のっぴきするために
敵陣に突入しているのに、
味方の陣が崩れてしまった。
「やられた!」
額に汗をかく。
味方の陣が崩れたことで、
今まで安全だった陣の中部分が、
一気に危険な場所となる。
現状俺の部隊も被害が大きい。
このままでは敵陣の中で、
完全に孤立してしまう。
「デガルズ!デガルズおい!」
呼びかけるが、近くにいない。
少し離れた場所で、
彼の部下に助力している様だ。
だがそれでも、
ここから見る味方の数が少なくなっている。
俺の周りに敵が3人来た。
今銃に込められている弾は4発。
これをまず撃ち込む。
『ボォン!カチ!ボォン!ボォン!』
不発が一発。
3人は倒したが、
その後ろから更に2人が迫る。
槍を中段に構えて迎え撃つ。
先頭の相手と距離が4m。
ここで突く!
「えぇい!」
すると相手は剣で、
槍先を弾こうとする。
「ふんッ!」
左足のつま先を、
相手より外側に向ける。
相手が弾こうとする方向に、
槍先を運ぶ。
「てえぇぇい!」
剣に押されながらも、相手の喉元を突く。
すかさず懐からマロホシを取り出して前進する。
一気に距離を詰めて、
剣が振るわれるのをしゃがんで避け、
相手の額をマロホシ押した。
『ボン!』
足をかけていたため、
余計にひっくり返しやすかった。
相手は空中で逆回転して、
背中から地面に叩きつけられる。
しかしまた、
もう一人の敵が口から筒を出していた。
「これは・・・」
あの筒が出てから発砲まで、
およそ5秒だ。
こっちに向けて既に4秒。
「うぅっ!」
体勢を立て直して、
槍の柄と敵の射線を合わせる。
避ける余裕はない。
『パアォォン!』
槍の上部が吹き飛ぶ。
敵は筒をしまい込む。
どうやら一発しか撃てない様だ。
しかしまた、
3人の敵が陣に入り込む。
マロホシだけで、一気に4人も相手取る。
一番近い敵が5m強の位置にいる。
「今度こそまずいか?」
銃弾は一発込めるだけで、
数十秒かかるだろう。
少し思案していると、
一人が俺に向かって突貫する。
稽古等とは違って、
戦場だとこのように、
睨み合ってから急に突っ込まれる。
「くぅ!?」
剣撃を避けられずに、マロホシで受ける。
『ガチャン!』
軽いマロホシは、
重い剣戟に勝てない。
剣が槍に勝てないのと同じ理屈だ。
マロホシが離れた場所に落ちる。
「だが今!」
先程不発だった弾の口薬を取り替える。
・・・先程から俺は焦っている。
心を落ち着かせて・・・。
敵の一人にターゲット。
ファイア!
『カキン』
上手く発砲されない。
こんな時にまたミスファイアか。
黒色火薬の量が問題か?
敵が迫り来る。
「対処法が無い・・・」
改めて敵の顔を凝視すると、
無表情でかかってくる顔に、
不快感と恐怖を覚えた。
『パオオオォォン!』
同時に数発の銃声。
南側を向く。
腕で顔を塞いだ。
「弾込めえええぇ!」
「次隊!ターゲット!」
歩兵第2分隊とホマ戦時少佐だ。
「!?」
驚いて顔を上げる。
今の音は味方が放った銃撃音。
それに行方不明となっていた、
騎馬隊の兵士も2人が、彼らと行動を共にしている。
それを理解するのに一瞬費やす。
そして次の一瞬で、
目の前の敵が3人残っていることも理解した。
「探偵!」
ホマ少佐が俺に銃を投げる。
俺の真後ろからSAAが飛んでくる。
「ありがたい!」
この銃は速撃ちに向いていると言われている。
俺と敵の距離がおよそ5m。
この距離なら西部では、
構えて撃つのに0.2秒程度が平均だ。
飛んできた銃を右手で受け取り、
ハンマーを下ろしながら無理矢理構える。
ターゲット!
「ファイア!」
『ボボボオォォン!』
一気に3発の弾を撃つ。
避けようとする敵に、
容赦なく銃弾を叩き込む。
その瞬間、
ホマ少佐の後ろに、
敵が回る光景を捉えた。
ホマ少佐がこちらに走ってくる。
「返す!!」
『ボオォォン』
発砲の反動を敢えて殺さず、
反動の勢いで後ろに銃を飛ばす。
以前説明したがった、
シャラ直伝の、
『銃パス』方法だ。
「当然だろ!」
ホマ少佐が空中でその銃を掴み、
ハンマーを下ろして敵に発砲。
『バオォォン』
見事に敵の額を撃ち抜く。
「お見事」
「お前の早撃ちも、
確かに速かった・・・」
お互いに称え合う。
「お前達騎馬隊と、
共に進軍するよう仰せつかった」
「そっちに敵が行かなかったのか?」
「・・・いやそうじゃねぇけど」
さっきまでの騒ぎっぷりは影を潜めている。
どうしたんだ?
「お前の女だろあいつ。
あいつに命令されたようなもんだぜ」
「は?」
俺の女?シャラの事か?
あいつ俺より10歳も下だぞ。
「お前気持ち悪いこと考えるんだな」
「ばッ!馬鹿言えよ!
騎馬隊の機動力が殺されてるから、
応援に行けだのなんだの言われたんだよ!
あの女が将軍を説得してな!」
だが確かに、
敵陣の中にほぼ孤立したような状態だった。
「まあ助かったよ」
マロホシを拾って周りを見渡す。
陣の薄くなった地点を、
応援に来た歩2-5が埋めてくれた。
「それにしても、
どうやってここまで入り込んだ?」
「お前の女が敵陣に穴を空けたんだ。
なんだよあのバッタみたいな動き。
俺が知ってる人とは思えねぇ」
「3人張の弓を引く将軍も大概だろ?」
「言えてるぜ」
互いに弾込めをしながら話をする。
「じゃあ街方面に帰るとするか。
ホマ少佐は真ん中で指揮を頼めるか?」
「お前はどうするんだよ」
「そうだな・・・」
『パオオオォォン!』
結構近い位置から射撃音が聞こえる。
実は先ほどから、
砲撃音は聞こえていたが、
射撃音がどんどん激しくなっている。
「ん?」
『パオオオォォン!』
『ボオオォォン!』
銃撃音だけでなく、
砲撃音も聞こえる。
「これは、援護が激しすぎるのか?」
「パラズの野郎!
まさか過剰に攻撃を!?」
向上心の強い奴だと思っていたが、
余剰な攻撃を行っているのか。
『自分が一番頑張ろう!』
とでも思っているのだろう。
「クソ!敵と一緒に火炙りされちまう!」
「隊長!判断を!」
後ろで敵と交戦している、
デガルズやアンザスも動揺し始めた。
「俺達の位置を味方に教えよう!
曳光弾はあるか!?」
「残弾0!」
「なら榴弾だ!」
「残り4つ!」
それなら4方に榴弾を投げよう!
「ホマ!デガルズ!アンザス!」
「隣だ!」「何ですかい!」「はい!」
3人を陣の中心に集めて、
榴弾を渡す。
「今から10秒後に、
円の中心から4方向へ榴弾を投げろ!
なるべく近い位置に!」
この作戦さえ成功すれば、
俺達は味方の陣地に帰れる。
そう期待を込めながら、
3人に指示を出した。
戦闘場面はこれくらいが丁度良いかな?




