持て」


今までで一番重い声にして話す。

敢えて挑発するためだ。


「は?やる気か?」

「俺らが勝ったら、

隊長が怪我したってことで、

後ろに下がってようぜ」


どこまで根性がないんだ。

まあ良いだろう。


「好きなだけかかってこい」

「へ!囲め囲め!」


周りにいる部隊の兵士にぶつかりながら俺を囲む。


周囲の兵士には、

かなり迷惑をかけているだろう。


実際真面目に戦ってる者達は、

やはり迷惑そうにこちらを見ている。


ここに居るのはほとんどが休憩中だろうに。


「おら!くたばれ!」


早速一人突っ込んでくる。


俺の槍は腰に差しているから、

現在は素手の状態だ。


「遅い!」


突きが来る。


だが俺の正中線は正面に向けたままで、

目も半開きにしている。


余裕と言いたいのだ。


槍先を避けて、左手で柄を握る。


そのまま右手で槍を掴み、押し返す。

武術の基礎も何もないただの力技だ。

左拳と右肘がぶつかったが、気にしない。


相手は仰向けに倒れた。

槍は没収だ。


「チッ!だから槍は弱いんだよ!」


今倒れた奴の隣で構えた兵士が言う。


「だったら俺から取ってみろ」


槍を逆に持ったまま、

その、隣にいる奴を石突で突く。


先程俺がやられたのと、

殆ど同じ状況だ。


「そんなの同じように」


槍を捨てて手で掴もうとする。

だが槍を後ろに捨てたせいで、

体重が後ろに傾いている。


「せい!」


俺は構わず勢いを更に強めて、

全力の突きを出す。


「うぉお!」


受け止めきれずに相手が尻餅をつく。

そろそろ教えてやろうか。


「槍の突く威力を弱く見すぎだ。

長ければ長い程、

重ければ重い程、

突きの威力は上がる。

手で取って止められるのは、

お前らの槍扱きが甘いだけだ」

「こなくそ!」


また一人突いてくる。

迷いはないが、

足先の向きが悪い。


「突きだけに意識を集中しすぎだ!」


没収した槍を上に構え、

一気に振り下ろし、相手の槍を叩いて落とす。

簡単な落とし技だ。


「うほぉあ!」


槍先が地面に刺さって、

彼の体が吹き飛びそうになる。


その体を、俺の持つ槍で押さえ込み、

体が浮かないようにした。


「他は?」


全員動きが止まる。


「どうした!早くしろ!」

「くそがぁ!」


槍を捨てる。


「だから槍兵は弱いって言われるんだよ」

「・・・おい」

「な、なんじゃぁ?

フグッ!」


額を軽く、デコピンする。


「武器をそうやって粗末にするから、

武器の使い方がわからないんだ!」


武器を粗末にする奴は、

俺の嫌いなタイプだ。


「確かに槍は使い辛い武器だろうな。

だが扱いが難しい武器だからこそ、

きちんと扱う必要があるんだ!」


彼が落とした槍を拾いながら言う。


武器を丁寧に扱えば扱うほど、

武器の使い方がわかるようになるのだ。


武術とは、人も武器も大事にする教えだ。

むしろそんな事ができる人だからこそ、考案できるのだ。


『武器を跨ぐべからず』


その教えは有名だろう。


「武器は自分の命を預ける物だ。

自分に力を貸してくれる仲間と同じだ。

武器も仲間も信頼できないから、

自分の力を信頼できないんだ」

「・・・」


つい、更に深い事まで教えてしまった。


正直、形だけの武術を教わるならば、

それでも良いだろうと思う。


だが俺の部下ならば、

しっかりと心意気も知ってもらわねば。


「説教くせェ・・・。

そんな精神論で戦争に勝てるかよ!」


成程。当然だ。

心意気だけでは勝てない。


「頭が悪いな。だから下位なんだ」

「んだとぉ!」

「心意気だけでダメなら、

全部揃えれば良いだけだろ?」

「・・・」


心意気に技、頼りになる武器や人数に優しさ。

それだけあれば、きっと強い人間になるだろう。


「・・・でも俺ら、技なんて知らねえぞ」

「大丈夫だ」


槍は突くだけでも技になる。

他にも色々な使い方がある。


「しっかり教えてやる。

そのために俺は一度、

敵陣に突っ込んだんだからな」

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